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7歳以降の僕 ♢就職編と見せかけて王宮編♢
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しおりを挟む数日経った良く晴れた午後。
僕は週に2度ある魔道士団への定期視察に訪れた際に、それとなくヘジィの所属している第2小隊の1人にヘジィの所在を訊ねていた。
「周辺の見廻り遠征ですか。」
ヘジィは今年から、魔道士団所属になった。
決まるまで教えて貰えなかったから、どうするのかずっと気になってたので、魔道士団所属と聞いた時は、これからも気軽に会えると思ってとても嬉しかった。
でもヘジィには結局、僕からヘジィの所に訪ねるのは止められてしまった。
周りにバレたら面倒臭いとか、恐ろしいとかブツブツ言ってたけど、確かに立場的には僕の方がかなりの上役になってしまうから、新人のヘジィの元に頻繁に訪ねては贔屓と取られて、団内の軋轢や不調和の元になってしまう。
僕は友達とも気軽に会えないのが少し寂しく感じながらも、そこは素直に頷いた。
僕の我儘で、ヘジィの立場を悪くしたくはない。
「そうなんです、総括。申し訳ありません。
何か急務でしたら、鳥で知らせます!」
魔道士団は騎士団とは違い、団員数が騎士団の二団隊員分程しかいないので、団ではなく隊で編成を組んでいる。
編成の分け方は、騎士団のようにその役割に応じて個々の得意な魔術で振り分けているんだけど、ヘジィの所属しているのは第二小隊。
主に近隣の村や町、街の巡回や警護を第4騎士団の団員達と協力して行っている。
遠征、と言われたから多分あと1週間は帰ってこない。
残念だ。
明らかに気落ちした僕の様子に、教えてくれた隊員の人(第2小隊の隊長さんで、僕が学園に入学した時3学年生だった誉組の先輩だ。)が、慌てて気遣う様に連絡を飛ばしてくれると申し出てくれた。
彼の言う『鳥』とは、魔道士団内専用の連絡用魔道具で、認識阻害や妨害追跡、物理攻撃反射結界等を魔道回路に組み込んである。
どこにいても対になっている目印の魔道具の元に飛んでいくので、遠征部隊にはとても重宝されている。
少し仕様の違うものを騎士団にも騎士団専用として支給してあって、今使われている鳥はどちらも少し前に空いた時間を利用して仕様を複雑、且つ性能の上乗せをした魔道回路を提案して、無事国王陛下の認可の元、新たに配られたものだ。
こういった軍事用魔道具は、最新のものを国内で、所謂型落ちの性能が古いものを国外に卸している。
これは国の優位性を保つ為にも大切な事だ。
「いえ、軍務ではありませんので、また帰ってきた時で大丈夫です。
ありがとうございます。」
僕も統括として、魔道士団全部隊分と魔道具研究所各部署分、イグリット魔道士団長さんと、学園長さん、国王陛下、パスティリード第一王子への個人連絡用まで鳥は持ってるんだけど、流石に私用では使えない。
親切な隊長さんが気に病まないよう穏やかな笑顔を心がけてお礼を伝えた。
途端、隊長さんが湯立ったように全身赤くなってしまって、やっぱり名前だけとはいえ最上位役職者の相手は緊張するのかな、と申し訳なくなってしまった。
視察は既に一通り終わっていたので、そのまま自分の執務室に帰ることにする。
そう言えば、未だに騎士団の訓練見学は出来ていないな、とふと思い出した。
何度かディー兄様の訓練している所を見てみたい、と以前ライオネル総括騎士団長さんにお誘い貰ったのをいい事にディー兄様に見学できる日がないか聞いてみたんだけど、その後にすぐ遠征や夜間勤務が立て続いてしまって、その後は僕が学園祭や卒業試験、王宮への出仕でバタついてしまい、結局見学の機会が無かったんだ。
王都内管轄の第3騎士団に入団したはずのディー兄様の頻繁な遠征を当時不思議に思ってたけど、まさかその頃には第4騎士団や第1騎士団、宮廷騎士団を異動しながら一通り詰め込んで経験してたから、だなんて思わなかった。
もちろん他の第2、第5騎士団にも廻っている。
1年で全ての団を網羅するなんて、異例すぎる。
僕が言える立場じゃ無いんだけど…。
そんな事を思いながら小さく溜息をついたら、付き添ってくれてたルーも、いつも一緒にいるリディも、秘書として視察に付いてきてくれたグレッグさんも、護衛として付き従ってくれてるローアインさんも、僕がヘジィに会えなかったから落ち込んでるのだと勘違いして今すぐ呼び戻しましょうと言ってくれた。
(リディは今竜体だから、身振り手振りの雰囲気だけど。)
原因がヘジィにされそうだったので、慌てて違うと否定する。
だって何だかみんな顔が若干怖かった。
何度も違うことを説明して、何とか納得してもらえたみたいでホッとしたけど、代わりに僕がディー兄様の訓練している所を見たいと思ってたのがバレてしまった。
恥ずかしい。
それにしても、ヘジィが悪者みたいになってしまって凄く慌ててしまった。
もし本当にそうだとしても、ヘジィは悪くないのに、僕が重役になってしまったから物凄く気遣われてるみたい。
言動もだけど、こういう所もこれからもっと気をつけなくちゃ。
そんな反省と決意を新たにしながら自分に与えられた専用の執務室に入ると、奥に設えてある応接スペースのソファーセットに、何故か国王陛下とパスティリード第一王子が。
え?何で??
