心が焦げる

神奈川雪枝

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ジリジリ

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『 別れよ 。』

『うん 。』
( ちょっと待ってよ、何で別れたくないのにっ!)


「 待って ……。」

鳴り響いている目覚まし時計、
天井に伸びた腕 。

( また、夢 か 。)

3年間、
私はずっと、彼を引きずっている 。
( 何処まで私は太郎の虜なんやかねぇ 。)

高校2年生の終わりあたりから、
私と太郎は、
付き合いだした 。

春休みの勉強合宿の最後の日、
何故か寝れなくて、
外の近くのコンビニまで私はふらっと行った 。

雑誌を適当に立ち読みしてたら、

『 高校生がこんな時間に一人で何してんねん?」って、
コンビニにやってきた太郎に、
話しかけられたのだ 。
( 同じクラスだったけど、話したのはこれが始めてだったかもね。)

『そーいう赤井くんこそ、こんな時間にどーしたん?』

彼は笑いながら、
当然のように、エロ本の方に向った 。

『 俺の夜食 。笑』

『わー、ありえん。笑』

『何でや、これが男っちゅーもんやろ。笑』

『 しょーもな 。』

会話が途切れて、
お互い、雑誌を立ち読み 。
( 何で今日、こんなに寝れんのやろかぁ?)


『 おい 。』

『 んっ?』


『まだ読むんか?笑』

『んー、何や眠くないねんもん。笑』

『なら、俺とやらしい事でもする?笑』

『 遠慮しとくわ。笑』

『冗談や、冗談。笑
 もう、帰ろうや?笑』

『 そーうやねぇ 。』

彼と私は、
静かにコンビニを後にした。




( 太郎、会いたいよ 。)


高校を卒業した私は会社に勤めて、
今日も、仕事の日々ですよ 。







★何でこんなに好きなのに、あの時私は何故あんなにもあっさりと彼と別れてしまったのだろうか?★

ガタン、がたん 。

電車に揺られる、朝 。
(夢なんかに出てくるから、私の頭の中また太郎で埋め尽くされてもうたやん 。)

壁に寄りかかりながら、
窓の外を見る 。




コンビニを後にして、
私と彼は、
旅館に戻った 。

お互い無言で歩いていたけど、
全然きまづくなんて無くて 。
( むしろ、この空気が心地良くって!←)

旅館に入ってすぐのフロントの自動販売機。

彼はいきなり、
「 のど、かわかへん?」って指さした 。

「 あー、うん 。」

「絶対喉渇いてへんし。笑」

「 やって、お金持ってきてへんねんもんー。」

私がそう言うと彼は柔らかく笑って、
ポケットから財布を取り出して、
自動販売機に投入した 。

「 何がええの?」

「えっ?」

「えっって、別にジュース位奢ったるわ。笑」

「ほ、ほんまにっ?!」

「何で嘘つかなあかんねん。笑」

「ありがとうっ!」

「お、おおー無礼講や無礼講!笑」

「無礼講って何や使い方間違ってへん?笑」って言いながら、
私は自動販売機のボタンを押した 。
( 何か重たいけど無償に飲みたくなったから、コーラ!←)

「使い方なんかどーでもええやろ!←
 大事なんはニュアンスや。笑←」って彼は笑いながら、
自動販売機から出てきたコーラを取ってくれて、
私に渡してくれた。
( 何だこのさりげない優しさ!←)

「 ほんまにありがとうね。」

私は冷たいコーラのタブを開けて、
口に運んだ 。

彼は黙って、私の事を見ていた 。
( ん、何?)

「 自分のジュース、買わんの?」

何気なく聞けば彼はぶわっと笑った 。
( えっ、何かおかしな事言った??)


「 俺も、コーラ飲みたい。笑」

満面の笑顔で、私の飲んでいるコーラを指差す。
(えっ、えっ、どーいう事?!)


「 やっぱ、コーラ代返して?笑」

彼はにやっと笑うと、
自然に私の唇に吸い付いた 。

「 んっ?!」

突然の事で身体が固まって、
眼を見開いて、
手に持っていたコーラを床に落としそうになったけど、
彼がコーラを持っている私の手ごとしっかり掴んでいて、
落とす事は無かったけれど、
私の心臓は尋常ないほど鼓動を奏でていた 。

( ほんまにどーいう事っ?!)




『……xx駅~xx駅~……』

目的の駅に着く 。
彼との昔の想い出に頭を占領されながら、
私は会社に向って、
歩いていく 。






★別に始めてのキスじゃかったけど、貴方とのキスほど心が焦げるキスは無かったように思えるのよ 。★

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