粗チン早漏王子にマグロだと罵られ、婚約破棄……拾ってもらった草食騎士団長はベッドの上では野獣でした。

高橋冬夏

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8.責任転嫁

 うとうとしながら、時々、意識が途切れながらもテーブルに肘を置いてヴェルの帰りを待ちました。

 お腹を空かした彼が食べれるようにサンドイッチを用意して……

 コンコン……コンコン……

「ヴェル!」

 ドアがノックされたので、彼が帰ってきたのだと思い、開けたのですが……

「イライザ……」
「久し振りね、アーシャ」

 待ち人ではなく、まさかの人物で驚いてしまい……

「な~にが『ヴェルぅ!』よ! ふざけんじゃないわ!」

 私はイライザの従者に椅子に後ろ手に縛られ、拘束されてしまいました。私の顔を見たイライザは落ち着きを失い激高して、叫んでいます。

「何であなただけ、そんな幸せそうな顔してるのよ! 次期王妃だったあなたが、こんなうさぎ小屋みたいな小さな家に住んで、笑っちゃうわ……それにそんなメイドの古着なんて着て……なのになのに何でなのよぉぉーーー!!!」

 バンッ! と思い切り、テーブルに手を打ち付け、食器がガタガタと揺れました。

「落ち着いて、イライザ……」

「これが落ち着ける訳ないでしょーー!! 何であのとき真剣に止めてくれなかったのよ! 私はあんな地獄に堕ちずに済んだのに……」

「私はあなたに伝えようとした、けど……」
「笑ってたんでしょ! あなたの代わりに私が不幸になって!」

「違う……」

「じゃあ、何で婚約破棄されたあなたが幸せそうな顔して、王子を奪った私が逃亡する羽目になったのか、言ってみなさいよ!」

 逃亡? じゃあ、ヴェルが呼び出されたのもイライザの捜索のため?

「私とヘンリーの婚約は家同士が決めたものだったから……不感症というのも抵抗すれば、彼が怒るから……ただ、何もせずに耐えていただけ……」

「は? だから、私はあなたが昔っから大嫌い! ただ、時が過ぎれば、事が上手くいくなんて考え方が、ね!」

「私に出来ることなんて、それくらいだから……」

「まあ、いいわ。あなたがマグロかどうか、確かめてあげる。ドミニク、そこの女を犯しなさい!」
「はい……お嬢様……」

「いや……止めて……」

「あの粗チン王子に抱かれるよりマシでしょ? それに幸せそうなあなたの顔が心底ムカつくの! 殺したいくらいにね! でも、簡単に殺してあげない。犯されて、首を絞められて苦しみ抜いた顔で死んでいくの。不幸令嬢の死って、悲劇になるくらいにね!」

(ヴェル……ヴェル……お願い、助けて……)

 イライザの従者が私の肩に触れ、肌を重ねてこようとします。必死に抵抗しますが縛られていて、思うままに動きません……

 イライザの言う通りなのかもしれません。私を拾ってくれた彼にただ、祈ることしか出来ませんでした。


         ☆


 ――――王都市街地。

 捜索に当たっていたが、流石にこの時間は眠くなる……ボーッとして、夢か、現実か境目が曖昧になるくらい朦朧としたときだった。

 何か、白い布を被り、長い黒髪の女が宙を漂い……

 手招きしている?

「エレオノーラ! エレオノーラなのか?」

 俺の家!?

「家がどうしたって言うんだ? 答えてくれ!」


【あなたの大事な人が危ない】


 頭にエレオノーラの言葉が直接、響いた気がした。俺は全速力で駆け抜け……

「はぁっ! はぁっ! アーシャ!! どこだ、アーシャ!!」

 俺が家にたどり着いたときには家に誰もいなかった。だが……誰か入ってきたような形跡がある。


 イライザ。


 部屋の中を手掛かりがないか調べているとテーブルの下の床に靴墨で書かれてあった。家の前の轍……まだ、新しい。

「ヨルギス! 馬車を追え! 轍に沿って進むんだ!」
「了解しました!」

(アーシャ、無事でいてくれ! キミがいないと俺は……)


         ☆


 ――――王都の玄関口付近。

「くっ、思ったより動きが早かったわ」
「う~、う~!」

 近くで物音がしたことで私は犯される前に拉致され、イライザ達の馬車へ載せられ、どこかへと移動していました。恐らく王都の城壁外へ行くつもりなのでしょう。

 ですが、城門は通常の門番以外にも騎士団が警邏しているようで行き場を失っているようです。

 荷台に移ったイライザが猿ぐつわを外し……

「アーシャ……あなたは人質として連れていく。あの王子にあなたを差し出して、私は隣国に亡命するわ」

「そんなのヘンリーが許さないわ。もう彼は私に興味なんかない。興味があるのはイライザ、あなたよ。彼の執着心を甘く見てると……」

「うるさい、うるさい、うるさい!!! 私はもうあんな男、ごめんなの!」

 頭をかきむしり、行動も行き当たりばったり……私にはイライザが正気を失っているようにしか思えませんでした。
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