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第一章
第14話 前世魔王だった僕は前世勇者だった男の誘いを断れない
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「先生ーーー!! 見てくれよ!! こんなデカいのが出来た」
スイカぐらいの大きさはあろう大きな光球を作ったアドラが興奮気味に言う。
負けじとばかりに、魔族の少年も同じぐらいの大きさの光球を作り、僕に報告をする。
「僕もできました!! 見てください、まだまだ大きくできそうです」
「んだと!? 俺だって負けねぇ!! もっともっと大きくしてやる」
オルティスはかなり仕事が立て込んでいるみたいで、結局今日の授業は全て僕が受け持つことになった。
僕も前世取った杵柄なのか、だんだん魔法を教えるのが楽しくなっていた。
ただ、思った以上に才能溢れる子どもたちにびっくりしている。
「先生、この光弾丸、あっちに投げていいか?」
「アドラ、その弾丸、放ったら城がふっとぶからね?」
……僕の教え方が良すぎたのだろうか? それともこの子たちの才能?
年少の子たちはもう少し集中力を鍛えなければならない課題は残っているが、年長の子供はコツを教えたら、大きな光の球を作ることが出来るようになっていた。
「じゃあ、集中するのを止めて。光の球が消えるまで構えはそのまま」
僕が言うと子供たちは集中を解いた。魔力の集中さえ止めれば光球は徐々に小さくなり消えてゆく。
これで呪文を唱えて、光弾丸を投げ飛ばしていたら、大変なことになっていたけどね。
そこに用事を済ませたオルティスがこっちにやってきて尋ねてきた
「どうでしたか? 久しぶりの授業は」
「記憶を失っても、身体は覚えているのかな? 問題なく進めることができたよ。ただ……実戦で使える以上に破壊兵器を作ってしまった気分だが」
「?」
◆◇◆
それ以来、僕は子供たちに魔法を教えるようになった。
僕自身も魔力を引き出す鍛錬の一環として、子供たちと共に瞑想をしたり、魔力を一点に集中させる訓練に励んだ。
教えることは学ぶことの半ばだって、どこかの国の諺であったな。
子供らに教えるということは、僕自身の復習にもなって良いことだった。
僕ももう少ししたら上級魔法も使えるようになれそうだ。
短期間でここまで習得出来るのは、やはり魔王としての記憶があるからだろうな。魔力を引き出す術も心得ているし、魔法のコツも分かっているから。
もしかしたら、前世の能力をそのまま引き継いでいる可能性もある。
ジュノームの魔力は人間にしてはかなり多いようで、底が知れない。まだまだ限界が見えてこない。はっきりとした根拠があるわけじゃないが、このまま鍛錬を続けていけば魔王だった頃の力を取り戻せそうな気がするのだ。
上級魔法が使えるようになったらここを出ようとは思うけど。
「先生ー、今日はお花を持ってきました」
「先生、今日はどんな授業するの?」
「先生、先生、聞いて、聞いて」
小さな子供たちが無邪気に自分の元に駆け寄って来る。
くっっ……子供らよ、その笑顔は反則だ。
可愛すぎるだろ。
すっかり子供たちに懐かれてしまった僕は、何だかここから離れがたい気持ちになってしまう。
人族の子も魔族の子も妖精族の子も皆可愛い。
この子たちは、宮廷魔法士の卵として選ばれただけあって、頭も良く飲み込みが早い。
特に炎の妖精族の子、アドラは将来妖精王になると豪語したのは伊達じゃなく、早々と上級魔法士の資格がとれるほどの才能を発揮した。
そして――――
「俺、将来は先生のこと守れるくらい強くなる!!」
まっすぐな目を僕に向けてくる。
それが好意的なものであることはすぐに分かった。前世の魔王だった時代はかなりモテてたからさ、そういう目で僕のことを見詰める者は男女問わす多くいた。
子供とはいっても、アドラは思春期に入った年齢だ。そういう目で僕のことを見るのはなんら不思議じゃない。
気持ちは嬉しいけど、生憎子供を相手にどうこうする趣味はないので、彼の想いには気づかない振りをする。
「君に守って貰えたら僕も助かるよ。その意気でがんばれ」
そう言って僕はアドラの肩を叩いた。
その時、誰かがこちらに歩み寄って来る気配がして、僕は顔をあげた。
あ……ゼムベルトがこっちに歩み寄ってくる。
子供たちは慌てて跪く。
「子供たちとは仲よくしているみたいだな」
「あ、はい。お陰様で」
「授業が終わったら私の部屋に来て欲しい。久々に君とゆっくり話がしたい」
「……分かりました」
何故、ここで嫌だと言えない?
いや、元より拒否権などないに等しい。僕は助けてもらっているし、今は実家に捨てられた人間だから平民……いや平民以下の奴隷に等しい地位だ。
それに対して相手は軍事帝国の皇子様。
人間として生きている以上、逆らうわけにはいかない。
――――言い訳をしているわけじゃないぞ?
おかしい……立ち去るゼムベルトの後ろ姿から目が離せない。
惚れたとか言わないよな? ジュノーム=ティムハルト。
冗談じゃない。相手は勇者だぞ?
