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34.叙爵
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――――王宮謁見の間。
本来なら騎士の婚約者の私が再びこの間に居ることなんて場違いなんですが、ジュールから呼ばれてヴェルと一緒に訪れていました。
婚約破棄されて以来のドレスを着て……
ヴェルと騎士の皆さんの活躍によってヘンリーの野望は全て打ち砕かれたことで、誰も私をマグロなどと悪く言う人達は居なくなっていました。
国王陛下はヘンリーから盛られた毒の影響でご容体が優れず、退位をお決めになり、今日はそのために来ていたのです。
荘厳な雰囲気の中、陛下からジュールにレガリアである王冠、王錫が引き継がれました。それと護国の剣……ヴェルに貸与されていましたが陛下にお返しして、ジュールに渡されます。
ジュールの隣に寄り添っていたソフィーさんはそんな厳粛さに当てられたのか、とても緊張されてしまって……普段は緊張とは無縁な彼女がこんな固い表情してしまうなんて驚きでした。
何とか退位と推戴の式典が恙なく終わり、新国王と新王妃となったジュールとソフィーさんが玉座に座っています。
あっ、もうお二人とも本当なら敬称を付けないといけませんね。
すっかり集まった人も捌け、ジュール夫妻と私とヴェルだけになりました。ソフィーさんは隣に座るジュールに詰め寄っています。
「おい、おい、おいっ! 聞いてねえぞ! 失恋して、めそめそしてたイケメン食ったら、王妃になっちまうなんて……しかも、あたしゃ、隻眼だぜ」
パッと私に視線を移し……
「そうだ! アーシャを王妃すればいいんだよ! なあ、あたしと代わってくんねえか?」
「えっ!?」
た、確かにジュールでも、ヘンリーでもどちらかが戴冠すれば、私が王妃になっていたかもしれません。
「何を馬鹿なことを言っている。アーシャが困っているじゃないか!」
「そうだ、そんなことを言う暇があれば、カテーシーの一つでも覚えとくんだな」
ヴェルとジュールは互いに見合い、ははっと笑っていました。
「ソフィー……キミの隻眼や身分、行儀作法を悪く言う者が居れば、私はその者に決闘を挑む覚悟だ。私とともに一緒に歩んでくれ」
「そ……そんな熱い眼差しで見んなよ……恥ずかしいじゃねえか……」
二人に大分、振り回されちゃった私達でしたが、ジュールの言葉に満更でもない様子です。顔を真っ赤にするソフィーさん……
それを余所にジュールがヴェルに伝えます。
「ヴェル……済まない。本当ならキミのこの国に対する功績はこの程度の恩賞では少な過ぎるくらいだ……だが、私自身の国王就任を良く思わない連中も多い」
そう、ヴェルは男爵へ叙爵されることが決まっており、このあと、式典が行われる予定です。
「陛下、お気になさらないで下さい。男爵であっても貴族は貴族……お気遣い、ありがたき幸せです。って、なんてな」
「はは、私達にそんな堅苦しい挨拶はいらないな」
二人で大笑いしたあと、私を見つめたヴェルは……
「アーシャ……実は、俺は騎士なのに侯爵令嬢のキミと結婚することを気にしていた……だが、これで……」
「そんなこと気にしないで! 私はヴェルの身分が好きになったんじゃないんです。こんな私を優しく迎えてくれたヴェルが大好きなんです!」
私は身分を気にしていたヴェルに飛びついていました。ヴェルも私の頬を撫で、抱き締めてくれます。
「お~い、二人ともぉ。叙爵式が終わってから、いちゃつけよなぁ~」
私とヴェルは顔を真っ赤にして、お互い罰が悪そうに離れました。
「まあ、そう言ってやるな。寂しいなら、今夜はキミを寝かさない!」
「へ~、あたしをジュールがねえ……途中でへたばるなよぉ~」
「おいおい、二人こそ猥談はあとでしろよ……」
ヴェルは呆れていました。
また、人々が休憩から戻り、叙爵式が行われます。ヴェルがジュールから呼ばれ、玉座の前に跪いていました。
「ヴェルナー・マグダレアを男爵に叙爵する。加えて、ヘルマン軍務卿の退任により近衛騎士団長と兼務としたい」
「えっ!?」
驚くヴェルを置いて、ジュールとヘルマンおじ様はうんうんと二人で頷いていたのです。
