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郷愁
矛の家族2
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「そりゃ~喜んで触る人はいるかもですが…私は無理です」
「そうだぜ、ララーナの右手は俺専…だっ?!いってーな!叩くなよ!」
下ネタを言いかけたシーダに急いで正義の鉄槌を下した。
はぁ…でもどうしよう…。協会に相談したら
「不妊治療は奇跡の使い手でも治療術師でも基本はどちらが行っても問題はありません。ただ、患者の病状が回復せず、その病状によっては公に影響を及ぼすと判断された場合はその術師に聴取を取り、治療術の施術能力無しと判断され資格剥奪や活動無期限禁止などの処罰を課せられることもあります」
だそうだ。
「こうなれば元奇跡の使い手の男性術師、まだこの国にいらっしゃいましたよね?あの方にお願いしようかな」
クラィッアー公爵、シーダの伯父様が、手を打った。
「おおっ!?まあ他人の…なんて嫌だろうけど…頼んでみよう」
って言ったけど、元奇跡の使い手の男性は拒否された。
「もし完治しなかったら斬首だろう!?私は嫌だ!」
えっ?首、ポーンなの?
それにそもそもだけど、治療で失敗ってどうなるの?私失敗しないので!………あれ?私がおかしいの?
「完治しないことってあるんですか?」
私が元奇跡の使い手の男性にそう聞くと、その男性…今は普通の治療術師は目を見開いた。
「治療を受ける本人にこの場合はガリューシダ殿下だが…に治そう、良くなろう、という気持ちがなければ完治はしない。患者の魔力を引き出すのが治療だから、当然だろう」
私…治す気の無い人って治療したことあったっけ?いや…あるよ。昏睡状態の若い女の子の治療をしたことがある。でも治ってたけど…え?もしかして意識の無い人って治療出来ないの?
「あの因みになんですが、意識の無い人を治療しますよね。その時は完治しないのですか?」
男性治療術師は怪訝な顔をして私を見た。
「当たり前だろ?意識が戻るのを待って了承を得てから治療を進める。意識の無い人間に治療魔法をかけても完治はしないし意味は無いだろ?そんなの常識だ。意識の無いほどの怪我や病気なら…早くて15日以上は完治にかかるだろうし、まあそこは術師の能力次第で期間が短くなるがね。因みに私なら10日間で治せるよ」
おっちゃんの自慢話はいらねぇ。それにしても…
常識…とまで言われてしまったが、私の治療は非常識だったようだ。だって昏睡状態や意識の無い人だって…一瞬で治ってたんだもん。誰からも「早く治りますね。」なんて聞かれたことないし…あ、そうだった。
元々私が治療に回っている僻地や無医村は…殆どの住人が奇跡の使い手なんて初めて見たに違いない。だから普通の治療術師と奇跡の使い手様って治療の速度違うのね~という感想で終わっていた可能性がある。
住人の方が重篤な病に侵された時に、別の治療術師もしくは、別の奇跡の使い手に治療してもらう機会があった場合、遅々として治療が進まないことに気が付いて、私の治療速度が異常…おかしいということがバレるかもしれないが、それに気が付かれない限りはバレる心配は無い…と思う。
いやもうさ、バレたらバレた時で開き直って
「元異世界人ですけど、何か?電気とガスが魔法の代わりでしてヨ?」
とかふんぞり返って異世界転生チートの説明してやるさ、文句があるか!
それは兎も角としても
私だって妙齢の女子だ。ヨボヨボのおじーちゃんの……なら治療だから!で何とか触れると思うけど、若い男の人(王子様)は抵抗あるわぁ…
しかし頼みの綱の治療術師のおじさんは拒否るし、仕方ないか。
「よし…仕方ないですね。別に全裸のガリューシダ殿下に触るわけじゃないですしね!」
私がそう言うとシーダは慌てていた。何かを妄想したみたいだ。
そうだ…服の上から治療が出来るのだから、直接の接触した感覚を少なくする為には…私はリュックサックの中を探った…これだ!
