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しおりを挟む(私を認めつつ全肯定してくれて、助けてくれるから......嬉しい、っていう気持ちもあるのだわ......)
もちろんティアルティナに好意を寄せる者の中には同じように願いを叶え、全てを肯定してくれる人もいた。
けれど、ロナルドのようにティアルティナの速度に合わせようとすることはなかった。こちらが差し出しているのだから、ティアルティナもすぐに差し出すべきだ、と詰め寄るような、容赦がない距離感と言い分を述べ、やがて勝手に寄ってきたくせに、怒りを露わにするのだ。ティアルティナが望む、望まずとも関係なしに。
だからこそティアルティナは距離感を間違えないように、相手に無駄な期待など持たせぬように、社交は表面上の関係だけを築くように務めている。
そして、ティアルティナが定める一線を超えてくる無礼者は、遠慮なく叩きのめすことにした。自分の持てる力で。権力であったり、魔術師として研鑽を詰んだ魔術であったり手段は選ばないことにした。話をしても会話にならないし、それで済まないのだから、物理的に解決するのが早いと悟った。
ロナルドはその中の誰とも違う。予想外で、でも積極的で、引き際を見極めるのが上手い人。今は女性の姿だからこそ警戒心も薄い。それに乗じての接触。
色んな外堀を埋めていく敏腕さ。
まだ好きかどうかはわからない。だけどこの胸に小さく灯る温かい想いは、間違いなく好意の部類にはいる。異性としてと断言できないけど、ティアルティナが興味を持っていること自体が稀である。
(私の心に入ってきた人......急ぐ必要はない......か。ゆっくり育てればいいのよ......本人も見極めればいいと言っていたのだから、私のペースで問題ないはず......)
とにかく今は確実に胸を焦がす、魔物狩りを楽しむことに全力を注げばいいと思う。今しか体験できない、特別なことだから。
ティアルティナはロナルドたちを伴い、森の中を更に進む。
奥はさらに光が無くなり、夜なのかと錯覚しそうなくらいの暗闇が広がっている。いきなり魔物が襲い来ることは無かったが、警戒しておくべきだろうと全員が周りを注視していた。
特にティアルティナは自分専用の剣を持ち、魔物が現れるのを待ち構えていた。
「ティアルティナ姫、気配の掴み方、分かった?」
「なんとなく......?」
ロナルドはまず、魔物の気配の探り方をティアルティナに教えくれた。感覚的なもので、話を聞いてもいまいち掴みきれないが、何となくわかるような、わからないような。
先程はいきなりすぎて、それどころではなかった。圧倒的な存在なら、きっと迷うことなく感知できるのだろうけど。そんな大物がきてもティアルティナは困るので、自分が狩れる範囲の獲物が来ればいい。
そう思っていたのだが。
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