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夏のインタビュー
8月1日 (株)エリカワ営業部フロアにて②
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15時になり、内勤の社員のお茶タイムが始まった。身の危険を覚えるような暑さが続いているので、暁斗は部下たちに、なるべくメールやリモートで連絡を取り合うことや、外出する場合も、1日に何社も詰めて回らないことを奨励している。そのため最近、内勤者の数が一日平均で増加しており、お茶休憩も「ちょこっと」という雰囲気ではない。どこかの会社の担当者が持ってきたという菓子が、今日も2箱ほど部屋中に回されていた。
人事部に会議に行っていた谷口営業部長が戻ってきて、いろんな飲み物の匂いとややだれた営業課の空気に、軽く眉をひそめた。
「おいおいみんな、3時の休憩はおまけだってことを忘れないように……後でまた全員に回すけれど、お盆休み前後の有給休暇届の出し忘れがないかどうか、確認してくれよ」
今年は曜日の巡りが良いのか、皆カレンダー以上の休みは取らないという者が多かった。途中の金曜も休んで10連休にしたいという強者は、暁斗が確認している限り、営業課にはほとんどいない。
コーヒーを飲んでいた暁斗は、谷口に手招きされて、マグカップを置いて彼のデスクに向かった。谷口は前に立った暁斗を見上げて、あっさりと言う。
「桂山くんおめでとう、5日付けで昇進の辞令が出るぞ」
「……え?」
暁斗は一瞬何を言われたのかわからなかった。谷口はそんな暁斗を見て目を丸くする。
「あれ? 岸さんか西山さんから聞いてない? たぶん先月から匂わされてたと思うんだけど」
「あ……営業部の再編の話は、西山さんから聞いた気がしますけど」
谷口はボケ目の暁斗に苦笑混じりで説明した。暁斗が今度、初めて設けられた「営業部長補」というポストに就くのは、もちろん営業課の再編を見越してだが、安定して実績を上げ続けているのに課長からなかなか上がれなかった暁斗に報いるためでもある。
「桂山くんの業務内容はこれまでとそんなに変わらないと思う、ただ役職付きの部下は増えるな」
谷口は少し声を落とした。室内の部下たちは部長と課長が話す様子をちらちら見ているが、休憩時間中でもあるので、2人の会話を盗み聞きする気は無さそうだった。
「営業課を2課に戻すというか、分けるというか、そういうことだから、課長が2人と課長補も2人ないしはそれ以上になる……課長はおそらく花谷くんと長山さんで決まりだろう、課長補はちょっと候補が多いから、人事と練らなきゃならん」
谷口の言葉に、暁斗はほう、と思わず口にした。現在課長補の花谷が課長になるのはまず順当で、彼も随分昇進を待たされた。長山は花谷に負けない肝の座った仕事をコンスタントに続けており、エリカワ初の女性営業課長にふさわしいだろう。
課長補の候補が多いというのも、営業課にとっては喜ばしいことだ。
「それで、新課長の辞令も5日に出るんですか?」
「課長は9月1日だ、課長補は9月25日付けで、10月から2課体制の運用を始めたい」
暁斗は頷き、軽く鼻から息を抜いた。「清潔部抗菌課」の営業がちょっと一段落着いたと思えば、次は課の新編成だ。
3課あった営業課が1つになった時、たまたま1課の課長が仙台支社への転勤を希望したため、2課の課長だった暁斗がまとめ課長になった(3課は特殊な仕事を受けていたので部長の直属だった)。かつては1課と2課の住み分けが曖昧で、同じ営業課で仕事の取り合いのようなことも起こった。禍根を残した案件もあり、あんなことは二度とあってはならないと暁斗は思う。その辺りをきちんとできれば、混乱も起きず、皆の仕事内容もこれまでと大きくは変わらないだろう。
谷口は長山に、今から昇進に関する話をしたいと言った。部屋の奥の、パーテーションで仕切られた応接スペースを使うというので、暁斗はお茶を終えた様子の長山のデスクに向かった。
「部長が呼んでる」
暁斗の突然の言葉に、長山は背筋を伸ばして振り返った。
「えっ! 何なんですか」
「悪い話じゃない、でもちょっとどきどきするかも」
えーっ! と長山は小さく叫んで、立ち上がった。こんな風に部下にもったいぶるのも、随分久しぶりだった。いそいそと応接コーナーに向かう長山を見送りつつ、暁斗は自分も、例えばSNSを解禁するといったような、新しい動きを検討しようかと考えていた。
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今年は曜日の巡りが良いのか、皆カレンダー以上の休みは取らないという者が多かった。途中の金曜も休んで10連休にしたいという強者は、暁斗が確認している限り、営業課にはほとんどいない。
コーヒーを飲んでいた暁斗は、谷口に手招きされて、マグカップを置いて彼のデスクに向かった。谷口は前に立った暁斗を見上げて、あっさりと言う。
「桂山くんおめでとう、5日付けで昇進の辞令が出るぞ」
「……え?」
暁斗は一瞬何を言われたのかわからなかった。谷口はそんな暁斗を見て目を丸くする。
「あれ? 岸さんか西山さんから聞いてない? たぶん先月から匂わされてたと思うんだけど」
「あ……営業部の再編の話は、西山さんから聞いた気がしますけど」
谷口はボケ目の暁斗に苦笑混じりで説明した。暁斗が今度、初めて設けられた「営業部長補」というポストに就くのは、もちろん営業課の再編を見越してだが、安定して実績を上げ続けているのに課長からなかなか上がれなかった暁斗に報いるためでもある。
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谷口の言葉に、暁斗はほう、と思わず口にした。現在課長補の花谷が課長になるのはまず順当で、彼も随分昇進を待たされた。長山は花谷に負けない肝の座った仕事をコンスタントに続けており、エリカワ初の女性営業課長にふさわしいだろう。
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