そして、ガリューシダ殿下といなくていいのに、エリアンナ妃までが見学?に来ているお城の貴賓室の寝所。おかんが息子の息子が見知らぬ女に触られるのを見学にくるって珍しいね。
と言っても、シーダパパ…国王陛下とシーダママのアサシアニカ妃、伯父様、シーダの弟妹達…シーダファミリーも勢揃いしているので、エリアンナ妃は帰れ!という訳にはいかない。
「ララーナ…何でその、手袋してるんだ?」
「視覚的な防御が欲しいですからね!治療に差し障りがあってはいけませんし、苦肉の策です」
「苦肉の策…」
シーダが私の手に装着している、MY軍手を指差している。やっぱり王子様の王子様だとはいえ、直触りは避けたい…あれ?王子様の王子様に触りたくないっていうのは、ガリューシダ殿下に対する不敬に当たることなのかな?王子の王子に触れさせて頂くことは尊いことです!っと感謝して触らなければいけないのか?
それじゃあ巷で噂の痴女様になっちゃうじゃないか!
まあいいか、さっきから王子様の王子様を心の中で連発していて、心の中では痴女確定なゲスイ私になっていた。
とっとと終わらせよう。さっきからイライラしているエリアンナ妃がシーダを睨んだり、アサシアニカ妃を睨んだり…とこの部屋の空気(魔質)が悪すぎるもんね。
私は皆が見守る中、ベッドに寝転んだガリューシダ殿下に近付いた。はぁ~改め見るとガリューシダ殿下が一番シーダに似てるよね~。外見も魔質もこんなに似ていて腹違いなんて設定?は無理があるよ。
「痛かったら言って下さいね~体を楽に~ついでに性格の治療も出来たらよいのですがね~」
ついシーダに似すぎているために、ぞんざいな上に嫌味を言ってしまったが…何故だか真横について来ているシーダが
「無駄口を叩くな、早く治してやれ。ガリューシダも痛かったらすぐ言えよ」
と、お兄ちゃん風を目一杯吹かせてきた。おまけにガリューシダ殿下の殿下に手を差し向けようとしたら
「ちょっと待て、まずは体の魔流の廻りを治してやってからはどうだ?なあその方がいいだろう?」
と、またまたお兄ちゃん風を吹き付けて来た。うるせーなシーダ。
「シーダは煩いですよっ!同時に複数個所の別の病気も治せますからご心配なく!」
ついうっかりまた常識外れな治療術を公表してしまったが、仕方ない。
勢いに任せてガリューシダジュニアの上に手を置いた。ガリューシダ殿下の魔力を診る。うん、やっぱり下の方のご病気だ。私はガリューシダ殿下の魔力を掴み…治療術を〇間に向けて施した。
「うぅああ……」
ちょっと…急に色っぽい声を出してきたよ、ガリューシダ殿下。声までシーダに似てるからベッドでのアレコレを思い出しそうですが…
すると今度はエリアンナ妃が私の横に走り込んで来た。
「ガリューシダに何をしているのっ!」
エリアンナ妃が私の体に触ろうとしてきたが、シーダが間に入って来た。
「今は治療中です」
シーダがそう言うと、エリアンナ妃は扇子でシーダを叩こうとした!
「シーダちゃん!」
アサシアニカ妃の叫び声より早く、何と弟のジュリシーダ君がシーダとエリアンナ妃の間に入ると妃の扇子を手で受け止めていた。か…ぁカッコイイーー!見たーあれぇ!まだ14才だって!
「兄上に無礼だぞっ!」
「なっ…!」
おぅぅ…と思うが、まだ治療中の私は手が離せない。おっ?やっとガリューシダ殿下の下半身の魔流の廻りが良くなってきたね。私の目には綺麗に発光するガリューシダ殿下の殿下が視えているのだが、それを声高に表現するのは差し控えたい。
「治療、終わりました」
そう言うとエリアンナ妃は私を押し退けて、ガリューシダ殿下の側に近付いた。
「ああっガリューシダ~怖かったでしょう。こんな下賤の者共に囲まれて、そんな破廉恥な所を撫でまわすなんてっ陛下が連れて来た訳の分からない女の言葉を鵜呑みにするなんて…ガリューシダは王太子なのよっ!子種に問題なんてあるものですか…!」
「王太子はラガシーダ兄上だ!」
ひぃっ?!ジュリシーダ君っ…ジュリシーダ君の叫びに大人達の魔質が緊張で一気に張り詰めた。シーダと伯父様の特に魔力量の多い2人からの魔圧が凄いことになっている…
シーダがジュリシーダ君に近付いて口を塞ごうとした。
「兄上っ離してよ…もう皆分かってるくせにっ…もがっ…ガリューシダ兄上だけ変…もがもが…」
ジュリシーダ君が大人しくなった…大丈夫かな、まさか口塞がれて失神しちゃった?ジュリシーダ君の顔を覗き込むと、大人しくなってはいるが、ガリューシダ殿下を睨みつけている。その時に気が付いた。
もしかして公の場所でジュリシーダ君はガリューシダ殿下を兄と呼んではいけなかったのではないか?
