14 / 76
第一章
第14話 前世魔王だった僕は前世勇者だった男の誘いを断れない
しおりを挟む
「先生ーーー!! 見てくれよ!! こんなデカいのが出来た」
スイカぐらいの大きさはあろう大きな光球を作ったアドラが興奮気味に言う。
負けじとばかりに、魔族の少年も同じぐらいの大きさの光球を作り、僕に報告をする。
「僕もできました!! 見てください、まだまだ大きくできそうです」
「んだと!? 俺だって負けねぇ!! もっともっと大きくしてやる」
オルティスはかなり仕事が立て込んでいるみたいで、結局今日の授業は全て僕が受け持つことになった。
僕も前世取った杵柄なのか、だんだん魔法を教えるのが楽しくなっていた。
ただ、思った以上に才能溢れる子どもたちにびっくりしている。
「先生、この光弾丸、あっちに投げていいか?」
「アドラ、その弾丸、放ったら城がふっとぶからね?」
……僕の教え方が良すぎたのだろうか? それともこの子たちの才能?
年少の子たちはもう少し集中力を鍛えなければならない課題は残っているが、年長の子供はコツを教えたら、大きな光の球を作ることが出来るようになっていた。
「じゃあ、集中するのを止めて。光の球が消えるまで構えはそのまま」
僕が言うと子供たちは集中を解いた。魔力の集中さえ止めれば光球は徐々に小さくなり消えてゆく。
これで呪文を唱えて、光弾丸を投げ飛ばしていたら、大変なことになっていたけどね。
そこに用事を済ませたオルティスがこっちにやってきて尋ねてきた
「どうでしたか? 久しぶりの授業は」
「記憶を失っても、身体は覚えているのかな? 問題なく進めることができたよ。ただ……実戦で使える以上に破壊兵器を作ってしまった気分だが」
「?」
◆◇◆
それ以来、僕は子供たちに魔法を教えるようになった。
僕自身も魔力を引き出す鍛錬の一環として、子供たちと共に瞑想をしたり、魔力を一点に集中させる訓練に励んだ。
教えることは学ぶことの半ばだって、どこかの国の諺であったな。
子供らに教えるということは、僕自身の復習にもなって良いことだった。
僕ももう少ししたら上級魔法も使えるようになれそうだ。
短期間でここまで習得出来るのは、やはり魔王としての記憶があるからだろうな。魔力を引き出す術も心得ているし、魔法のコツも分かっているから。
もしかしたら、前世の能力をそのまま引き継いでいる可能性もある。
ジュノームの魔力は人間にしてはかなり多いようで、底が知れない。まだまだ限界が見えてこない。はっきりとした根拠があるわけじゃないが、このまま鍛錬を続けていけば魔王だった頃の力を取り戻せそうな気がするのだ。
上級魔法が使えるようになったらここを出ようとは思うけど。
「先生ー、今日はお花を持ってきました」
「先生、今日はどんな授業するの?」
「先生、先生、聞いて、聞いて」
小さな子供たちが無邪気に自分の元に駆け寄って来る。
くっっ……子供らよ、その笑顔は反則だ。
可愛すぎるだろ。
すっかり子供たちに懐かれてしまった僕は、何だかここから離れがたい気持ちになってしまう。
人族の子も魔族の子も妖精族の子も皆可愛い。
この子たちは、宮廷魔法士の卵として選ばれただけあって、頭も良く飲み込みが早い。
特に炎の妖精族の子、アドラは将来妖精王になると豪語したのは伊達じゃなく、早々と上級魔法士の資格がとれるほどの才能を発揮した。
そして――――
「俺、将来は先生のこと守れるくらい強くなる!!」
まっすぐな目を僕に向けてくる。
それが好意的なものであることはすぐに分かった。前世の魔王だった時代はかなりモテてたからさ、そういう目で僕のことを見詰める者は男女問わす多くいた。
子供とはいっても、アドラは思春期に入った年齢だ。そういう目で僕のことを見るのはなんら不思議じゃない。
気持ちは嬉しいけど、生憎子供を相手にどうこうする趣味はないので、彼の想いには気づかない振りをする。
「君に守って貰えたら僕も助かるよ。その意気でがんばれ」
そう言って僕はアドラの肩を叩いた。
その時、誰かがこちらに歩み寄って来る気配がして、僕は顔をあげた。
あ……ゼムベルトがこっちに歩み寄ってくる。
子供たちは慌てて跪く。
「子供たちとは仲よくしているみたいだな」
「あ、はい。お陰様で」
「授業が終わったら私の部屋に来て欲しい。久々に君とゆっくり話がしたい」
「……分かりました」
何故、ここで嫌だと言えない?
