1 / 11
ワールド・トウ・ワールド
しおりを挟む
競争原理主義・徹底した実力主義を礎に世界の半分を支配する・帝国セシリュウス。
共産主義・すべての人民は平等であり義・共生・協力を重んじる・新羅共和国。
文化主義・歴史を重んじ王族・貴族・騎士・平民・奴隷の世襲を中世より数百年続ける・クラフト王国。
その狭間で揺れ動く、極東に位置する煌コウを象徴・議会を中心とした島国・煌国コウコク
「力なきものには死を・・・無力は罪である!」
西洋甲冑プレートアーマーを着込んだ屈強な男が”勢い獅子紋章”が入った旗を掲げ叫ぶ。
それに応えるように、数万のチェインメイルが歓喜する。
帝国セシリュウスがまた一つ領土拡大のためにクラフト王国・中部にも侵攻をはじめたのである。
王族・貴族の文化を重んじるという散財・悪政にすでに耐え切れなくなっいた奴隷、
平民の多くは実力主義の軍門に下り反逆した。
農作地である西部戦線とは違い、王族・貴族の八千の親衛隊が相手では
寄せ集めの数万の兵は3日のうちに瓦解した。守る側より攻める側に戦力が必要という
こともあるが、この世界には剣技・魔法というものが存在し、それらを会得していない
平民・奴隷階級が100人束になろうが達人級の技・法をもつ1人の親衛隊員の前では赤子同然である。
帝国側も意味もなく、”反逆”をけしかけたわけではない。どんな達人であっても
寝食を忘れ戦いに身を置けばガタがくる。そこに戦略性を見出している。
4日目、皇帝直轄のミリオンナイトが介入する。
1人が100万の兵にも匹敵する力をもつといわれているためにその名がついたとされる。
5日目、クラフト王家は中部を明け渡し東部へ逃れた。
そんな戦火の後、自分の無力さに嘆きさえも湧かず立ち尽くす少女がいた。
土と血にまみれた、ボロ、いやもともとは高級な生地を使った服を身に着けている。
端正な顔立ちの少女は何かを思い出したかのように膝から崩れた。
「あぁ、そうか。そうなんだ・・・」
薄黒い天の低い雲を見上げる。たちまち、それは雨へと変わり長い金髪を汚す土を泥へと変化させる。
呼応するかのように、無力の意味が沸々と湧き上がり、ブルーの瞳から一粒のしずくが流れ落ちる。
3年後、煌国。
「リサ!それはおれのだ。」
リサとよばれた少女は、歳の頃は16、7だろうか、この地では珍しい金髪をポニーテールに西洋の髪留め
膝丈の短い赤い浴衣を身に纏い、やや傾いた長屋が連なる軒先を駆け抜ける。
「このオニギリは私のものだ!ユウゴ」
黒髪の如月キサラギ勇吾ユウゴは彼女が右手に持つ握り飯を追いかけていた。
「お前が、勝手に呼んだだろ。飯くらい食わせろ!!」
舗装がされていない道の石に躓きそうになりながら、やっとの思いでありつける食事を追いかける。
「イヤだ。」少女は笑みがこぼれる口元を大きくあける。
「こら、食うな!!」ユウゴが叫ぶ。
町人たちの視線が集まる。叫んだからではない。数年前からこの長屋に住み着いてる金髪の少女が、珍しいからでもない。
彼の身なりが未だかつて見たことがなかったからである。
リサの右手をつかみ、こちら側に向き直らせると愛らしい顔とは裏腹に男顔負けの大口開け、貴重な食料を半分くわえこんでいた。
「うふぁ、ふあ。あああ。」
舶来の軍服にも似てはいるが、それが異国ではなく異世界の衣服だということを町人達は知る由はなかった。
「物を食いながらしゃべるな!俺、こっちに飛ばされから3日も何も食ってないだぞ!責任とれよ!!」
彼をこの地に召喚した責任を感じたのだろうか、意気消沈した彼女は厚みのある唇からでた残りの白米をつかみ差し出した。
「・・・背に腹は変えられんというのはこういうことか、な」
ユウゴはそれを掴み取るとむさぼり食べた。