暗黙の了解で黙っていたことを、もしかしたらガリューシダ殿下とエリアンナ妃だけが知らなかったのではないのか、と思い至った。
「兄?何を言っている…私はそこのラガシーダとは半分血は繋がっているが君とは…遠縁の親戚だろう?」
戸惑ったようなガリューシダ殿下の声が室内に響いている。そうか…ジュリシーダ君とエミリアちゃんは王族とは遠縁の子達で今は公爵家に居候しているとかの設定なんだね?ジュリシーダ君とエミリアちゃんは戸惑ったような目で国王陛下とアサシアニカ妃を見ている。
「……申し訳ありませんでした、間違えました」
ジュリシーダ君っそれ不正解だよ!ガリューシダ殿下が怪訝な顔をして国王陛下を見ているが…陛下は見られて目を逸らしちゃったよー!それも不正解だからっ。
周りの大人達のギクシャクした空気を感じてか、ジュリシーダ君は半泣きになってしまった。
「ごめんなさい兄上…」
シーダがジュリシーダ君を抱き締めて背中をトントンと叩いている。するとアサシアニカ妃が急に飛び出して来て、シーダとジュリシーダ君に抱き付いた。
「もう…もう…子供達をこれ以上苦しめないで!」
その叫びはエリアンナ妃に向けられていた。するとガリューシダ殿下がフラリ…とベッドから立ち上がった。
「父上…確かにラガシーダは私より先に生まれています…王位継承権は一位なのは間違いありませ…」
「何を言うのっ!お前が本物の私の息子で私の子供だからこそ王太子になってっ行く行くは国王になるのは当然でしょう!あんな庶子の子供な…」
その時、アサシアニカ妃が叫んだ。
「シーダはこの私と陛下との間に産まれた歴とした王族です!ジュリシーダもエミリアも……っ……子供は子供達は……ぜっ…全員勿論全員っ私の可愛い子供達ですっ!もう苦しめないで…心から愛してあげて……」
「お母様っ!」
エミリアちゃんがシーダとジュリシーダ君の所に駆けて行ってアサシアニカ妃に抱き付いた。
すると…静かに国王陛下までもが、アサシアニカ妃達の側に行き子供達に抱き付いた。
「父上ぇ…ううっ…」
「おとうさまぁ…!」
ジュリシーダ君とエミリアちゃんが国王陛下に抱きついた。多分、エリアンナ妃とガリューシダ殿下がいる所ではこれが初めての親子としての触れ合いなのではないだろうか。
周りにいる近衛やお付きのおじさん達は魔質の感じからすると知っているようだ。ただガリューシダ殿下とエリアンナ妃だけが驚愕の表情と共に、魔質も驚きに満ちている。
そんな親子の怒涛の告白劇の中、部外者の私は1人だけ蚊帳の外です。
いやそれは構わないのだけど…修羅場だよ、これ修羅場だよね?
取り敢えずじりじりと後ろに下がって魔物理防御障壁を静かに張った。
扇子とか飛んで来るかもしれないしね…
「そうだぜ、ララーナの右手は俺専…だっ?!いってーな!叩くなよ!」
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はぁ…でもどうしよう…。協会に相談したら
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だそうだ。
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「おおっ!?まあ他人の…なんて嫌だろうけど…頼んでみよう」
って言ったけど、元奇跡の使い手の男性は拒否された。
「もし完治しなかったら斬首だろう!?私は嫌だ!」
えっ?首、ポーンなの?
それにそもそもだけど、治療で失敗ってどうなるの?私失敗しないので!………あれ?私がおかしいの?
「完治しないことってあるんですか?」
私が元奇跡の使い手の男性にそう聞くと、その男性…今は普通の治療術師は目を見開いた。
「治療を受ける本人にこの場合はガリューシダ殿下だが…に治そう、良くなろう、という気持ちがなければ完治はしない。患者の魔力を引き出すのが治療だから、当然だろう」
私…治す気の無い人って治療したことあったっけ?いや…あるよ。昏睡状態の若い女の子の治療をしたことがある。でも治ってたけど…え?もしかして意識の無い人って治療出来ないの?
