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探求 学者編

ケース1 ある冒険者の場合 その5

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 俺の名前はリック。


 冒険者の街を出発した俺のパーティはようやく遺跡の街に到着したのだった。

「くぁぁ! 腰がイテェ」

 押し込められるように座らされた馬車の中は窮屈だったので、俺は街に到着してから思いっきり腰を伸ばして凝り固まった体を解していく。

「お~い! さっさと行くぞリック?」
「……なんであいつは、あんなに元気なんだ?」

 無駄に元気なアカギに俺は理不尽さを感じていた。
 とはいえ行き先は新しい街に到着したら真っ先に向かうべき冒険者ギルドだ。それについては文句を言うつもりはない。

 アカギ達についていくように俺もみんなの後を追いかけた。
 ほどなくして不思議な感じの壁で出来た建物に到着する。
 そこには冒険者ギルドに掛かっている剣と盾のマークが下がっていた。つまりこの建物がこの街の冒険者ギルドなのだろう。

 ……そういや、俺も含めてみんな初めての街なのに迷いなく着いたな? なんでだ?

 中に入ると冒険者の街にあった冒険者ギルドと似た様に受付が見える。そこにミカが俺達の代表として近づいていった。

 最近はもう受付とのやり取りはミカに任せている。
 け、決して、前に冒険者の街で恥かいたからじゃないぞ!

「なにやってんのよリックは?」

 アカギに白い目で見られながら、俺達はミカが戻ってくるまでロビーで待つことにした。
 しばらくするとミカが手に何かを持って戻ってくる。

 *

「ルドルフさんの言う通りだった~。あと今年はかもしれないんだって」
 ミカの言葉に俺以外のパーティメンバーが頷いている。

 ……いや、ロウとガイは分かってないんじゃないのか? 俺だって分かってないんだし。

 するとアカギが溜め息を吐きつつ教えてくれた。

説明したけど、改めて言っておくわ! 今回、私達は遺跡調査の手伝いに来たの。遺跡型ダンジョンの中で遺物を発見出来れば、その見つけた物次第では依頼達成数が稼げるらしいのよ。……ちなみに『当たり年』ってなに、ミカ?」

 アカギだって良く分かってないじゃないか!
 まあ、それを言葉にはしないけど。めっちゃ怒られるし。

「今年の遺跡調査は大々的にやるみたいなの。だから普段の年よりも未発見の場所を見つけられる可能性が高いんだって。昔にはその時の依頼で一気にCランクまで上がった冒険者も居るみたい」

 ミカの説明に俺は思わず声を出してしまった。

「え! それはすげぇじゃん! やったな! これも俺のがいいからだぜ?」
「――で、冒険者にはその際の『注意事項』があるからって、コレを貰ってきた。いい? ちゃんと覚えてよ、!?」

 俺の声はスルーされて、ミカが持っていた紙をみんなに見せつける。ナンダコレ?

「いい? コレに書かれた注意を守れないと、が発生することもあるからね? とは言わないけど、本当に注意してね」

 ミカが念を押すように言ってくる。

 心配性だなぁミカは。
 俺はミカを安心させるために頷いておいた。
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