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7.最終話
今後の身の振り方を考えようと、貴族達が子弟を連れ帰宅し始めた頃、突然ホールのドアが開いた。
「 ひょっとして公爵夫妻が戻って来てくれたのでは!」
との期待で、皆扉のほうを見つめるが、入って来たのは、王国教会の大司教であった。
「陛下、大至急お伝えしたいことがあり、はせ参じました。」
「何だ?今はそれどころでは無いのだ。手短に頼む。」
「辺境伯領にて新たな聖女が見つかりました。先程教会にて確認致しましたところ、100年ぶりとも言える、大聖女様並みのお力をお持ちでございます。」
「なんと!」
「待て、聖女は歴代に1人と決まっておるのではないか?」
「そうでございます。」
「どちらかが違う、ということか?」
「実は、そちらの聖女候補様の鑑定をした司祭が行方不明でございます。」
「?!」
真っ青になるフール男爵。きょとんとするメイリン。
「フール男爵、どういうことか、正直に話さねばどうなるかわかっておるな?」
近衛騎士が男爵とメイリンを取り囲む。
「え?どういうこと?何?何?」
「ある日、司祭を名乗る男が、メイリンを聖女候補として男爵家に連れて来たのでございます。聖女は王妃になれるから、学園に入学させ、皇太子に近づけろと。」
「見返りに何か貰ったのか?」
「はい……我が家の事業が上手くいっておりませんでしたので…多額の金銭を……まさか、こんなことになるとは……」
国王は頭を抱えた。
「帝国の手の者であったかもしれぬ。今となっては確かめる術も無い。それにまんまと引っかかる愚かな皇太子が、わが息子とはな………」
スチュアートはもはや立っていることすらできず、両手で顔を覆って、その場にうずくまった。
「え?私、聖女じゃなかったってこと?そんなの知らないし。なに、皇太子ルートじゃなかったの?どういうことよ。」
フール男爵家は王家と教会を謀り、王国に危機を招き、さらに皇太子の婚約を壊した罪で、養女のメイリンを含め、一族郎党処刑された。メイリンの減刑を望む声もあったが、あまりの国難を招いたことに憎しみの声が多く、聞き入れられることはなかった。
よく晴れた夏の朝、スマート帝国の王宮に、レジェンド公爵とリアンは居た。
「リアン、よくやった。」
「父上、私はスカーレット嬢のために頑張ったので、父上の為にではございません。」
「レジェンド公爵、ようこそ帝国へ。わが国をあげて歓迎する。」
「ありがたき幸せにございます。」
暫くして薔薇に囲まれた王宮の中庭にリアンと、スカーレットの姿があった。
「ねえ、リアン、私をずっと騙していたのね。酷いわ。帝国の第2王子だなんて!お父様はご存知だったのでしょう?」
「お嬢が昔会った俺のことを何も覚えてないし、やさ男の皇太子に夢中だったから。仕方なかったんですよ。護衛騎士にでもならないとお嬢の傍にいられなかったし。それに、公爵様の思いつきだったんですから。でも、楽しかったです。ずっとお嬢の傍にいられて。」
「……………………ねえ、リアン、私に何か言う事、あるわよね?」
「ある………あります……」
「渡してくれるものも、あるわよね?」
「ある………」
リアンは緊張した面持ちで、ポケットから真っ赤なルビーのついた指輪を出し、スカーレットの前に跪いた。
「スカーレット、君を愛している。俺と結婚してくれ。」
「もちろんよ!」
思いっきり微笑んで、スカーレットは答えた。
リアンはスカーレットの左手の薬指に、指輪をはめた。スカーレットは左手を太陽にかざして、その赤い光を慈しんだ。少し、ほんの少し、頭の隅にきらきらしい面影が浮かびかけた………その時、
「おい!今、変なやつのこと思い出しかけただろ?」
リアンがスカーレットをぐいっと引き寄せ、胸の中に閉じ込めた。スカーレットは無意識にリアンの胸に顔を埋める。
ふわっとシトラスの匂いがした。何度、この胸の中で、危機を乗り越えたのだろう。ふと、思い出す。どんなピンチでもリアンは守ってくれた。そして、こうして抱きしめてくれたのだ。
「懐かしい匂い…」
「え?俺、何か臭うのか?」
「ふふふ…違うわよ。リアンの匂い…」
「ええっ!嫌だなあ、それ…」
幸せな気持ちに包まれて、スカーレットもリアンの背中に腕を回す。そして言った。
「リアン、大好き。きっと、ずっと前から。」
リアンの腕に力が入る。
「絶対に、幸せにする!」
スカーレットが顔を上げると、それを待ちかねたように、リアンが優しく、ついばむように口付けをした。暖かな胸の中で、リアンの唇を感じながらスカーレットは思った。もう、戦わなくていいんだ……
「ねぇ、リアン」
「何だ?」
「私、もう北風にも太陽にもならなくていいのかしら?」
「何だそりゃ?でも、俺にとってお嬢……いや、スカーレットは初めて出会った時から、ずっと太陽だったぜ。」
「?!……そうなの?」
「気が付かなかったのか?」
「うん……」
