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第四章
第55話 新たな魔王城にて
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「僕が眠っている間に妙な真似はしていないよね?」
身体はなんともないので、特に何もされている感覚はないが、僕は一応尋ねてみる。
シキはベッドの上に腰掛けながら言った。
「人形状態のあなたにどうこうしたところで何の面白味もないでしょう」
「そうだったな。お前は相手の泣き叫ぶ声や苦痛の声を聞いて初めて興奮する変人だった」
僕がぱちんと指を鳴らした瞬間、シキの身体は衝撃波をくらったように弾け飛び、城の壁にぶつかった。
後頭部や背中を強打した筈だが、シキは嬉しそうに笑いながら、ゆらりと立ち上がる。
攻撃されて喜んでいるなんて、本当にこいつは狂っている。
「ところでここはどこなんだ? 僕はカーマ平原にお前らを飛ばしたつもりだったのだが」
「あなたの狙い通り、ちゃんとカーマ平原に着きましたよ。ははは、兵士たちは地団駄ふんでいましたけどね。帝都を目の前にして元の場所に連れ戻されてしまいましたから」
「僕の転移魔法もまんざらじゃなかったわけだね」
「ええ、大したものです。一部の兵士はこのままでは引けないと、再びヴィングリードに送るように言ってきましたよ。私はもうあなたを手に入れた時点でヴィングリードには興味がなくなったのでね。自分たちで行くように言いましたけど」
「アレムとの約束はどうした? 帝都を攻めるんじゃなかったのか」
「アレム様との約束はあくまで勇者の首を狩ること。あなたがいれば勇者は向こうから来てくれるでしょう?」
……その通りすぎて反論できない。
ゼムベルトは僕が世界の果てにいようと追いかけてくるような奴だ。
「兵士たちは新たなリーダーを立てて、勝手にヴィングリードへ出陣しましたけどね。でも境界を越えられず全滅するでしょうね」
ヴィングリードの境界付近は、ノアの親や兄弟を初めとした精鋭部隊が警備しているからな。烏合の衆が集まって攻め入ったところで、瞬く間に全滅させられるだろうな。
シキは昔から自分の部下のことを駒にしか思っていなかった。生まれ変わった今もそれは変わらないようで、用済みになったらどうでもいい存在だったようだ。
「この城はアレム様に建てて頂いた新たな魔王城です。今はこの広い空間、あなたと二人きり……ああ、もう一人いましたね」
シキが軽く手を挙げた瞬間、人工池の水が噴水のように盛り上がり、いくつもの触手が現れ、蛇のようにうねり出す。
ウォーターオクトパスか。
身体のほとんどが水で出来ているその魔物は、ロープのような触手でもって、青年の四肢を拘束していた。
「イプティー!?」
「ジュノームさま……!!」
触手は四肢だけではなく、イプティーの胴体にも巻き付いてくる。
しかも服の中に潜り込み。
「あ……っっ!」
イプティーは顔を仰け反らせ、思わず声を上げる。
触手は容赦なく妖精族の青年の後孔を犯し始めた。この魔物は男も女も関係なく、獲物を弄ぶ習性がある。
屈辱と不本意な快感に唇を噛みしめ、イプティーは僕の方を見て訴える。
「ジュノーム様、僕にかまわずお逃げください!!」
「……!!」
イプティー……君という奴は。
僕は君にそこまでして守って貰うような存在じゃない。
前世では沢山の人の命を奪ってきたし、今世だって家族に疎まれ奴隷として売られて……ゼムベルトの記憶が蘇って、僕のことを憎むようになったら、それこそ僕は皇妃としていられなくなる。
僕は仮初めの皇妃に過ぎないのに。
「……ぐ……っっ」
イプティーの首に水の触手が巻き付いて締め付けてくる。
シキは目を見開いて、僕に近づきながら言った。
「あなたがこの場で大人しく私に抱かれるのであれば、あの妖精族の若者は解放してさしあげますよ?」
「その手の交渉でお前が約束を守ったことはないだろう?」
「私の言うとおりにしなければ、この若者は今すぐ死ぬ」
イプティーの首が触手によってますます締め付けられる。彼は苦しみながらも、必死に首を横に振る。
シキに従ってはいけない、と。
僕は一つ息をつく……本当に人間という生き物は面倒だ。魔王だった時は従者が何をされても知ったことではないと切り捨てていたのに。
自分の命よりも僕を守ろうとしているイプティーを見捨てることができない。
目を閉じてベッドに腰掛ける僕に、シキはにやりと笑って近づいてくる。
白くて細長い、冷たい指が僕の頬に触れてきた。
僕は目をそらさず、シキの黒い目を見詰める……邪神の気配はまだ感じられない。しばらくは大人しくしているつもりなのだろう。
「あなたには私の子供を孕んでもらう」
「は……? 僕は男だ。どんな魔法を使っても男を孕ますことはできない」
そう言った直後、シキは僕の両手を捉え磔にするかのようにベッドに押し倒してきた。
抵抗する間もなく唇を重ねられる……な、何だ?口の中に異物が。
小さな豆粒のようなものが口腔内に入ってきたのだ。
舌を蹂躙されながら、僕はその粒を反射的に飲んでしまった。
く……何を飲ませたんだ!?
