ある日、僕の隣の席のようキャは死んだ。

ピースリバー

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告白

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朝目覚めると、東の窓から差している筈の陽がなかった。私はベッドから身体を起こし1階に向かう。今日も普通の1日が始まる。朝の天気予報を見ながら、味噌汁を飲み、鮭の塩焼きをつまみ白米と一緒に口へかきこむ。今日は1日曇りのようだ。

今日もいつも通りの道を自転車で走る。学校に近づくたび、サイレンがきこえてくる。

学校に着くとパトカーと救急車が止まっていた。何事かと教室へ向かう。教室へ向かえば向かうほど、警察官と消防隊員と野次馬の数は増えていった。少し焦げ臭い匂いが少しする。

いざ、自分の教室に着くと中にはブルーシートが被せられた生徒の遺体らしきものが目に入った。私は驚いた。廊下に立って教室の中を覗いていると、自分の後ろから啜り泣く女子生徒の声が聞こえた。気になって見てみると、いつも騒いでふざけている一軍の女子の飯島みゆだった。私はそこで亡くなったのは彼女の彼氏の篠原彰だと気づいた。
私の隣の席の男だ。私は彼とは授業以外で、話すような仲ではなかった。

朝のホームルームでは篠原彰が死んだこと、死因は教室での練炭自殺だったことが担任の口から知らされた。真夜中、校舎に侵入して、教室で練炭を焚いて死んだらしい。教室内には、泣きじゃくる者、篠原をそうさせた原因を推測する者、ただただ驚いている者、様々であった。

篠原が亡くなって3日後。私はクラスメイトということで、お通夜に参列した。篠原のお通夜には多くの同級生が駆けつけた。小学校、中学、高校、習い事先の同級生、その親までも参列していた。かなり人望があったのだろう。そんなお通夜会場を早々に後にした。

次の日、私は塚田浩と自分の名前が書かれた靴箱を開けるとドアの後ろに封筒が反対向きに貼り付けられていた。それをとってみるとそこには
         「遺書」
と書かれていた。
私は咄嗟にそれを隠した。何故私に?と思いながら、自分の鞄に急いで入れた。それから授業は耳に入らず、私は上の空だった。昼食の時も、この日だけは味が分からなかった。

部活を終え、家に帰る。風呂に入り、夕飯を食べ、自室に籠った。私は恐る恐る鞄の中を見て、今朝見つけたものを勉強机に乗せる。
         「遺書」
確実に篠原の字だ。私は彼の隣の席だったので彼の字であることはすぐにわかった。私は開けようか迷った。私は開ける前に篠原の人物像について思い出してみた。

篠原は高一の時、出席番号の関係で席が隣になって彼の存在を知った。高一の頃から彼は明るいグループ、言い換えると一軍にいた。サッカー部でスタメンであり、誰が見てもイケメン。三軍の私とは、入学後1週間くらいは話していたが次第に疎遠になっていった。高二も席が隣で、高一の宿泊学習で付き合った飯島みゆと同じクラスになり冷やかされていた。

私は意を決してその封筒を開いた。

「この遺書は開いたあなた。この内容を世間に公開しないことを誓えるのならこの後の文章を読んで下さい。」

私はこの後の文章を読んだ。

「私は私の罪をここで告白しようと思う。一つ目の罪は、私の彼女、飯島みゆを欺いていたことだ。私は同性愛者だったのだ。女になどの1ミリも興味がなかった。宿泊学習で告白され付き合ったのは、学内でそうであることを疑われないようにするためのカモフラージュだった。彼女には本当に悪いことをしたことをここに謝罪する。申し訳なかった。新しいいい人を見つけてくれ。
二つ目の罪は卓球部部員S.Kの失踪についてだ。この後からは彼のことをSと記す。Sと私はともに同性愛者で一年の頃Twitterで集まった同性愛者の集会にSはいた。そこから意気投合しすぐに付き合っていた。彼とは学校では全く接点のない同級生を演じていた。私は彼と部活が終わった後のサッカー部の部室で愛を求め合っていた。
だが一年の冬頃、Sの異変に気づいた。彼は放課後話していても、私の方を見ずにずっと考え事をしているようだった。私は一方的なすれ違いを感じ、色々な方法を使ってSのことを調べた。そうしたらある一人の男の存在を知った。ツカダというSと同じ卓球部員だ。Sは彼と練習していくうちに、彼に恋心を抱いていったのだ。私はどうもそれが許せなかった。私はSにどれだけの愛情を捧げてきたのか。どれだけの気持ちが私にあるのか。私は嫉妬に狂った。
そしてある計画を立てた。

私がSと心中することだ。

真冬の海にSを突き落としてその後に私も海に飛び込む。そうすれば、私はSを誰にも取られることなく二人で一つになれると思ったのだ。私はその計画を実行に移した。
午前1時、私はSを冬の岬に呼び出した。水面から高さ30メートルはあろうところにHは驚いていた。冬の潮風が二人の間を吹き抜ける。
『話ってなに?』
『いや、ここの景色を二人で見たくて。』
『そんなこと?まあいいけど。』
Sの心のベクトルは完全に私に向いていなかった。『ねぇ、写真撮りたいからそこのさでっぱりのところ立ってよ。』
『え?うん、まあいいけど。』とSは渋々そこに立った。そこで私はSを崖から突き飛ばした。落ちていく彼を見て絶頂に達した。その後正気に戻った私は自分がしたことを理解した。私は愛する人を真冬の海に突き落としたのだ。私は身体の震えが止まらなかった。計画の通りに自分が落ちることが怖くなりその場を立ち去った。僕らは親にさえも自らの関係を隠していたので、Sが失踪してから私が疑われることはなかった。
それからというもの、私は怨念とも言える何かに毎日取り憑かれていたように感じた。私にそれを振り払うことはできなかった。その怨念は私が生み出したものであったからだ。それでも私は皆の前で笑顔を取り繕った。それが私という存在であり、私という人間だからだ。私は怯えていたのだ。失踪の理由が私であり、犯人であることが気づかれることに。毎日毎日毎日毎日。これがどれほどの痛みか他人にわかるわけがない。それから私は一年が経った頃、あることを思いつく。

私も彼の方へといこうと。

私は肩にのしかかる大きな呪いから解き放たれたいと思ったからだ。それよりも大きな理由は彼にまた会いたいという気持ちが自分の心で膨れ上がり破裂したからだ。しかし私はこのことをこのように誰かに伝えようとは思わなかった。
だが、私はそこで気がついた。ツカダを同じような目に合わせてやろうと。私からSを奪った奴を同じ目に合わせることで私の思いを成仏できると思ったからだ。あいつさえいなければ私たちは愛を紡いでいけたのに。奴が憎い。奴が憎い。そしてこの遺書を書くことにした。私は自殺を教室で決行することを決めた。そう、ツカダの席で練炭を焚こうと思ったのだ。
これで私の罪の告白は終わりだ。
私は陽キャではなく、醜くい酔キャであり妖キャだった。
P.S.ツカダ、地獄で会おう」

これを読んだ私は次の日、遺書を燃やして首を吊った。
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