私は走っていた

神奈川雪枝

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お願い、間に合って!

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私は走っていた。

どうして私はいつもこうなんだろう。

まだ大丈夫って何を根拠に自分に言い聞かせているんだか。


( お願い、間に合って 。)


幼馴染の太郎。
ずっと一緒だった。
放課後はよく二人でバスケをした。

私は昔から太郎の事が大好きだった。


だけど告白する勇気がなくて。
告白しようと思ってもいつもできずに居た。

それに太郎は何度か女の子から告白を受けていた。
それでもいつも何故か断っていた。

だから私はいつでも太郎と一緒に居れるんだと勝手に安心していたのだ。



それは恋だけじゃなかった。


彼は中学卒業後、
東京へ行ってしまった。
(私が知ったのは彼が出発した後だった。)

あの時は一人でわんわんと泣いた。
彼はもう戻ってこないと思ってしまったから。

でも彼からちゃんと連絡はあった。
(やってお前なんか泣きそうやん?苦笑
 俺そーいうん苦手やねん 。)

それに彼は定期的にちゃんと実家に帰ってきた。


だからやっぱり私はまた勝手に安心していたんだと思う。




炎天下の中走る、はしる。
なんで私はいまパンプスを履いてるんだろう?
足が凄く痛い。
それに普段よりも凄く走りにくい。
なんでこんな時に私はロングスカートなんだろう?
なんでカンカン帽なんて被ってるんだろ?


なんでわたしはいつも彼が動かないと動けないんだろう ?


自分が嫌になって思わず泣きそうになった。


今日は久しぶりの休みで私は女友達と遊ぶ予定だった。
久しぶりにお洒落して待ち合わせ場所に行くと彼女は何故かソワソワしていて。

「ど、どーしたん?」

「どーしたんって何暢気な事言うてんねんっ。
 此処来る途中に太郎君に逢ってんねんけど、
 今日お見合いするらしいでっ。」

「 えっ 。」

「アンタ何してんの?
 太郎君、結婚するかもしれへんねんでっ?」

「 ……。」


「雪枝、いつまでも気もち伝えんくてええの?」

「……っ。」

「今は泣くとこちゃうやろ?
 はよ、太郎君のとこに行きぃ?」

彼女に太郎の居場所を聞いて
私は走り出したのだ。

なんでいつも太郎は私に何も言ってくれないんだろう?


太郎は私の事ただの幼馴染としか思ってへんのかな?


そう思った途端に私は派手にずっこけてしまった。

「痛っ 。」

でも此処で泣く訳にはいかない。

私は立ち上がる。
パンプスを履きなおして
スカートも折って折って短くして、
帽子はもう無理やり鞄の中に押し込んだ。

汗がだらだら流れている。
目元は涙で濡れている。
久しぶりにした化粧も今では台無しだ。


私はまた走り出すのだ。


彼の居る場所に向って 。




ホテルに着くと
ばったり太郎と出くわした。

「 …… 雪枝?」

「 太郎っ 。」

「ちょ、お前何したんっ?」

「何って私は太郎に……。」

「 俺 ?」

「……ぁぃ 。」

「 えっ?」

「太郎、お見合いはっ?」

「あぁ~。」

「あぁ~って。」

「別に終わったけど。」

「終わったって、太郎結婚するん?」

「……せぇーへんわ 。」

「 良かったぁ~。」

私はその場に座り込んでしまった。

「良かったって、なんで雪枝お見合いの事知ってんねん?」

「聞いたの 。」

「聞いた……あぁ~。」

彼は自分が言った事を思い出したみたいだった。
座り込んで一気に力が抜けてしまった。
足がものすごく痛い。
何より彼の顔を見ると泣きそうになった。


「雪枝、俺がお見合いするって聞いて嫌だったん?」

彼を見るとニヤっと笑っていた。


「 嫌に決まってるやん 。」


「 なぁ、なんで ?」

耳元で彼は囁く。

「 何でって 。」

「答えたらええもんやるで?笑」

彼はやっぱり私の気持ちを知ってるに違いない。


「 わたし、太郎のこと す き やもん っ 。」

真っ赤になりながら私はようやく彼にそう伝えられた。


「 知ってる。」

耳元で彼は嬉しそうに囁くのだ。

彼は私にキスをした。
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