シキは僕が粒を吐き出さないよう口を塞ぎ、囁く様な声で言った。
「ルキーアの実というらしいですよ。神々が子を為す為に飲む実だそうです。この実はあなたの身体の中で年月をかけて育ち、子宮の役割を果たすようになる」
「く……アレムがもたらしたものか」
身体はなんともないので、特に何もされている感覚はないが、僕は一応尋ねてみる。
シキはベッドの上に腰掛けながら言った。
「人形状態のあなたにどうこうしたところで何の面白味もないでしょう」
「そうだったな。お前は相手の泣き叫ぶ声や苦痛の声を聞いて初めて興奮する変人だった」
僕がぱちんと指を鳴らした瞬間、シキの身体は衝撃波をくらったように弾け飛び、城の壁にぶつかった。
後頭部や背中を強打した筈だが、シキは嬉しそうに笑いながら、ゆらりと立ち上がる。
攻撃されて喜んでいるなんて、本当にこいつは狂っている。
「ところでここはどこなんだ? 僕はカーマ平原にお前らを飛ばしたつもりだったのだが」
「あなたの狙い通り、ちゃんとカーマ平原に着きましたよ。ははは、兵士たちは地団駄ふんでいましたけどね。帝都を目の前にして元の場所に連れ戻されてしまいましたから」
「僕の転移魔法もまんざらじゃなかったわけだね」
「ええ、大したものです。一部の兵士はこのままでは引けないと、再びヴィングリードに送るように言ってきましたよ。私はもうあなたを手に入れた時点でヴィングリードには興味がなくなったのでね。自分たちで行くように言いましたけど」
「アレムとの約束はどうした? 帝都を攻めるんじゃなかったのか」
「アレム様との約束はあくまで勇者の首を狩ること。あなたがいれば勇者は向こうから来てくれるでしょう?」
……その通りすぎて反論できない。
ゼムベルトは僕が世界の果てにいようと追いかけてくるような奴だ。
「兵士たちは新たなリーダーを立てて、勝手にヴィングリードへ出陣しましたけどね。でも境界を越えられず全滅するでしょうね」
ヴィングリードの境界付近は、ノアの親や兄弟を初めとした精鋭部隊が警備しているからな。烏合の衆が集まって攻め入ったところで、瞬く間に全滅させられるだろうな。
シキは昔から自分の部下のことを駒にしか思っていなかった。生まれ変わった今もそれは変わらないようで、用済みになったらどうでもいい存在だったようだ。
「この城はアレム様に建てて頂いた新たな魔王城です。今はこの広い空間、あなたと二人きり……ああ、もう一人いましたね」
シキが軽く手を挙げた瞬間、人工池の水が噴水のように盛り上がり、いくつもの触手が現れ、蛇のようにうねり出す。
ウォーターオクトパスか。
身体のほとんどが水で出来ているその魔物は、ロープのような触手でもって、青年の四肢を拘束していた。
「イプティー!?」
「ジュノームさま……!!」
触手は四肢だけではなく、イプティーの胴体にも巻き付いてくる。
しかも服の中に潜り込み。
「あ……っっ!」
イプティーは顔を仰け反らせ、思わず声を上げる。
触手は容赦なく妖精族の青年の後孔を犯し始めた。この魔物は男も女も関係なく、獲物を弄ぶ習性がある。
屈辱と不本意な快感に唇を噛みしめ、イプティーは僕の方を見て訴える。
「ジュノーム様、僕にかまわずお逃げください!!」
「……!!」
イプティー……君という奴は。
僕は君にそこまでして守って貰うような存在じゃない。
前世では沢山の人の命を奪ってきたし、今世だって家族に疎まれ奴隷として売られて……ゼムベルトの記憶が蘇って、僕のことを憎むようになったら、それこそ僕は皇妃としていられなくなる。
僕は仮初めの皇妃に過ぎないのに。
「……ぐ……っっ」
イプティーの首に水の触手が巻き付いて締め付けてくる。
シキは目を見開いて、僕に近づきながら言った。
「あなたがこの場で大人しく私に抱かれるのであれば、あの妖精族の若者は解放してさしあげますよ?」
「その手の交渉でお前が約束を守ったことはないだろう?」
「私の言うとおりにしなければ、この若者は今すぐ死ぬ」
イプティーの首が触手によってますます締め付けられる。彼は苦しみながらも、必死に首を横に振る。
シキに従ってはいけない、と。
僕は一つ息をつく……本当に人間という生き物は面倒だ。魔王だった時は従者が何をされても知ったことではないと切り捨てていたのに。
自分の命よりも僕を守ろうとしているイプティーを見捨てることができない。
目を閉じてベッドに腰掛ける僕に、シキはにやりと笑って近づいてくる。
白くて細長い、冷たい指が僕の頬に触れてきた。
僕は目をそらさず、シキの黒い目を見詰める……邪神の気配はまだ感じられない。しばらくは大人しくしているつもりなのだろう。
「あなたには私の子供を孕んでもらう」
「は……? 僕は男だ。どんな魔法を使っても男を孕ますことはできない」
そう言った直後、シキは僕の両手を捉え磔にするかのようにベッドに押し倒してきた。
抵抗する間もなく唇を重ねられる……な、何だ?口の中に異物が。
小さな豆粒のようなものが口腔内に入ってきたのだ。
舌を蹂躙されながら、僕はその粒を反射的に飲んでしまった。
く……何を飲ませたんだ!?
シキは僕が粒を吐き出さないよう口を塞ぎ、囁く様な声で言った。
「ルキーアの実というらしいですよ。神々が子を為す為に飲む実だそうです。この実はあなたの身体の中で年月をかけて育ち、子宮の役割を果たすようになる」
「く……アレムがもたらしたものか」
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