「あの因みになんですが、意識の無い人を治療しますよね。その時は完治しないのですか?」
男性治療術師は怪訝な顔をして私を見た。
「当たり前だろ?意識が戻るのを待って了承を得てから治療を進める。意識の無い人間に治療魔法をかけても完治はしないし意味は無いだろ?そんなの常識だ。意識の無いほどの怪我や病気なら…早くて15日以上は完治にかかるだろうし、まあそこは術師の能力次第で期間が短くなるがね。因みに私なら10日間で治せるよ」
おっちゃんの自慢話はいらねぇ。それにしても…
常識…とまで言われてしまったが、私の治療は非常識だったようだ。だって昏睡状態や意識の無い人だって…一瞬で治ってたんだもん。誰からも「早く治りますね。」なんて聞かれたことないし…あ、そうだった。
元々私が治療に回っている僻地や無医村は…殆どの住人が奇跡の使い手なんて初めて見たに違いない。だから普通の治療術師と奇跡の使い手様って治療の速度違うのね~という感想で終わっていた可能性がある。
住人の方が重篤な病に侵された時に、別の治療術師もしくは、別の奇跡の使い手に治療してもらう機会があった場合、遅々として治療が進まないことに気が付いて、私の治療速度が異常…おかしいということがバレるかもしれないが、それに気が付かれない限りはバレる心配は無い…と思う。
いやもうさ、バレたらバレた時で開き直って
「元異世界人ですけど、何か?電気とガスが魔法の代わりでしてヨ?」
とかふんぞり返って異世界転生チートの説明してやるさ、文句があるか!
それは兎も角としても
私だって妙齢の女子だ。ヨボヨボのおじーちゃんの……なら治療だから!で何とか触れると思うけど、若い男の人(王子様)は抵抗あるわぁ…
しかし頼みの綱の治療術師のおじさんは拒否るし、仕方ないか。
「よし…仕方ないですね。別に全裸のガリューシダ殿下に触るわけじゃないですしね!」
私がそう言うとシーダは慌てていた。何かを妄想したみたいだ。
そうだ…服の上から治療が出来るのだから、直接の接触した感覚を少なくする為には…私はリュックサックの中を探った…これだ!
そして、ガリューシダ殿下といなくていいのに、エリアンナ妃までが見学?に来ているお城の貴賓室の寝所。おかんが息子の息子が見知らぬ女に触られるのを見学にくるって珍しいね。
と言っても、シーダパパ…国王陛下とシーダママのアサシアニカ妃、伯父様、シーダの弟妹達…シーダファミリーも勢揃いしているので、エリアンナ妃は帰れ!という訳にはいかない。
「ララーナ…何でその、手袋してるんだ?」
「視覚的な防御が欲しいですからね!治療に差し障りがあってはいけませんし、苦肉の策です」
「苦肉の策…」
シーダが私の手に装着している、MY軍手を指差している。やっぱり王子様の王子様だとはいえ、直触りは避けたい…あれ?王子様の王子様に触りたくないっていうのは、ガリューシダ殿下に対する不敬に当たることなのかな?王子の王子に触れさせて頂くことは尊いことです!っと感謝して触らなければいけないのか?
それじゃあ巷で噂の痴女様になっちゃうじゃないか!
まあいいか、さっきから王子様の王子様を心の中で連発していて、心の中では痴女確定なゲスイ私になっていた。
とっとと終わらせよう。さっきからイライラしているエリアンナ妃がシーダを睨んだり、アサシアニカ妃を睨んだり…とこの部屋の空気(魔質)が悪すぎるもんね。
私は皆が見守る中、ベッドに寝転んだガリューシダ殿下に近付いた。はぁ~改め見るとガリューシダ殿下が一番シーダに似てるよね~。外見も魔質もこんなに似ていて腹違いなんて設定?は無理があるよ。
「痛かったら言って下さいね~体を楽に~ついでに性格の治療も出来たらよいのですがね~」
ついシーダに似すぎているために、ぞんざいな上に嫌味を言ってしまったが…何故だか真横について来ているシーダが
「無駄口を叩くな、早く治してやれ。ガリューシダも痛かったらすぐ言えよ」
と、お兄ちゃん風を目一杯吹かせてきた。おまけにガリューシダ殿下の殿下に手を差し向けようとしたら
「ちょっと待て、まずは体の魔流の廻りを治してやってからはどうだ?なあその方がいいだろう?」
と、またまたお兄ちゃん風を吹き付けて来た。うるせーなシーダ。
「シーダは煩いですよっ!同時に複数個所の別の病気も治せますからご心配なく!」
ついうっかりまた常識外れな治療術を公表してしまったが、仕方ない。
勢いに任せてガリューシダジュニアの上に手を置いた。ガリューシダ殿下の魔力を診る。うん、やっぱり下の方のご病気だ。私はガリューシダ殿下の魔力を掴み…治療術を〇間に向けて施した。
「うぅああ……」
ちょっと…急に色っぽい声を出してきたよ、ガリューシダ殿下。声までシーダに似てるからベッドでのアレコレを思い出しそうですが…
すると今度はエリアンナ妃が私の横に走り込んで来た。
「ガリューシダに何をしているのっ!」
エリアンナ妃が私の体に触ろうとしてきたが、シーダが間に入って来た。
「今は治療中です」
シーダがそう言うと、エリアンナ妃は扇子でシーダを叩こうとした!
