BLゲームの本編にも出てこないモブに転生したはずなのに、メイン攻略対象のはずの兄達に溺愛され過ぎていつの間にかヒロインポジにいる(イマココ)

庚寅

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6歳の僕♢学園編 3♢

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リディが人型になれるようになって暫く経ってからも、兄様達は忙しくなる一方で、家に帰って来れない日が続いた。
ディー兄様は、遠征や夜間勤務が増えて王都にいないか王城内の騎士団用宿舎で仮眠しながら仕事。
ミー兄様は、卒業後に父様の下で働くため、授業がない日は王宮で父様の仕事場に行っていて、2、3日帰らないという日が続き、偶に1週間帰ってこないという時もある。
兄様達が忙しくなってからは、魔道士団長さんに教えて貰いに行っていた魔力訓練も、父様の予定の空いた時に連れて行って貰う事になり、魔道士団の皆さんがすごーく可哀想な感じになってる中練習していた。
忙しい父様の時間を割いてもらうのが申し訳なくて、自然と行く頻度は減っていた。



それも最近は父様まで忙しさが増して、暫く屋敷に僕と母様とリディと使用人達だけという日が増えてきた。
そうなると僕は完全に邸から外には出なくなっていた。



そんなある日の夜。
その日は珍しくルーから、リディと一緒に寝るよう勧められた。
兄様達も父様も帰ってこなくなってから幾日も経った日で、前の日もリディと手を繋いで寝てたから少し迷ったけれど、やっぱり寂しさが勝ってしまって素直に頷いた。
リディももちろんと言うように、喜びを体で表してぎゅっと抱きついてくれた。



リディが人型になれるようになった事は、まだ秘密のままだ。
竜の姿で人の言葉を話せない時のリディは、話せない分を補うように今まで以上に行動で気持ちを表してくれるようになった。
そんなリディに、僕は日に日に甘えてしまっている自覚はあるものの、それを悪いと思わないようにリディがしてくれるものだから、ついそのまま甘えさせて貰ってしまっている。



その日の夜も、リディと手を繋いでいつも通りに眠りについた。
いつもならそのまま、朝まで目覚めずぐっすりなんだけど、その日は夜半に物音と何かの呻くような鳴き声のようなものが聞こえた気がして、フッと目が覚めてしまった。
目を擦りながら、肘で体重を支えるように少しだけ上体を起こして、音がした気がする原因を探すように寝ぼけ眼のまま首を巡らすと、ベッドの傍にルーがいるのに気がついた。
僕が更に上体を起こしてルーに声を掛けようとした所で、僕の気配に気付いたルーが、こちらを振り向く。
先程までは、心做しか気を張りつめて寝室の扉を見詰めている様に感じたルーは、こちらを向いた時にはいつものルーだった。
寝ぼけていたし、夜の静けさがそう見せただけで、気のせいだったのだろう。
そのまま僕の傍まで静かに寄って、囁くように話しかけてくる。



「起こしてしまいましたか?」

「何だか物音がした気がしたのだけど、何かあったの?」



それに僕も囁く様に返す。
その僕達のやり取りを隣のリディが注視しているのが分かる。
リディもどうやら起きていたらしい。



「─いいえ、先程強い風が吹きましたから、それで窓が揺れた音かもしれませんね。
眠れないようでしたら、ホットミルクをお入れしましょうか?」

「ううん、大丈夫。ルーは寝なくて大丈夫?」

「はい、見回りが終わりましたら休みますので。ありがとうございます。私もおりますので、安心しておやすみ下さい。」

「うん、ありがとう、ルー」



ルーは優しく僕の額に掛かる髪を掬い、そのまま梳くように頭を撫でてくれた。
リディも繋いだ手はそのままに、僕に寄り添い安心させるように抱き締めてくれる。
竜体のままだと僕のお腹までしか届かないその腕は、今日も温かかった。
僕は、ここ数日兄様達や父様が忙しくしている理由も、この夜屋敷であった事も知らないまま、珍しくルーから触れてくれた手から感じる優しい温もりの気持ち良さに擦り寄りながら、再び眠りについた。