いや、元より拒否権などないに等しい。僕は助けてもらっているし、今は実家に捨てられた人間だから平民……いや平民以下の奴隷に等しい地位だ。
それに対して相手は軍事帝国の皇子様。
人間として生きている以上、逆らうわけにはいかない。
――――言い訳をしているわけじゃないぞ?
おかしい……立ち去るゼムベルトの後ろ姿から目が離せない。
惚れたとか言わないよな? ジュノーム=ティムハルト。
冗談じゃない。相手は勇者だぞ?
もし向こうの記憶が蘇ったら、僕への想いも冷めるに決まっている……いや冷めるだけならいい。もしかしたら危険人物として殺されるかもしれない。
早くここを出て行かないと……。
スイカぐらいの大きさはあろう大きな光球を作ったアドラが興奮気味に言う。
負けじとばかりに、魔族の少年も同じぐらいの大きさの光球を作り、僕に報告をする。
「僕もできました!! 見てください、まだまだ大きくできそうです」
「んだと!? 俺だって負けねぇ!! もっともっと大きくしてやる」
オルティスはかなり仕事が立て込んでいるみたいで、結局今日の授業は全て僕が受け持つことになった。
僕も前世取った杵柄なのか、だんだん魔法を教えるのが楽しくなっていた。
ただ、思った以上に才能溢れる子どもたちにびっくりしている。
「先生、この光弾丸、あっちに投げていいか?」
「アドラ、その弾丸、放ったら城がふっとぶからね?」
……僕の教え方が良すぎたのだろうか? それともこの子たちの才能?
年少の子たちはもう少し集中力を鍛えなければならない課題は残っているが、年長の子供はコツを教えたら、大きな光の球を作ることが出来るようになっていた。
「じゃあ、集中するのを止めて。光の球が消えるまで構えはそのまま」
僕が言うと子供たちは集中を解いた。魔力の集中さえ止めれば光球は徐々に小さくなり消えてゆく。
これで呪文を唱えて、光弾丸を投げ飛ばしていたら、大変なことになっていたけどね。
そこに用事を済ませたオルティスがこっちにやってきて尋ねてきた
「どうでしたか? 久しぶりの授業は」
「記憶を失っても、身体は覚えているのかな? 問題なく進めることができたよ。ただ……実戦で使える以上に破壊兵器を作ってしまった気分だが」
「?」
◆◇◆
それ以来、僕は子供たちに魔法を教えるようになった。
僕自身も魔力を引き出す鍛錬の一環として、子供たちと共に瞑想をしたり、魔力を一点に集中させる訓練に励んだ。
教えることは学ぶことの半ばだって、どこかの国の諺であったな。
子供らに教えるということは、僕自身の復習にもなって良いことだった。
僕ももう少ししたら上級魔法も使えるようになれそうだ。
短期間でここまで習得出来るのは、やはり魔王としての記憶があるからだろうな。魔力を引き出す術も心得ているし、魔法のコツも分かっているから。
もしかしたら、前世の能力をそのまま引き継いでいる可能性もある。
ジュノームの魔力は人間にしてはかなり多いようで、底が知れない。まだまだ限界が見えてこない。はっきりとした根拠があるわけじゃないが、このまま鍛錬を続けていけば魔王だった頃の力を取り戻せそうな気がするのだ。
上級魔法が使えるようになったらここを出ようとは思うけど。
「先生ー、今日はお花を持ってきました」
「先生、今日はどんな授業するの?」
「先生、先生、聞いて、聞いて」
小さな子供たちが無邪気に自分の元に駆け寄って来る。
くっっ……子供らよ、その笑顔は反則だ。
可愛すぎるだろ。
すっかり子供たちに懐かれてしまった僕は、何だかここから離れがたい気持ちになってしまう。
人族の子も魔族の子も妖精族の子も皆可愛い。
この子たちは、宮廷魔法士の卵として選ばれただけあって、頭も良く飲み込みが早い。
特に炎の妖精族の子、アドラは将来妖精王になると豪語したのは伊達じゃなく、早々と上級魔法士の資格がとれるほどの才能を発揮した。
そして――――
「俺、将来は先生のこと守れるくらい強くなる!!」
まっすぐな目を僕に向けてくる。
それが好意的なものであることはすぐに分かった。前世の魔王だった時代はかなりモテてたからさ、そういう目で僕のことを見詰める者は男女問わす多くいた。