「シーダちゃん!」
アサシアニカ妃の叫び声より早く、何と弟のジュリシーダ君がシーダとエリアンナ妃の間に入ると妃の扇子を手で受け止めていた。か…ぁカッコイイーー!見たーあれぇ!まだ14才だって!
「兄上に無礼だぞっ!」
「なっ…!」
おぅぅ…と思うが、まだ治療中の私は手が離せない。おっ?やっとガリューシダ殿下の下半身の魔流の廻りが良くなってきたね。私の目には綺麗に発光するガリューシダ殿下の殿下が視えているのだが、それを声高に表現するのは差し控えたい。
「治療、終わりました」
そう言うとエリアンナ妃は私を押し退けて、ガリューシダ殿下の側に近付いた。
「ああっガリューシダ~怖かったでしょう。こんな下賤の者共に囲まれて、そんな破廉恥な所を撫でまわすなんてっ陛下が連れて来た訳の分からない女の言葉を鵜呑みにするなんて…ガリューシダは王太子なのよっ!子種に問題なんてあるものですか…!」
「王太子はラガシーダ兄上だ!」
ひぃっ?!ジュリシーダ君っ…ジュリシーダ君の叫びに大人達の魔質が緊張で一気に張り詰めた。シーダと伯父様の特に魔力量の多い2人からの魔圧が凄いことになっている…
シーダがジュリシーダ君に近付いて口を塞ごうとした。
「兄上っ離してよ…もう皆分かってるくせにっ…もがっ…ガリューシダ兄上だけ変…もがもが…」
ジュリシーダ君が大人しくなった…大丈夫かな、まさか口塞がれて失神しちゃった?ジュリシーダ君の顔を覗き込むと、大人しくなってはいるが、ガリューシダ殿下を睨みつけている。その時に気が付いた。
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暗黙の了解で黙っていたことを、もしかしたらガリューシダ殿下とエリアンナ妃だけが知らなかったのではないのか、と思い至った。
「兄?何を言っている…私はそこのラガシーダとは半分血は繋がっているが君とは…遠縁の親戚だろう?」
戸惑ったようなガリューシダ殿下の声が室内に響いている。そうか…ジュリシーダ君とエミリアちゃんは王族とは遠縁の子達で今は公爵家に居候しているとかの設定なんだね?ジュリシーダ君とエミリアちゃんは戸惑ったような目で国王陛下とアサシアニカ妃を見ている。
「……申し訳ありませんでした、間違えました」
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周りの大人達のギクシャクした空気を感じてか、ジュリシーダ君は半泣きになってしまった。
「ごめんなさい兄上…」
シーダがジュリシーダ君を抱き締めて背中をトントンと叩いている。するとアサシアニカ妃が急に飛び出して来て、シーダとジュリシーダ君に抱き付いた。
「もう…もう…子供達をこれ以上苦しめないで!」
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「父上…確かにラガシーダは私より先に生まれています…王位継承権は一位なのは間違いありませ…」
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その時、アサシアニカ妃が叫んだ。
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すると…静かに国王陛下までもが、アサシアニカ妃達の側に行き子供達に抱き付いた。
「父上ぇ…ううっ…」
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ジュリシーダ君とエミリアちゃんが国王陛下に抱きついた。多分、エリアンナ妃とガリューシダ殿下がいる所ではこれが初めての親子としての触れ合いなのではないだろうか。
周りにいる近衛やお付きのおじさん達は魔質の感じからすると知っているようだ。ただガリューシダ殿下とエリアンナ妃だけが驚愕の表情と共に、魔質も驚きに満ちている。
そんな親子の怒涛の告白劇の中、部外者の私は1人だけ蚊帳の外です。
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そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
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