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誰とでも手を繋ごう。
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彼は何も言わなかった。
ただ黙って私の手を繋いでいた。
ただそれだけだった。
「うっうっ。」
泣きじゃくる私に
彼は何も聞かなかった。
ただ手を繋いでいた。
涙を拭こうにも、
両手繋がれていたのでは
拭えない。
手を振り払おうとしたけど、
暖かく力強い手にぎゅっと握られていたので、
手を離せなかったのだ。
「悲しみを味わうんだ。」
彼は優しく言う。
悲しみなんて知りたくないと幼い私は心の中で叫ぶ。
楽しいことしかいらないと、
私はまた涙を流すのだった。
「全部、大切な感情なんだよ。」
「笑顔も悲しみも、怒りだって。」
「いらないものなんて、ないよ。」
あぁ、どうしてこの人はこんなにも穏やかなのだろう。
涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃの私のことを、
なんて暖かい目で見てくるのだろう。
自分が恥ずかしい。
あぁ、
嗚咽が収まって、
暖かい涙が一筋流れた。
感情と向き合えば、
穏やかになれるのかな?
怖い怖い。
マイナスの感情と向き合うのは、
怖い。
「僕も昔はよく泣いたよ。」
「そういえば短気だったなぁ。」
「今だって怒るし泣くよ?」
ずっと笑顔でいたいなんて思うことの方が、
不自然だったのかもしれない。
「はい、もう、大丈夫。」
彼につられて、
私も微笑んだ。
嬉しい時も、
悲しい時も、
むかついた時だって、
私を受け入れてくれる彼がいるなら、
もう大丈夫。
さぁ、どんな時でも手を繋ごう?
ただ黙って私の手を繋いでいた。
ただそれだけだった。
「うっうっ。」
泣きじゃくる私に
彼は何も聞かなかった。
ただ手を繋いでいた。
涙を拭こうにも、
両手繋がれていたのでは
拭えない。
手を振り払おうとしたけど、
暖かく力強い手にぎゅっと握られていたので、
手を離せなかったのだ。
「悲しみを味わうんだ。」
彼は優しく言う。
悲しみなんて知りたくないと幼い私は心の中で叫ぶ。
楽しいことしかいらないと、
私はまた涙を流すのだった。
「全部、大切な感情なんだよ。」
「笑顔も悲しみも、怒りだって。」
「いらないものなんて、ないよ。」
あぁ、どうしてこの人はこんなにも穏やかなのだろう。
涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃの私のことを、
なんて暖かい目で見てくるのだろう。
自分が恥ずかしい。
あぁ、
嗚咽が収まって、
暖かい涙が一筋流れた。
感情と向き合えば、
穏やかになれるのかな?
怖い怖い。
マイナスの感情と向き合うのは、
怖い。
「僕も昔はよく泣いたよ。」
「そういえば短気だったなぁ。」
「今だって怒るし泣くよ?」
ずっと笑顔でいたいなんて思うことの方が、
不自然だったのかもしれない。
「はい、もう、大丈夫。」
彼につられて、
私も微笑んだ。
嬉しい時も、
悲しい時も、
むかついた時だって、
私を受け入れてくれる彼がいるなら、
もう大丈夫。
さぁ、どんな時でも手を繋ごう?
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