「俺は何も聞いていない……」
二人に嵌められた、そんな表情になっていたのでした。
本来なら騎士の婚約者の私が再びこの間に居ることなんて場違いなんですが、ジュールから呼ばれてヴェルと一緒に訪れていました。
婚約破棄されて以来のドレスを着て……
ヴェルと騎士の皆さんの活躍によってヘンリーの野望は全て打ち砕かれたことで、誰も私をマグロなどと悪く言う人達は居なくなっていました。
国王陛下はヘンリーから盛られた毒の影響でご容体が優れず、退位をお決めになり、今日はそのために来ていたのです。
荘厳な雰囲気の中、陛下からジュールにレガリアである王冠、王錫が引き継がれました。それと護国の剣……ヴェルに貸与されていましたが陛下にお返しして、ジュールに渡されます。
ジュールの隣に寄り添っていたソフィーさんはそんな厳粛さに当てられたのか、とても緊張されてしまって……普段は緊張とは無縁な彼女がこんな固い表情してしまうなんて驚きでした。
何とか退位と推戴の式典が恙なく終わり、新国王と新王妃となったジュールとソフィーさんが玉座に座っています。
あっ、もうお二人とも本当なら敬称を付けないといけませんね。
すっかり集まった人も捌け、ジュール夫妻と私とヴェルだけになりました。ソフィーさんは隣に座るジュールに詰め寄っています。
「おい、おい、おいっ! 聞いてねえぞ! 失恋して、めそめそしてたイケメン食ったら、王妃になっちまうなんて……しかも、あたしゃ、隻眼だぜ」
パッと私に視線を移し……
「そうだ! アーシャを王妃すればいいんだよ! なあ、あたしと代わってくんねえか?」
「えっ!?」
た、確かにジュールでも、ヘンリーでもどちらかが戴冠すれば、私が王妃になっていたかもしれません。
「何を馬鹿なことを言っている。アーシャが困っているじゃないか!」
「そうだ、そんなことを言う暇があれば、カテーシーの一つでも覚えとくんだな」
ヴェルとジュールは互いに見合い、ははっと笑っていました。
「ソフィー……キミの隻眼や身分、行儀作法を悪く言う者が居れば、私はその者に決闘を挑む覚悟だ。私とともに一緒に歩んでくれ」
「そ……そんな熱い眼差しで見んなよ……恥ずかしいじゃねえか……」
二人に大分、振り回されちゃった私達でしたが、ジュールの言葉に満更でもない様子です。顔を真っ赤にするソフィーさん……
それを余所にジュールがヴェルに伝えます。
「ヴェル……済まない。本当ならキミのこの国に対する功績はこの程度の恩賞では少な過ぎるくらいだ……だが、私自身の国王就任を良く思わない連中も多い」
そう、ヴェルは男爵へ叙爵されることが決まっており、このあと、式典が行われる予定です。
「陛下、お気になさらないで下さい。男爵であっても貴族は貴族……お気遣い、ありがたき幸せです。って、なんてな」
「はは、私達にそんな堅苦しい挨拶はいらないな」
二人で大笑いしたあと、私を見つめたヴェルは……
「アーシャ……実は、俺は騎士なのに侯爵令嬢のキミと結婚することを気にしていた……だが、これで……」
「そんなこと気にしないで! 私はヴェルの身分が好きになったんじゃないんです。こんな私を優しく迎えてくれたヴェルが大好きなんです!」
私は身分を気にしていたヴェルに飛びついていました。ヴェルも私の頬を撫で、抱き締めてくれます。
「お~い、二人ともぉ。叙爵式が終わってから、いちゃつけよなぁ~」
私とヴェルは顔を真っ赤にして、お互い罰が悪そうに離れました。
「まあ、そう言ってやるな。寂しいなら、今夜はキミを寝かさない!」
「へ~、あたしをジュールがねえ……途中でへたばるなよぉ~」
「おいおい、二人こそ猥談はあとでしろよ……」
ヴェルは呆れていました。
また、人々が休憩から戻り、叙爵式が行われます。ヴェルがジュールから呼ばれ、玉座の前に跪いていました。
「ヴェルナー・マグダレアを男爵に叙爵する。加えて、ヘルマン軍務卿の退任により近衛騎士団長と兼務としたい」
「えっ!?」
驚くヴェルを置いて、ジュールとヘルマンおじ様はうんうんと二人で頷いていたのです。
「俺は何も聞いていない……」
二人に嵌められた、そんな表情になっていたのでした。
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