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おとうさんってなにものなんだろうか
3月17日 13:30①
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カーシェアリングで先月と同じ車を借りて、暁斗はさいたま市の郊外に今日も向かった。有り難いことに本日も良い天気である。
また暁斗おじちゃんだけなの? と杏菜にがっかりされないよう、施設には奏人とすぐに合流する予定である旨を伝えていた。
マーガレットこども園に着くと、杏菜は少しお洒落をして、春らしいサーモンオレンジの花柄のワンピースに、クリーム色のカーディガンを羽織って待機していた。スケッチブックと色鉛筆が入った、彼女愛用のキルティングのトートバッグが、こうして見るとややくたびれている。施設と母親の許可が出たら、新年度に合わせて新しいものを杏菜と一緒に選びに行こうと暁斗は思った。
「車で迎えに来てもらっておめかししてお出かけなんて、お姫さまみたい」
「いいなぁ、杏菜ちゃん」
杏菜と仲良しらしい、幼稚園児棟の女の子2人が、面会室の前で口々に言った。彼女らの暁斗を見る目に、何やら憧れめいたものが含まれていて、暁斗は微妙にくすぐったい。その反面、この子たちにも迎えは来るのだろうかと少し切なくなる。
「杏菜ちゃんは今日はお姫様だけど、おじさんはただのおじさんだ」
暁斗が言うと、岡がくすくす笑い、女の子たちもきゃらきゃら笑う。
「シンデレラみたいに、12時までに帰ってこないと魔法が解けちゃうのかな」
「夕ご飯には帰ってくるから~」
杏菜も気を遣っているのか、女の子たちにそう答えた。
岡ともう1人の若い職員、それに2人の少女に見送られてから、杏菜は車の助手席に乗りこんだ。シートベルトのつけ方を先月教えたので、暁斗は自分でするように杏菜に促す。すぐにカチッ、と小気味良い音がした。
車を出して門の外に出ると、杏菜はそれを待っていたかのように口を開いた。
「ねえねえ暁斗おじちゃん、奏人おにいちゃんはお城で待ってるの?」
「いやいや、残念ながらお城よりずっと狭いとこにいるよ」
友達の言葉に惑わされたような杏菜に、暁斗は笑いながら答えた。
「でも凄いぞ、今日は杏菜ちゃんのために、奏人おにいさんとおにいさんの知り合いが、スペシャルなプレゼントを用意してるんだ」
赤信号でブレーキを踏み隣を見た暁斗は、少女がぽかんとしていることに気づく。
「杏菜、お誕生日は5月だけど……」
「ちょっと遅くなったけど、ホワイトデーだよ」
「あっそうか」
杏菜は先月、暁斗と奏人のためにバレンタインのチョコレートを用意していた。彼女自身がそのことをすっかり忘れていて、外出から施設に帰ってきた時に職員から言われ、アソートチョコレートの小箱を慌てて自室から持って来た。暁斗も思いがけないプレゼントに、心を温められつつ帰路に着いたのだった。
「バレンタインのお返し、もらうの初めて」
杏菜の声が弾んだ。やや後付けではあるが、そういうことにする。本当にたまたまだったが、友人の披露宴での演奏のために、奏人が片山と最初の合わせをするのが、今日なのである。
奏人が、ちょっと聴いてみてほしいと暁斗に言ったのだが、杏菜ちゃんにも聴いてもらおうと話が広がった。片山にLINEをするとすぐに乗ってくれて、小学校1年生に教えている歌の楽譜も用意してくれているらしい。
奏人は片山と、わざわざ大宮で借りたスタジオ(さすが片山は、こういう場所を良く知っている)で、先に練習をしている。ある程度合わせが済んだ頃に、暁斗と杏奈が到着するという手はずだった。
「杏菜ちゃんに気に入ってもらえるといいなって、奏人おにいさんが準備してるからな」
「うおぉ、杏菜めっちゃ楽しみぃ」
「時間があったら、建物を上手く描くコツも教えるって言ってた」
暁斗の言葉に、杏菜はおおおっ、と言いながら、シートの上で足をぱたぱた上下に動かして喜びを表現する。面白いし可愛くて、見ていて飽きない。
無責任な立場だから、杏菜を可愛いと思えるのだろうか。暁斗は、そんなことはないと思う。もし一緒にいる時に彼女を叱る必要が出たならば、心を鬼にして叱るだろう……嫌われたくはないけれど、そこは会社の部下の教育と同じだった。
また暁斗おじちゃんだけなの? と杏菜にがっかりされないよう、施設には奏人とすぐに合流する予定である旨を伝えていた。
マーガレットこども園に着くと、杏菜は少しお洒落をして、春らしいサーモンオレンジの花柄のワンピースに、クリーム色のカーディガンを羽織って待機していた。スケッチブックと色鉛筆が入った、彼女愛用のキルティングのトートバッグが、こうして見るとややくたびれている。施設と母親の許可が出たら、新年度に合わせて新しいものを杏菜と一緒に選びに行こうと暁斗は思った。
「車で迎えに来てもらっておめかししてお出かけなんて、お姫さまみたい」
「いいなぁ、杏菜ちゃん」
杏菜と仲良しらしい、幼稚園児棟の女の子2人が、面会室の前で口々に言った。彼女らの暁斗を見る目に、何やら憧れめいたものが含まれていて、暁斗は微妙にくすぐったい。その反面、この子たちにも迎えは来るのだろうかと少し切なくなる。
「杏菜ちゃんは今日はお姫様だけど、おじさんはただのおじさんだ」
暁斗が言うと、岡がくすくす笑い、女の子たちもきゃらきゃら笑う。
「シンデレラみたいに、12時までに帰ってこないと魔法が解けちゃうのかな」
「夕ご飯には帰ってくるから~」
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車を出して門の外に出ると、杏菜はそれを待っていたかのように口を開いた。
「ねえねえ暁斗おじちゃん、奏人おにいちゃんはお城で待ってるの?」
「いやいや、残念ながらお城よりずっと狭いとこにいるよ」
友達の言葉に惑わされたような杏菜に、暁斗は笑いながら答えた。
「でも凄いぞ、今日は杏菜ちゃんのために、奏人おにいさんとおにいさんの知り合いが、スペシャルなプレゼントを用意してるんだ」
赤信号でブレーキを踏み隣を見た暁斗は、少女がぽかんとしていることに気づく。
「杏菜、お誕生日は5月だけど……」
「ちょっと遅くなったけど、ホワイトデーだよ」
「あっそうか」
杏菜は先月、暁斗と奏人のためにバレンタインのチョコレートを用意していた。彼女自身がそのことをすっかり忘れていて、外出から施設に帰ってきた時に職員から言われ、アソートチョコレートの小箱を慌てて自室から持って来た。暁斗も思いがけないプレゼントに、心を温められつつ帰路に着いたのだった。
「バレンタインのお返し、もらうの初めて」
杏菜の声が弾んだ。やや後付けではあるが、そういうことにする。本当にたまたまだったが、友人の披露宴での演奏のために、奏人が片山と最初の合わせをするのが、今日なのである。
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