共産主義・すべての人民は平等であり義・共生・協力を重んじる・新羅共和国。
文化主義・歴史を重んじ王族・貴族・騎士・平民・奴隷の世襲を中世より数百年続ける・クラフト王国。
その狭間で揺れ動く、極東に位置する煌コウを象徴・議会を中心とした島国・煌国コウコク
「力なきものには死を・・・無力は罪である!」
西洋甲冑プレートアーマーを着込んだ屈強な男が”勢い獅子紋章”が入った旗を掲げ叫ぶ。
それに応えるように、数万のチェインメイルが歓喜する。
帝国セシリュウスがまた一つ領土拡大のためにクラフト王国・中部にも侵攻をはじめたのである。
王族・貴族の文化を重んじるという散財・悪政にすでに耐え切れなくなっいた奴隷、
平民の多くは実力主義の軍門に下り反逆した。
農作地である西部戦線とは違い、王族・貴族の八千の親衛隊が相手では
寄せ集めの数万の兵は3日のうちに瓦解した。守る側より攻める側に戦力が必要という
こともあるが、この世界には剣技・魔法というものが存在し、それらを会得していない
平民・奴隷階級が100人束になろうが達人級の技・法をもつ1人の親衛隊員の前では赤子同然である。
帝国側も意味もなく、”反逆”をけしかけたわけではない。どんな達人であっても
寝食を忘れ戦いに身を置けばガタがくる。そこに戦略性を見出している。
4日目、皇帝直轄のミリオンナイトが介入する。
1人が100万の兵にも匹敵する力をもつといわれているためにその名がついたとされる。
5日目、クラフト王家は中部を明け渡し東部へ逃れた。
そんな戦火の後、自分の無力さに嘆きさえも湧かず立ち尽くす少女がいた。
土と血にまみれた、ボロ、いやもともとは高級な生地を使った服を身に着けている。
端正な顔立ちの少女は何かを思い出したかのように膝から崩れた。
「あぁ、そうか。そうなんだ・・・」
薄黒い天の低い雲を見上げる。たちまち、それは雨へと変わり長い金髪を汚す土を泥へと変化させる。
呼応するかのように、無力の意味が沸々と湧き上がり、ブルーの瞳から一粒のしずくが流れ落ちる。
3年後、煌国。
「リサ!それはおれのだ。」
リサとよばれた少女は、歳の頃は16、7だろうか、この地では珍しい金髪をポニーテールに西洋の髪留め
膝丈の短い赤い浴衣を身に纏い、やや傾いた長屋が連なる軒先を駆け抜ける。
「このオニギリは私のものだ!ユウゴ」
黒髪の如月キサラギ勇吾ユウゴは彼女が右手に持つ握り飯を追いかけていた。
「お前が、勝手に呼んだだろ。飯くらい食わせろ!!」
舗装がされていない道の石に躓きそうになりながら、やっとの思いでありつける食事を追いかける。
「イヤだ。」少女は笑みがこぼれる口元を大きくあける。
「こら、食うな!!」ユウゴが叫ぶ。
町人たちの視線が集まる。叫んだからではない。数年前からこの長屋に住み着いてる金髪の少女が、珍しいからでもない。
彼の身なりが未だかつて見たことがなかったからである。
リサの右手をつかみ、こちら側に向き直らせると愛らしい顔とは裏腹に男顔負けの大口開け、貴重な食料を半分くわえこんでいた。
「うふぁ、ふあ。あああ。」
舶来の軍服にも似てはいるが、それが異国ではなく異世界の衣服だということを町人達は知る由はなかった。
「物を食いながらしゃべるな!俺、こっちに飛ばされから3日も何も食ってないだぞ!責任とれよ!!」
彼をこの地に召喚した責任を感じたのだろうか、意気消沈した彼女は厚みのある唇からでた残りの白米をつかみ差し出した。
「・・・背に腹は変えられんというのはこういうことか、な」
ユウゴはそれを掴み取るとむさぼり食べた。
0
あなたにおすすめの小説
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる