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3歳の僕
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しおりを挟む「ただいまーレティ!」
「ミスティラリ兄様」
幼学院から帰宅した下の兄が、一目散に自室にいた僕の元にやってくる。
制服から着替えもせず、玄関からいつも直行してきてくれる兄の姿に、嬉しさが込み上げ自然と笑みが浮かんでしまう。
椅子に座っていた僕は、兄の細くもしなやかな筋肉が薄らと感じられるその腕の中に抱き上げられた。
そのままぎゅうぎゅうと、痛くはないが隙間なく抱きしめられる。
そのまま頬を擦り寄せられ、顔中にキスを落とされるまでが毎日の日課の様になっている。
ちなみに朝起きた時、見送りの時、帰宅時、就寝前と、1日最低4回はこの一連の流れが行われる。
それは上の兄にも同様に。
僕も嬉しいから、いつもされるがままになっている。
いつかは側にいられなくなるんだし、今だけ、ちょっとだけならいいよね?
2人の弟としての役得だ。
それにしても、今日も色気が凄い。
こんなに常に色気が出てて、幼学院や社交してる時に危ない目に合わないんだろうか?
こんなに美形で色気ある12歳の、少年期の終わり特有の雰囲気もある子供、すぐに目をつけられて下手すれば拐かされてしまうんじゃ…
「兄様、こんなにお綺麗で、お外に出ていて危険はないのですか?」
僕は真剣に心配しての問い掛けだったんだけど、なぜか兄様にキョトンとした顔をされた。
「レティ、呼び方。
いつも言ってるでしょ?きちんとした場でない時は昔みたいに呼んで、って。
それと危険な事なんてないよ。剣術の稽古もしっかりと受けているし、魔法の勉強もしているからね。
心配しなくても、レティには誰にも、指一本触れさせないよ?」
確かに、ミスティラリ兄様は剣術の稽古も魔法の勉強もかなりみっちりされている。
剣術の稽古なんて毎朝早朝に、カディラリオ兄様と手合わせもしている程だ。
魔法の勉強はともかく、将来文官の道に進むこの美しすぎる美形は、剣術にもこんなに力を入れていたっけ?
最近は長兄と共に、体術も始めたと聞いたし…こんな設定あったかな?
筋肉も、12歳にしては僕を片腕に縦抱きできる程にしっかりと付いている。
ゲームで出てこなかっただけで、鍛えていたのかな?
確かに自分の身を守る為には大事だもんね。
それに幼い僕の事まで守ると言ってくれるなんて、なんて優しい兄様なんだろう。
「はい、ミー兄様。」
ミー兄様、とは1歳の時にどうしてもミスティラリと発音出来ない僕に、呼びやすい様にと兄様が提案してくれた呼び方。
もうきちんと発音できるようになったから、貴族らしくきちんとした呼び方に直そうと思ってるんだけど、何故かミー兄様はこっちの呼び方に拘っているみたい。
歳の離れた弟は、いつまでも小さいままって事なのかな?
まあ、まだ実際幼子なんだけど…
でもしっかりと喋れるようになった、前世の記憶の分の歳も重ねてる僕には少しこの呼び方は恥ずかしい。
でもそう呼ばないと兄様は悲しそうな顔をするし、ミー兄様、と呼ぶととても嬉しそうにするから、つい請われるままにミー兄様呼びを続けてしまってるんだよね。
同じ理由でカディラリオ兄様の事は、ディー兄様だ。
「レティ、また新しい本を読んでるんだね。今回も魔法関連の本かな?
