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3.初夜
騎士団長のヴェルナー様に引き取られ、一緒に暮らすことになりました。
騎士とあり、とても逞しい……
それに私より年上で優しく、馬車を乗降するときは必ず手を差し出し、助けてくれる紳士そのもの。
艶のあるサラサラとしたブロンドにサファイアのような蒼い目……大人の男性らしく包容力のある顔付きをされていて、側にいるだけで落ち着く……
「その席に座ってくれる人が出来るなんて思ってなかった……」
「ヴェルナー様?」
「ああ、済まない。こっちの話だ、忘れてくれ」
「奥様を亡くされたと……」
「もう、五年も経つ。キミが来てくれたのにいつまでも引きずっている訳にもいかないな。暗い話は止めにして、飯にしよう」
「また、お気が向いたら、話して下さい」
「いいのか? そういうのは嫌がると思ったんだが……まあ、それは後だ。腹が減って仕方ない」
ぐうっ、とヴェルナー様のお腹がなって、強そうな彼が恥ずかしそうにするのが、おかしくて、クスクスと笑みが漏れてしまいました。
「笑うと可愛いな。憂いを帯びた表情も良いがそっちの方が良い」
掛けられた言葉に今度は私が恥ずかしくなってしまい、モジモジとしてしまいます……
「待っててくれ、今、用意するから」
「私も……」
「驚いたな、貴族の令嬢は家事など出来ないと思っていたんだが……」
「はい……ついこの間まではそうでした。でも、修道女になるためメイドから習ったので」
「そうか、なら一緒にやろうか」
「はい!」
パンを切り、切り目を炙り、干し肉と葉物野菜を乗せ、串に刺して溶けたチーズを垂らします。あとは豆を炊いたスープを温め、お皿によそいました。
「キミが来てくれたのに野戦食のような物で済まない」
「いえ、とても美味しそうな香りがしますよ」
食事を頂く前にお祈りを終えたあと……
ヴェルナー様がグラスを用意され、私の前に置かれました。
「高級品ではないが味はいける」
ワインの栓を抜かれると腕を伸ばし、私のグラスに注いだあと、手酌で彼の方にも注がれ……
芳醇な香りが漂い、食欲を誘います。ヴェルナー様は大きく口を開け、パンを頬張っていました。
私もそれに習い、チーズが冷めない内にパクリ……
「美味しい……」
パリッとした香ばしさに干し肉の香辛料と塩気、少し濃い味かなって思うと葉物の水分でちょうど良くなり、チーズの濃厚な味が口いっぱいに広がっていました。
「そうか、口に合ってなによりだ」
にこにこと笑顔で木の匙で豆を掬い、スープを味わっています。同時にグラスを取り、ワインを飲むと……
「何だか、気が合うな、はは」
「はい!」
食事を終え……二人で食器を洗っていると肩が触れ、手が重なります。
「綺麗な手が荒れてしまうぞ」
「構いません。私はここで暮らすと決めたのですから」
軽く触れただけなのにヘンリーといたときには全く感じなかった思いが込み上げます。恥ずかしいような、嬉しいような気恥ずかしさ……
年上のヴェルナー様に私は……
片付け終わるとすっかり夜の帳が下りていました。
お父様が私を気遣って下さり、ヴェルナー様も調度品を持ってきても良いと仰って下さったのですが、天蓋付きのベッドは流石に大き過ぎて、お家に入りませんでした。
ヴェルナー様のお家には二人が肩を並べて寝るのがやっとといった具合のベッドが一つ……
「ヴェルナー様、お願いがございます」
「様なんてつけなくて良い。それにキミの方が家格は上だ。そうだな、親しい奴はヴェルって呼んでる」
「私もキミではなく、アーシャとお呼び下さい」
「ああ、済まない。改めよう」
「ヴェル」
「アーシャ、どうしたんだ?」
名前で呼び合うとお互い気恥ずかしさもあって、顔が少し赤くなって……ドキドキしていました。
「私を抱いて下さい……」
「おいおい……いきなりだな」
「ヴェルも私の噂が気になっていると思うのです……」
「ああ……気にならないと言ってしまうと嘘になるな……」
