サービスエースを狙え!

神奈川雪枝

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毎日見てたよ?

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「好きですっ。」

放課後ずっと好きだったあいつに告白した。

「 ごめん。
 誰だっけ?」

申し訳なさそうにそう言われた。

「同じクラスの、田村だよ。」

「そっか。
 ごめん、俺記憶力悪くて。」

知ってる。
暗記苦手なの。
歴史のテストいつも点数悪いのも知ってる。

入学して3ヵ月、
いい加減覚えてくれててもいいんじゃないかなとかって思ったり。

というか、
すでにもう2回もごめんって言われてる私の気持ちも
考えてくれてもいいんじゃないかなとかって思ったり。

「ううん、仕方ないよ。
 徳田、毎日部活忙しそうだもんね。」

そういう所が好きだった。
毎日テニスに打ち込んでる徳田の姿に惚れたのだった。

「わりぃ、俺部活あるから。」

「あ、うん、わかった。」

私は科学部で科学部の窓の前にテニスコートがあった。
誰よりも沢山練習している徳田が私は好きだったのだ。

徳田はあっさりと私の目の前から居なくなった。
今日もまたラリーの練習をするのだろう。

「はぁ~。」

思わずしゃがんだ。
勇気を出してみたものの、
まっすぐに知らないと言われた。

話しかけたことなかったもんな。
私は先走ってしまったのだ。

(何やってんだろう。)

それから私は徳田に挨拶をするようになった。

「お、おはよう!」

最初はきょとんとした顔をしていた徳田だったけど、
すぐに、
あぁ、昨日のといわんばかりの顔になって、

「はよ。」と挨拶をしてくれた。

毎日おはようとまたねを頑張って繰り返すうちに、
徳田は笑顔で挨拶を返してくれるようになった。

「田村。」

初めて徳田から挨拶をしてくれたときの喜びは忘れられない。

「な、なに?」

「おはよう。」

「あ、おはよう。」

じゃぁなと朝早くからテニスの練習をしていた徳田は、
ほんのり汗の匂いがする。

放課後、
今日も徳田は懸命にボールを打ち返す。

私は今日も水の成分を顕微鏡で覗き見る。
なんてことない毎日だ。

「田村っ!」

名前を呼ばれてばっと顔をあげると、
窓の所に徳田が居た。

「え?え?なに、どうしたの?」

「お前、科学部だったの?」

「そーだよ?」

「俺知らなかった。
 今ぱってふとこっちみたら、
 なんか田村ぽいやついんなと思って走ってみたら、
 やっぱ、田村だった(笑)」

徳田は満面の笑顔で話しかけてくる。

「なぁ、なにしてんの?」

「水の成分見てたよ?
 見る?」

「あ?観てぇけど、俺細かいの苦手なんだ。」

「わかる。」

「なんだと?」

「徳田は、豪快だもんね。」

「おう。」

沈黙。
徳田の少し上がった息遣いが空に響く。

「なぁ、田村は何で俺なの?」

「え?」

「なんで告白してきたんだよ。」

徳田を見ると顔を赤くしてうつむきがちにぼそぼそと話した。

「 一目ぼれだったよ。
 こっからさ、テニスコート見えるじゃん?
 毎日真剣な顔して練習してる姿が、かっこいいなって思った。」

「うん。」

「それだけだよ。
 クラスでも徳田明るいしね。
 面白そうとも思った。」

「うん。」

「徳田は、私のこと覚えた?(笑)」

「あったりめーじゃんっ!」

ばって顔をあげる徳田。
「いいんだよ、私影薄いの知ってるから。」

「そんなことないよ、田村は、優しいよ。」

「そう、かな?(笑)」

「毎日挨拶してくれて、
 癒されてた……。」

「なら良かった(笑)」

「なぁ、田村。」

「ん?」

「今も気持ち、変わってない?」

「え?」

「俺も、田村の事好きになったんだけど。」

顔をあげてまっすぐ見つめて告白してくる徳田は、
私の好きな真剣な顔をしていた。

「いいよ、
 私も好き。」

「なら、付き合うべ?(笑)」

「うん。」

2人してはにかんだ。

先回って告白しちゃって振られちゃったけど、
今となっては素敵なきっかけの一つであった。
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