もし向こうの記憶が蘇ったら、僕への想いも冷めるに決まっている……いや冷めるだけならいい。もしかしたら危険人物として殺されるかもしれない。
早くここを出て行かないと……。
スイカぐらいの大きさはあろう大きな光球を作ったアドラが興奮気味に言う。
負けじとばかりに、魔族の少年も同じぐらいの大きさの光球を作り、僕に報告をする。
「僕もできました!! 見てください、まだまだ大きくできそうです」
「んだと!? 俺だって負けねぇ!! もっともっと大きくしてやる」
オルティスはかなり仕事が立て込んでいるみたいで、結局今日の授業は全て僕が受け持つことになった。
僕も前世取った杵柄なのか、だんだん魔法を教えるのが楽しくなっていた。
ただ、思った以上に才能溢れる子どもたちにびっくりしている。
「先生、この光弾丸、あっちに投げていいか?」
「アドラ、その弾丸、放ったら城がふっとぶからね?」
……僕の教え方が良すぎたのだろうか? それともこの子たちの才能?
年少の子たちはもう少し集中力を鍛えなければならない課題は残っているが、年長の子供はコツを教えたら、大きな光の球を作ることが出来るようになっていた。
「じゃあ、集中するのを止めて。光の球が消えるまで構えはそのまま」
僕が言うと子供たちは集中を解いた。魔力の集中さえ止めれば光球は徐々に小さくなり消えてゆく。
これで呪文を唱えて、光弾丸を投げ飛ばしていたら、大変なことになっていたけどね。
そこに用事を済ませたオルティスがこっちにやってきて尋ねてきた
「どうでしたか? 久しぶりの授業は」
「記憶を失っても、身体は覚えているのかな? 問題なく進めることができたよ。ただ……実戦で使える以上に破壊兵器を作ってしまった気分だが」
「?」
◆◇◆
それ以来、僕は子供たちに魔法を教えるようになった。
僕自身も魔力を引き出す鍛錬の一環として、子供たちと共に瞑想をしたり、魔力を一点に集中させる訓練に励んだ。
教えることは学ぶことの半ばだって、どこかの国の諺であったな。
子供らに教えるということは、僕自身の復習にもなって良いことだった。
僕ももう少ししたら上級魔法も使えるようになれそうだ。
短期間でここまで習得出来るのは、やはり魔王としての記憶があるからだろうな。魔力を引き出す術も心得ているし、魔法のコツも分かっているから。
もしかしたら、前世の能力をそのまま引き継いでいる可能性もある。
ジュノームの魔力は人間にしてはかなり多いようで、底が知れない。まだまだ限界が見えてこない。はっきりとした根拠があるわけじゃないが、このまま鍛錬を続けていけば魔王だった頃の力を取り戻せそうな気がするのだ。
上級魔法が使えるようになったらここを出ようとは思うけど。
「先生ー、今日はお花を持ってきました」
「先生、今日はどんな授業するの?」
「先生、先生、聞いて、聞いて」
小さな子供たちが無邪気に自分の元に駆け寄って来る。
くっっ……子供らよ、その笑顔は反則だ。
可愛すぎるだろ。
すっかり子供たちに懐かれてしまった僕は、何だかここから離れがたい気持ちになってしまう。
人族の子も魔族の子も妖精族の子も皆可愛い。
この子たちは、宮廷魔法士の卵として選ばれただけあって、頭も良く飲み込みが早い。
特に炎の妖精族の子、アドラは将来妖精王になると豪語したのは伊達じゃなく、早々と上級魔法士の資格がとれるほどの才能を発揮した。
そして――――
「俺、将来は先生のこと守れるくらい強くなる!!」
まっすぐな目を僕に向けてくる。
それが好意的なものであることはすぐに分かった。前世の魔王だった時代はかなりモテてたからさ、そういう目で僕のことを見詰める者は男女問わす多くいた。
子供とはいっても、アドラは思春期に入った年齢だ。そういう目で僕のことを見るのはなんら不思議じゃない。
気持ちは嬉しいけど、生憎子供を相手にどうこうする趣味はないので、彼の想いには気づかない振りをする。
「君に守って貰えたら僕も助かるよ。その意気でがんばれ」
そう言って僕はアドラの肩を叩いた。
その時、誰かがこちらに歩み寄って来る気配がして、僕は顔をあげた。
あ……ゼムベルトがこっちに歩み寄ってくる。
子供たちは慌てて跪く。
「子供たちとは仲よくしているみたいだな」
「あ、はい。お陰様で」
「授業が終わったら私の部屋に来て欲しい。久々に君とゆっくり話がしたい」
「……分かりました」
何故、ここで嫌だと言えない?
いや、元より拒否権などないに等しい。僕は助けてもらっているし、今は実家に捨てられた人間だから平民……いや平民以下の奴隷に等しい地位だ。
それに対して相手は軍事帝国の皇子様。
人間として生きている以上、逆らうわけにはいかない。
――――言い訳をしているわけじゃないぞ?
おかしい……立ち去るゼムベルトの後ろ姿から目が離せない。
惚れたとか言わないよな? ジュノーム=ティムハルト。
冗談じゃない。相手は勇者だぞ?
もし向こうの記憶が蘇ったら、僕への想いも冷めるに決まっている……いや冷めるだけならいい。もしかしたら危険人物として殺されるかもしれない。
早くここを出て行かないと……。
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