いずれ、夫婦となれば、分かってしまうこと。ヴェルに見限られ、また、婚約破棄となりかねない。なら、早い方が良い……
騎士とあり、とても逞しい……
それに私より年上で優しく、馬車を乗降するときは必ず手を差し出し、助けてくれる紳士そのもの。
艶のあるサラサラとしたブロンドにサファイアのような蒼い目……大人の男性らしく包容力のある顔付きをされていて、側にいるだけで落ち着く……
「その席に座ってくれる人が出来るなんて思ってなかった……」
「ヴェルナー様?」
「ああ、済まない。こっちの話だ、忘れてくれ」
「奥様を亡くされたと……」
「もう、五年も経つ。キミが来てくれたのにいつまでも引きずっている訳にもいかないな。暗い話は止めにして、飯にしよう」
「また、お気が向いたら、話して下さい」
「いいのか? そういうのは嫌がると思ったんだが……まあ、それは後だ。腹が減って仕方ない」
ぐうっ、とヴェルナー様のお腹がなって、強そうな彼が恥ずかしそうにするのが、おかしくて、クスクスと笑みが漏れてしまいました。
「笑うと可愛いな。憂いを帯びた表情も良いがそっちの方が良い」
掛けられた言葉に今度は私が恥ずかしくなってしまい、モジモジとしてしまいます……
「待っててくれ、今、用意するから」
「私も……」
「驚いたな、貴族の令嬢は家事など出来ないと思っていたんだが……」
「はい……ついこの間まではそうでした。でも、修道女になるためメイドから習ったので」
「そうか、なら一緒にやろうか」
「はい!」
パンを切り、切り目を炙り、干し肉と葉物野菜を乗せ、串に刺して溶けたチーズを垂らします。あとは豆を炊いたスープを温め、お皿によそいました。
「キミが来てくれたのに野戦食のような物で済まない」
「いえ、とても美味しそうな香りがしますよ」
食事を頂く前にお祈りを終えたあと……
ヴェルナー様がグラスを用意され、私の前に置かれました。
「高級品ではないが味はいける」
ワインの栓を抜かれると腕を伸ばし、私のグラスに注いだあと、手酌で彼の方にも注がれ……
芳醇な香りが漂い、食欲を誘います。ヴェルナー様は大きく口を開け、パンを頬張っていました。
私もそれに習い、チーズが冷めない内にパクリ……
「美味しい……」
パリッとした香ばしさに干し肉の香辛料と塩気、少し濃い味かなって思うと葉物の水分でちょうど良くなり、チーズの濃厚な味が口いっぱいに広がっていました。
「そうか、口に合ってなによりだ」
にこにこと笑顔で木の匙で豆を掬い、スープを味わっています。同時にグラスを取り、ワインを飲むと……
「何だか、気が合うな、はは」
「はい!」
食事を終え……二人で食器を洗っていると肩が触れ、手が重なります。
「綺麗な手が荒れてしまうぞ」
「構いません。私はここで暮らすと決めたのですから」
軽く触れただけなのにヘンリーといたときには全く感じなかった思いが込み上げます。恥ずかしいような、嬉しいような気恥ずかしさ……
年上のヴェルナー様に私は……
片付け終わるとすっかり夜の帳が下りていました。
お父様が私を気遣って下さり、ヴェルナー様も調度品を持ってきても良いと仰って下さったのですが、天蓋付きのベッドは流石に大き過ぎて、お家に入りませんでした。
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「ヴェルナー様、お願いがございます」
「様なんてつけなくて良い。それにキミの方が家格は上だ。そうだな、親しい奴はヴェルって呼んでる」
「私もキミではなく、アーシャとお呼び下さい」
「ああ、済まない。改めよう」
「ヴェル」
「アーシャ、どうしたんだ?」
名前で呼び合うとお互い気恥ずかしさもあって、顔が少し赤くなって……ドキドキしていました。
「私を抱いて下さい……」
「おいおい……いきなりだな」
「ヴェルも私の噂が気になっていると思うのです……」
「ああ……気にならないと言ってしまうと嘘になるな……」
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