子供とはいっても、アドラは思春期に入った年齢だ。そういう目で僕のことを見るのはなんら不思議じゃない。
気持ちは嬉しいけど、生憎子供を相手にどうこうする趣味はないので、彼の想いには気づかない振りをする。
「君に守って貰えたら僕も助かるよ。その意気でがんばれ」
そう言って僕はアドラの肩を叩いた。
その時、誰かがこちらに歩み寄って来る気配がして、僕は顔をあげた。
あ……ゼムベルトがこっちに歩み寄ってくる。
子供たちは慌てて跪く。
「子供たちとは仲よくしているみたいだな」
「あ、はい。お陰様で」
「授業が終わったら私の部屋に来て欲しい。久々に君とゆっくり話がしたい」
「……分かりました」
何故、ここで嫌だと言えない?
いや、元より拒否権などないに等しい。僕は助けてもらっているし、今は実家に捨てられた人間だから平民……いや平民以下の奴隷に等しい地位だ。
それに対して相手は軍事帝国の皇子様。
人間として生きている以上、逆らうわけにはいかない。
――――言い訳をしているわけじゃないぞ?
おかしい……立ち去るゼムベルトの後ろ姿から目が離せない。
惚れたとか言わないよな? ジュノーム=ティムハルト。
冗談じゃない。相手は勇者だぞ?
もし向こうの記憶が蘇ったら、僕への想いも冷めるに決まっている……いや冷めるだけならいい。もしかしたら危険人物として殺されるかもしれない。
早くここを出て行かないと……。
13
あなたにおすすめの小説
天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました
藤吉めぐみ
BL
高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。
ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。
そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。
冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで……
優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
記憶を失くしたはずの元夫が、どうか自分と結婚してくれと求婚してくるのですが。
鷲井戸リミカ
BL
メルヴィンは夫レスターと結婚し幸せの絶頂にいた。しかしレスターが勇者に選ばれ、魔王討伐の旅に出る。やがて勇者レスターが魔王を討ち取ったものの、メルヴィンは夫が自分と離婚し、聖女との再婚を望んでいると知らされる。
死を望まれたメルヴィンだったが、不思議な魔石の力により脱出に成功する。国境を越え、小さな町で暮らし始めたメルヴィン。ある日、ならず者に絡まれたメルヴィンを助けてくれたのは、元夫だった。なんと彼は記憶を失くしているらしい。
君を幸せにしたいと求婚され、メルヴィンの心は揺れる。しかし、メルヴィンは元夫がとある目的のために自分に近づいたのだと知り、慌てて逃げ出そうとするが……。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました
未希かずは(Miki)
BL
「ねえ、私だけを見て」
これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。
エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。けれど付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。
「この恋、早く諦めなくちゃ……」
本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。
この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる