レモンジャンキー!

神奈川雪枝

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父からはほのかにレモンの匂いがする。

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小さい時、
友達と喧嘩しちゃった時とか、
転んだ時とか、
家に帰ってきて泣いてる私を見た
お父さんが、
「あいは、泣き虫なんだなぁ。」と、
困った顔をして、
レモンのお酒を飲むのが好きな父の為の
レモンを1つ、私に手渡した。

「レモン?」

「そうだよ、あい。
これは、レモン。
匂いを嗅いでごらん。」

言われたとおりに匂いをかぐと、
爽やかな香りがした。

「ほら、涙がとまった。」と、
父は嬉しそうに笑った。

レモンは、父のお酒の為にかってあるから、
お母さんから、
「レモンはお父さんのよ。」と言われていて、
そのレモンを手にして、
悲しい事を忘れた。

「かじってごらん?」と、父が言う。

齧ると酸っぱくて爽やかな味がした。

あまりの酸っぱさに、
目を丸くした。

「おいしいだろ?」

「すっぱいよ。」

「これから嫌な事があったら、
父さんのレモンをあいにわけてあげる。」

「いいの?!」

「もちろん。」
そう微笑んだ父は数日後、
交通事故で、
この世から居なくなった。

母が泣く。
父は居ない。
私も泣いた。

泣いて目が腫れて、
声もかれた。

喉が渇いたと、
母に言うと、
冷蔵庫からお茶を取り出した。

冷蔵庫にレモンがあった。

「レモン!ちょうだい!」というと、
母はレモンを1つとってくれた。

匂いをかぐ。

父を思い出す。

1口かじる。

涙が溢れた。

父とはもう二度と会えないと言われて、
意味が分からなかったけど、
何日待っても帰ってこないから、
本当に会えないんだと理解した。

父はレモンサワーが好きだったらしい。
母は、仏壇にレモンサワーの缶をおく。

レモンは、私にとって特別な物になった。
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