僕は慌てて秘書のグレッグさんに視線を向けた。
グレッグさんもお2人を認めて心底吃驚した顔をして、でもすぐにいつもの落ち着いた表情に戻ってから、僕に無言で顔を横に振る。
どうやら予定にはなかったらしい。
そうだよね、予定に入ってたら優秀なグレッグさんが言い漏らす訳ないし、視察の時間も迎え入れる時間を作るために調整してくれたはずだ。
朝に一通りの予定は聞いてるけど、いつもさり気なく予定の時間が近付くと次の予定を教えてくれるし。
予定にない事で驚きは治まって無いけど、お2人をお待たせしていたなんて、知らなかったとはいえ大変な事だ。
僕はルーにお茶の指示を目線で告げて、慌てて陛下と殿下の元に向かう。
「出迎えもせず申し訳ありません、陛下、殿下。
本日も御壮健で何よりです。」
「よい、顔を上げておくれレティ君。ここには余たちしかおらぬから、もう少し楽に、寧ろもっとこう、公爵にするようにこう、親しくしてくれんかな?
そもそも、レティ君が視察に出ているのを承知で来たのだ。
レティ君が謝る必要は無いのだ。
こちらこそ、知らせも送らずいきなり訪れてすまなかった。」
「いえ、とんでもないことで御座います。
それに、お呼びだて頂ければ私めからお伺い致しましたのに。」
陛下のお言葉通り頭を上げ、僕が少し眉を下げて伝えると、陛下の顔が僕の比ではない程に悲しげになった。
ちょっと泣いてしまいそう等と、不敬な事まで思ってしまう様なお顔だ。
「レティ君。余の前でもいつもの様に喋っておくれ。礼も必要ない。
レティ君の成長は嬉しいし、仕事モードのレティ君も可愛いが、" わたくし ” などと、どんどん距離が空いて行く様で、余は悲しい。
公的な場所ではレティ君への評価の妨げになるから余も我慢する。
とーーーっても悲しいけども、我慢する!
だからそれ以外では普通にして欲しい。お願いだ。」
本当にしょぼん、とお願いされては、流石に否とは言えない。
僕も役職ある立場なのだからとそれに見合う態度を心がけたつもりだったんだけど、陛下的には悲しかったらしい。
僕みたいな幼子にここまで畏まられたら、確かに悲しくなるのかも。
崩した態度で接するのは不敬だとやっぱり思うけど、断るのも不敬だよね。
陛下からの直接のお願いだし。
僕は「はい、陛下。」と今度はしっかり目も見て真摯に頷いた。
途端陛下は頬を紅潮させて、それはもう、とても嬉しそうによしよし、と満面の笑顔で僕の頭を撫でてくださった。
うん、でもその拡げられた両手の中には流石に飛び込めませんよ、陛下。
「レティ、私にも学園の時の様に…いや、共にこれから国を支えていくのだから、これからはもっと家族のように接してくれ。
まずは、君の兄達位の距離感にはなって欲しい。
これは私個人としても、この国の第1王子としてもお願いするよ。」
僕が両手を拡げて待ってる陛下に何と言おうか迷ってると、パスティリード殿下に、更に難易度を上げられたお願いをされてしまった。
うっ、兄様達と同じようには流石に…。
僕が返答に窮していると、殿下まで泣きそうな顔をされた。
「ど、努力します。」
僕はこう返答するのが限界だった。
リディも、ルーも、グレッグさんも、ローアインさんも、僕を労し気な目で気遣ってくれてるのを雰囲気で感じる。
そうだよね、やっぱりみんなもこの申し出は困るよね。
そんな僕にパスティリード殿下は、「それじゃあまずは、私をジルと呼べるようになる所からだね。」なんて言いながら僕の頬をするりと撫でてこられた。
いや、それは無理です!
王族以外でもし呼べるとしたら、殿下の婚約者くらいです!
殿下にはまだ婚約者はいらっしゃらないけど!
「あの、それでご訪問頂いたのは、何か問題でもあったのでしょうか。」
僕は殿下のそのお言葉には直接的には答えずに、訪問の目的を尋ねる事でお二方からの無茶振りを回避する事にした。
腕に飛び込むのも、王族だけの呼び名を呼ぶのも、僕には無理です!
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