翌日この国第1王子のパスティリード殿下が、急な先触れと共に邸に訪ねてきた。
用向きは、僕に会いに来たと言う事らしく、僕は急ぎ王子を通した応接室に向かった。



「パスティリード殿下、お待たせしてしまい申し訳ありません。」

「やあレティ。元気にしていたかい?
こちらこそ急に訪ねて悪かったね。楽にしておくれ。」




王子に言われて礼を解く。
相変わらずのキラキラ王子スマイルだ。
どうして僕に会いに来たのかは分からないけれど、今この家には父様も兄様達もいない。
粗相がないよう立派にお相手しなくては。



「とんでもありません。お越し頂けて光栄です。」

「私もレティに会えて光栄だよ。
早くレティもこちらに座りなさい。」




こちらに、と王子が指し示したのは王子の膝の上…に見える。



「え?えっと…」



戸惑っていたら、ソファーから立ち上がった王子が僕をひょいっと抱え上げ、元の位置に座ったかと思えばそのまま僕を膝の上に横座りさせた。
僕の動揺と緊張がピークに達して、でも王子に拒否も否定も出来ないから、僕はされるがままだ。




教育の行き届いたうちの使用人も、お茶を用意するその顔にあからさまではないが僅かに困惑の色が浮かんでいる気がする。
そんな僕|(たち)を気にも留めず、王子は酷く機嫌が良さそうで、お茶と共に並べられた1口サイズの焼き菓子を、楽しそうに僕の口に持ってくる。
食べるよ、食べるけど王子何がしたいの?
お菓子の合間にお茶を飲ませる事も忘れず、兄様達のように僕に給餌してくる王子。
僕は王子の本当の用向きが分からず非常に混乱した。



お菓子を食べさせながら、最近はどう?とか、卒業試験はどんなものを出されたの?とか、好きな色は?とか、好きな花は?とか、最近興味のある事は?とか。
何だか只管僕の事を聞かれた。
何だろう、一向に用件を切り出される事もなくて、本当に僕の顔を見に来たという俄には信じられない理由で来たんだろうか…。


最近は兄様達がなかなか邸に帰ってこなくて寂しいです、とか。
父様も忙しさが増して魔法の訓練が出来ないので、家で次に作りたい魔道具や試したい魔術式を考えてます、とか。
卒業試験はこんなのとかあんなのでした、とか。
それとは別で学園長さんに、今まで話したり提案した魔道具と魔術式の詳細なレポート提出を宿題で出されて、それが割と細かく指定されてたから少し大変でした、とか。
好きな色は赤と紫(兄様達の色)です、とか。
花は派手なものよりも可憐なものの方が好きです、とか。
最近は生活に根ざせる魔道具を考えるのが楽しいです、とか。
聞かれるままに答え、合間になでなですりすりと頭や頬を撫で回す王子の手を受け入れ、髪に口付けてくる王子にドギマギしたりした。




こんなに甘い仕草、ゲームでも主人公と結ばれる直前のスチルでしか見た事ない。
パスティリード殿下は見た目も柔らかい雰囲気だけれど、次代国王になるという意思が強く清廉で高潔、王族というものの意味を、その力や影響力の強さを十二分にご存知の方だから(ゲームの設定にもそんなような事書いてあったし)、軽はずみにこんな行動はしないはずなんだけど…。
やっぱり僕が子供なのが大きいんだろうな。
普段甘えることも甘やかすことも容易に出来ないから、その発散を僕でしているのかもしれない。
今までは兄様達がいたから、甘やかしたくても出来なかったのかも。
学園でもずっと僕を気遣って、良く話しかけに来てくれてたし。
……兄様達が邪険に対応して、それ程言葉は交わせなかったけど。




父様や兄様達が忙しいってことは、王子も忙しいんだろうな。
ストレス、溜まってるのかも。
そう思うとますます無下には出来なくて、僕は大人しく王子のしたい様にしてもらおうと、王子が満足するまでその膝の上でなでなでちゅっちゅされるのだった。









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