心をいただきます。

神奈川雪枝

文字の大きさ
上 下
1 / 1

人の気持ちを考えなさい。

しおりを挟む
「最高!」


今私の上に乗っている男は、

妹の彼氏だ。


彼は、私が妹の姉だということを知らない。

彼と関係を持つのはとても簡単で、
何人と関係を持っているのか、
はかりしれない。

妹はそれでも私を選んでくれたからと、
彼の浮気に気づいては一人で泣いて、
見て見ぬふりをする。

それがどっこい。

妹の友達とも関係を持ってしまったらしいのだ。

友達は妹の彼氏だということを知っていて関係を持ったと、
今じゃ開き直っている。

心優しい妹は、
誰も信じられないと、
心を病んでしまった。

そこで一肌脱ごうと、
彼に近づいたのだ。

一人でバーに来ているときに、
隣に座った。

「おひとりですか?」

「そうなんですよ。
 寂しく飲んでます(笑)」

「彼女はいないの?」

「いませんよ(笑)」

「 私もいなくて。」

「そうなんですか?こんなに綺麗なのに?
 じゃぁ、独り身同士出会いに、乾杯。」と、
グラスを合わせた。

「寂しいな。」と彼の腕に胸を押し当てるだけで、
簡単にホテルに行けた。

それからずるずると関係を続けている。

惚れさせるのが、ミッション。

「なんで、ちゅーダメなの?」

「付き合ってないからダメ。」

「なら付き合おう?」

「だめよ、れんは。
 女の子いっぱいいるでしょ?」

「ばれてた?(笑)」

「ばれてる。」

妹はなんでこんなくずなんかにと何度も思った。

呼ばれてホテルに行ったけど、
朝からおなかの調子がよくなかった。

「ごめ、今日、おなか痛い。」

「え、大丈夫?
 生理かな?」

「今日、できないかも。」

ふざけんなとか
がっかりとか言われるのかと思ったら、
違った。

「うん。いいよ。
 具合悪いなら、横になりなよ。」

優しく気づかってくれた。

女の子に見境がないだけで、
めちゃくちゃ優しい。

こういうところに、
妹は惚れたのかもしれないなと、
少しわかった気がした。


「中にいい?」

「結婚するならいいよ。」


「うん。しよ。」

「え?」


驚いてると、キスをされた。

「もう、遊ぶのやめたから。」

「なんで?」


「俺、まきこさんに惚れてる。
 まじだから。」

と、行為後私に携帯を差し出した。

消していいよという。


そこには、妹の名前もあった。


(消せない。)


「またね。」と、
彼にキスをした。


もう、私は彼に会わない、会えない。


妹の連絡先だけ残して、
私の連絡先は消した。


なんで胸が痛むの。

なんで涙が流れるの?


いいじゃない。


惚れさせるのが目標だったじゃない。

惚れさせて捨てて、
捨てられたほうの痛みをわからせるために近づいたんじゃない。

私が傷つく必要なんてある?



ないでしょ?
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...