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7歳以降の僕 ♢就職編と見せかけて王宮編♢
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しおりを挟むムーラン皇子の話を聞いた後、時間も限られているからと言う事で、僕達は早々にムーラン皇子の視察に案内として同行した。
先程の話が終わってから、何だかムーラン皇子が僕を見る視線に、さっきまでとはまた違う熱が籠っている様に見える気がする。
たぶん、気のせいだと思うけど…。
案内に入ってからは順調だった。
出会った時は驚きや動揺で酷く緊張していた僕も、案内先が馴染み深い場所で見知った顔ばかりな事もあって、気持ち的にも落ち着いて案内できたと思う。
案内途中にヘジィを見れたのも大きかった。
こっそり手を振ったら、何だか変な顔してたけど。
他国の、しかも皇族で次期皇帝であるムーラン皇子に要所の全てを見せることは出来ないけれど、魔道具研究所では今既に交易に出している最新の魔道具の説明から、もう少ししたら交易に出すのが決まっている魔道具の紹介等をして、所謂販促(販売促進)をしたり、魔道士団への視察は魔道士訓練所へと案内して、実技演習を中心とした我が団の実力披露を行った。
魔術を軸に置いた防衛の話等、かなり深い事も話し合ったけれど、ムーラン皇子は話せば話すほど人柄の滲み出る接し易い人だった。
流石自国で人格者として慕われているだけあるなあと、感心しながらムーラン皇子の話を聞いた。
まあ、うちの国の王子殿下も人格者としてとても国民や王宮の人達に慕われて居るけどね。
そんな和やかに進んでいたムーラン皇子の視察案内の空気が僅かに変わったのは、王宮騎士団の案内の為に騎士団訓練所へと着いた時だった。
実はあれからも結局王宮騎士団の訓練を見に来ることは出来てなくて、初めての見学が視察の案内でディー兄様の訓練中の姿も見れないのかぁ、と残念な気持ちで団員達が打ち合いをしているのを眺めていた時。
騎士団演習の説明をしていたディー兄様の話(僕は王宮騎士団は管轄外だから、ここの説明はディー兄様って決まってたんだよね)を聞いていた筈のムーラン皇子が、不意に僕に水を向けてきた。
「所で、レティには婚約者はもういるのかい?」
「婚約者…ですか?いえ、私にはまだ…」
急な話題転換に、僕の頭の中はハテナだらけになる。
次期皇帝の座が確定したから、お世継ぎ問題の相談かな?
「そう。それは良かった。レティは美しく聡明でまだ幼いのに気品も十分だし才能も豊かで、どうやら人望にも厚い。
君はリリエラのようだね」
リリエラは確かドルトン帝国の国花で、式典では必ず使われるし国章にも描かれている白色の、前世でいう百合みたいな花だ。
国花みたいってことは、褒められてるの…かな?
色が白いから似ているねって事かな?
「私の隣にレティが居てくれたら、それだけで死ぬまで幸せでいられるのだろうな。
レティを私の唯一のリリエラとして、国に迎えたいなぁ(レティを私の皇太子妃としてドルトン帝国に迎えたいなぁ)」
えっと、隣にってことはさっき言ってた友達としてか魔道具技師としてムーラン皇子の国にヘッドハンティングされてるのかな?
さっき魔道具の説明してる時も、魔道士団の演習中に魔術防衛について話してた時も、凄く褒めてくれてたし。
でも、本気ではなくてただお世辞で褒めてくれてるだけなんだとは思うけど、流石にこれは国の人間同士としてのやり取りとしては多分アウト…だよね?
僕、一応お飾りとはいえかなりの要職に着いてるし…。
ちらりと周りの顔ぶれの様子を伺うと、かなり笑顔が怖い気がする。
今さっきまで説明する為に僕の隣に着いてたディー兄様なんて、眉間にすんごい皺寄せてムーラン皇子を見ているし、ムーラン皇子を挟んで僕と反対側に座っているパスティリード殿下は一応笑顔なんだけど、やっぱり眉間に僅かに皺が寄ってるし、顔が引き攣ってる様にも見える。
その向こう隣りの宰相さんも同じような表情。
流石に後ろにいる人達の顔までは振り向いて見たり出来ないけど、無言の圧を感じる気がするし、やっぱり今の発言はアウトだったのかな。
お世辞とはいえ対象の僕はまだ社交界にも出てない成人までもまだまだな子供だし。
要職にいるからこれで引き抜きとか国としての面子にも傷を付けてしまう事になるんだと思うし。
なんて返答したら角が立たないかなあ、なんて悩んでいる僕より先に、ディー兄様が口を開いた。
「ドルトン帝国の冗談は些か我が国には理解し難いですね。
レティは私の、我が家の花ですから。生涯何処にも渡す気はありませんよ(冗談言ってんじゃねーぞ。レティは生涯俺のもんだ)」
ディー兄様の言葉に僕は驚いて兄様をじっと見上げた。
その顔は真剣そのもので、ディー兄様が対社交用の口調なのにも違和感があるけれど(説明の時もずっとこの口調だったけどね)、それよりも何処にも生涯渡す気はない、って。
僕、あの家に、家を継ぐ兄様のいる場所に、ずっといても良いのかな?
ディー兄様がお嫁さんを貰ったらきっと悲しくて見ているのが辛くなるけれど、それでも離れなくちゃいけなくなるよりはずっといい。
ディー兄様の言葉がすごくすごく嬉しくて、僕の頬は自然と熱を帯びた。
ディー兄様とムーラン皇子が無言で見詰めあってすぐ、今度はパスティリード殿下が口を開いた。
「ムーラニアン殿下、レティシオは我が国に無くてはならない花なんですよ。
勿論、私にとってもね。
カディラリオの言うことには僕も譲って欲しいと思う所はありますが…彼等の家の役割を考えても、我が国から出す事は有り得ませんよ。
お戯れも過ぎれば軋轢になりましょう。その辺りも良くお考え下さい。」
にっこり。
本当にそんな言葉が当て嵌るようなパスティリード殿下の笑顔。
とても綺麗なアルカイックスマイルだなぁ、なんて僕はこの空気に場違いな事を考えて感心してしまった。
所で、我が家の役割ってなんだろう?
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