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しおりを挟むティアルティナの選択に、ロナルドは頷く。
「じゃあここは僕が狩るね」
ロナルドは軽やかに前へ飛び出し、王子とは思えない足取りで魔物へ向かい走る。
魔物も向かってくる人間を迎えるべく、睨めつけて口を大きく開くと共に片手を振り上げる動作をする。爪は長く鋭利だ。掠れば怪我を負うだろう。当たり方によっては致命傷にもなる。
ロナルドは魔物が腕を振り下ろすよりも早く懐に飛び込む。ロナルドには怯えも恐れもなく、ただ真っ直ぐ魔物を見据える瞳には冷静さが宿る。
そして息を吸うように頭の中で魔術を完結させ、更には剣にも魔力を乗せて魔物を切り裂く。ほんの一瞬で魔物を屠る。
鮮やかな討伐に、ティアルティナは興奮が止まらなかった。直前に感じた恐れなど、吹き飛んだ。
ティアルティナは後処理を済ませるロナルドに近寄り、思わず飛びついた。
「凄い、凄いわ、ロナルド殿下!!噂では聞いても、戦う姿を目にすることはないから初めて見たけれど、強いのね!魔術もだけど、剣の腕や体幹もしっかりしてるから相当鍛えているの?」
興奮するままロナルドに抱き着いて感想を捲し立てる。
ロナルドはピシリと体を強ばらせ、動きを止める。
ティアルティナは返事が返ってこないので、豊満な胸元から顔を離してロナルドを見上げた。
ロナルドは顔を赤らめ、小さく震えていた。
「ロ、ロナルド殿下?」
「......抱き心地は如何ですか、ティアルティナ姫?」
「え?あっ、つい......」
ロナルドはティアルティナにされるがまま、剣だけは当たらぬように気をつけて、好きにさせていた。
「ロナルド殿下の戦う姿に、感動してしまって......やっぱり女性の姿のロナルド殿下には躊躇いなく触れるみたいね......」
「......ティアルティナ姫が自ら触ってくれるのは嬉しいのだけれど......これは僕からももっと触れていいってことだよね?そうだよね?」
自分から抱きついた手前、駄目だとは言い難い。
「女性の姿の時であれば、先程から割と好きに触れてるでしょう......度をこさないなら、いいですよ......」
今までの行動から、ロナルドのことは信じてもいいだろうと決断する。ティアルティナは許可を出す。
「では、遠慮なくするからね?」
「......嫌な時は拒むからね!」
「それはもちろん。嫌がらないギリギリを攻めるから大丈夫」
ロナルドの考えに、ティアルティナは早まったかなと冷や汗をかく。
「あぁ、先程の質問だけれど。剣を扱うし、ある程度は鍛えているよ。この姿の時もお腹はわれているけれど、夜の方が凄いかな?触ってみる、ティアルティナ姫?」
突然の誘いにティアルティナは無言になる。しかも内容が危うい。
「謹んで御遠慮致しますっ!!」
真っ赤になって断るティアルティナにロナルドは大笑いした。
(からかわれている!)
ロナルドはティアルティナが触ると言えばどうしたのだろう。でも冗談だと思える空気があるからこそ、ティアルティナも笑って文句が言える。
変わらないロナルドの態度にティアルティナは息を着いた。
気が付けば、魔物に対する恐怖は払拭されていた。
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