超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「ダーッハッハッハッハ! おちんちんびろーん!」

 二十四時間気を抜けない状況が何日も続き、このままでは発狂すると思った玉革は、正気を保つためにあえて馬鹿になることにしたのだった。

 これが、Z務事務次官にまで登り詰めた男が選んだ、心の処方箋だった。

「わっしょいわっしょい! スターリングラード!」

 素っ裸で両腕を左右水平に広げ掌を上に反らし、警護する隊員たちの目の前を走り回る。

「ぷぁーいおつぷぁーいおつぅ、みぃーもぉーみぃーもぉー、うーんこーぶーりぶーりぃ、くっさーまーんじーぃるぅ」

 隊員たちの頭がおかしくなりそうだった。

「いんぐりっしゅ! もんぐりっしゅ! ぱつきんまんげぼーぼー! コマンチ!」

 玉革が殺されるか、犯人が捕まるまではこれが続くと思うと地獄だった。

 隊員たちはUFOコンタクティのように心の中で歴代Z務事務次官殺しに呼びかけた。

 おーい! ここだ! 早く来てくれー! と。

「エロマンガ! スケベニンゲン! メガチンポ! ヌルマンチョ!」

 叫びながら玉革はトイレに入った。

「鎮まれ、鎮まれぇーい! 我が赤兎馬せきとばよ……! 放水開始! ゴー! ゴー! ゴー! 若林豪! ンッゴウ!」

 意味不明な叫び声が止んだ。

 ……おかしい。数分経っても玉革は沈黙したままだ。大きいほうなら大きいほうで盛大に息む声が聞こえるはずだ。

 静かにドアが開き、首のない玉革の体がスローモーションで倒れてきた。

 首はねじ切られていて、ぐちゃぐちゃになった切断面がこっちを向いていた。

 死亡推定時刻は午後三時十二分。

 トイレの中にもう一人いた。

 男だった。

 恐ろしいほどの美形だった。

 身長は百八十センチくらい、こんの作業服の上下を着て、メデューサを退治したペルセウスのように右手に玉革の生首を掴んで立っていた。

 言うまでもなく血まみれだった。 
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