それとも歴史書?」
「これは、魔法構築の概念に関する本です、兄様。」
そう、僕は周りのみんなからかなり色んな本を与えて貰ってる。
最初は絵本だったのが、難なく読み上げられる事から児童書になり、簡単な学習用の本になり、今ではかなり専門的な本も読むようになっている。
もちろん、文字も難なく、とはいかないまでも少し遅いし形も歪だが書ける。
それを知った両親は3歳の僕が握りやすく書きやすい魔法ペンを特注で作ってくれた。
羽のように軽く、握力を加えなくてもしっかりと手の中にフィットする。インクも途切れることなく出続ける補充が不要なタイプ。
持ち方は握るだけの格好になってしまうが、これは自分の体のサイズの問題だし仕方ない。
それでも、おかげで随分と文字を書くのが楽になった。
そうなると、益々学ぶのが楽しくなるわけで。
特に、前世にはなかった魔法や魔道具には無条件で好奇心が抑えられないし、この世界独特の歴史なんかは公式にも載ってなかった裏設定を見ているみたいでとても楽しい。
こんな普通の子供らしくない僕を、みんな気味悪がる事もなく接してくれるし、学びたいままに学ばせてくれている。
なんて素晴らしい家族達なんだろうか。
「そう。レティが楽しそうで私も嬉しいよ。
でもそろそろ休憩にしない?
私と一緒にお茶してくれると嬉しいな?」
腕に抱えられたまま、至近距離でその綺麗な顔を傾げ尋ねられたら嫌だなんて言えない。
もちろん、兄と過ごす時間を嫌だなんて思う筈は無いんだけど。
でもこの視界いっぱいの麗しい顔には、つい顔に熱が集まってしまう。
だって、僅かに首を傾げるその顔には薄ら涙の気配がするし、眉も寂しげに下がってる。
タレ目がちなアメジスト色の瞳は涙の膜でキラキラ輝いているし、その瞳の奥には何だか熱を感じる。
こんな近距離でその色香を受ければ、毎日の事とはいえ顔が赤らんでしまうのは仕方ないと思うんだ。
この顔の兄様に、僕は逆らえない。
(逆らう事なんて考えたこともないけど。)
「もちろんです、兄様。
兄様と一緒にいられるの、凄く嬉しいです!」
もちろん本心だ。
兄達に少しでも長く愛してもらえるよう、僕は僕の好きの気持ちを隠すつもりはない。
思ってる事も、恥ずかしいけれど全力で言葉にして伝える。
でも、やっぱり恥ずかしくて、更に顔が赤くなるのは許して欲しい。
兄達に嫌われない為の努力とはいえ、前世の日本人な僕の感覚はしっかりとあるのだから。
こんなに全力で好きと出すのは、いつまでたっても恥ずかしいし慣れない。
なるべく照れで変な顔にならないよう、全力で笑顔を意識する。
すると、プルプルと小刻みに震え始めた兄様が、またぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。
さっきよりも少し腕に力が入ってて、更に隙間なく密着する。体勢的に、兄様の首に抱きつくような格好になる。
「あああ、レティ、なんでこんなに可愛いの。
こんなに顔を真っ赤にさせながらそんな可愛い事言うなんて。
私の理性が切れてしまいそうになるよ…
いつもこんなにいい匂いさせてるし。
どこもかしこも小さくて柔らかいし。
だめだめ、レティはまだ3歳なんだから、レティの負担になってしまう。
もう少し大きくなるまでは我慢だ」
僕の肩口から鎖骨辺りにかけて目から口元を埋めるように密着させながら、何かブツブツと呟いている。
くぐもって内容は聞き取れないけど、呟く度に僅かに動く兄様の唇が、胸の上部辺りを擽ってむず痒い。
我慢できなくなって身動ぎすると、兄様がパッと顔を上げて僕の唇にちゅっと軽い音を立て、吸い付くような口付けを落としてきた。
いきなりでびっくりしたし、凄く恥ずかしいけど、これも赤ちゃんの頃から兄様達にされている事だ。
この世界の兄弟はスキンシップが強め?なんだな。
「それじゃあ、ティーラウンジに行こうかレティ。」
「はい、兄様」
恥ずかしさで益々赤くなっていく顔を誤魔化すように、兄様の首に抱きつくようにして肩口に埋めて。
腕に抱えられたまま僕の部屋を兄様と共に後にした。
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