自然と涙が流れた。
「嬉しくても、涙って出るのね。」
「そういう涙は大歓迎だ。」
リアンは唇でスカーレットの涙を拭い、ぎゅっと抱きしめる。スカーレットは、うっとりと目を閉じた。
本当はリアンが私の太陽よね。だって、こんなに暖かくて幸せなんだもの。コートだって何だって、すぐ脱いじゃうわ。
数年後、イディオット王国は帝国の属国となったということだ。
おしまい…
お読み頂きありがとうございます😊
「 ひょっとして公爵夫妻が戻って来てくれたのでは!」
との期待で、皆扉のほうを見つめるが、入って来たのは、王国教会の大司教であった。
「陛下、大至急お伝えしたいことがあり、はせ参じました。」
「何だ?今はそれどころでは無いのだ。手短に頼む。」
「辺境伯領にて新たな聖女が見つかりました。先程教会にて確認致しましたところ、100年ぶりとも言える、大聖女様並みのお力をお持ちでございます。」
「なんと!」
「待て、聖女は歴代に1人と決まっておるのではないか?」
「そうでございます。」
「どちらかが違う、ということか?」
「実は、そちらの聖女候補様の鑑定をした司祭が行方不明でございます。」
「?!」
真っ青になるフール男爵。きょとんとするメイリン。
「フール男爵、どういうことか、正直に話さねばどうなるかわかっておるな?」
近衛騎士が男爵とメイリンを取り囲む。
「え?どういうこと?何?何?」
「ある日、司祭を名乗る男が、メイリンを聖女候補として男爵家に連れて来たのでございます。聖女は王妃になれるから、学園に入学させ、皇太子に近づけろと。」
「見返りに何か貰ったのか?」
「はい……我が家の事業が上手くいっておりませんでしたので…多額の金銭を……まさか、こんなことになるとは……」
国王は頭を抱えた。
「帝国の手の者であったかもしれぬ。今となっては確かめる術も無い。それにまんまと引っかかる愚かな皇太子が、わが息子とはな………」
スチュアートはもはや立っていることすらできず、両手で顔を覆って、その場にうずくまった。
「え?私、聖女じゃなかったってこと?そんなの知らないし。なに、皇太子ルートじゃなかったの?どういうことよ。」
フール男爵家は王家と教会を謀り、王国に危機を招き、さらに皇太子の婚約を壊した罪で、養女のメイリンを含め、一族郎党処刑された。メイリンの減刑を望む声もあったが、あまりの国難を招いたことに憎しみの声が多く、聞き入れられることはなかった。
よく晴れた夏の朝、スマート帝国の王宮に、レジェンド公爵とリアンは居た。
「リアン、よくやった。」
「父上、私はスカーレット嬢のために頑張ったので、父上の為にではございません。」
「レジェンド公爵、ようこそ帝国へ。わが国をあげて歓迎する。」
「ありがたき幸せにございます。」
暫くして薔薇に囲まれた王宮の中庭にリアンと、スカーレットの姿があった。
「ねえ、リアン、私をずっと騙していたのね。酷いわ。帝国の第2王子だなんて!お父様はご存知だったのでしょう?」
「お嬢が昔会った俺のことを何も覚えてないし、やさ男の皇太子に夢中だったから。仕方なかったんですよ。護衛騎士にでもならないとお嬢の傍にいられなかったし。それに、公爵様の思いつきだったんですから。でも、楽しかったです。ずっとお嬢の傍にいられて。」
「……………………ねえ、リアン、私に何か言う事、あるわよね?」
「ある………あります……」
「渡してくれるものも、あるわよね?」
「ある………」
リアンは緊張した面持ちで、ポケットから真っ赤なルビーのついた指輪を出し、スカーレットの前に跪いた。
「スカーレット、君を愛している。俺と結婚してくれ。」
「もちろんよ!」
思いっきり微笑んで、スカーレットは答えた。
リアンはスカーレットの左手の薬指に、指輪をはめた。スカーレットは左手を太陽にかざして、その赤い光を慈しんだ。少し、ほんの少し、頭の隅にきらきらしい面影が浮かびかけた………その時、
「おい!今、変なやつのこと思い出しかけただろ?」
リアンがスカーレットをぐいっと引き寄せ、胸の中に閉じ込めた。スカーレットは無意識にリアンの胸に顔を埋める。
ふわっとシトラスの匂いがした。何度、この胸の中で、危機を乗り越えたのだろう。ふと、思い出す。どんなピンチでもリアンは守ってくれた。そして、こうして抱きしめてくれたのだ。
「懐かしい匂い…」
「え?俺、何か臭うのか?」
「ふふふ…違うわよ。リアンの匂い…」
「ええっ!嫌だなあ、それ…」
幸せな気持ちに包まれて、スカーレットもリアンの背中に腕を回す。そして言った。
「リアン、大好き。きっと、ずっと前から。」
リアンの腕に力が入る。
「絶対に、幸せにする!」
スカーレットが顔を上げると、それを待ちかねたように、リアンが優しく、ついばむように口付けをした。暖かな胸の中で、リアンの唇を感じながらスカーレットは思った。もう、戦わなくていいんだ……
「ねぇ、リアン」
「何だ?」
「私、もう北風にも太陽にもならなくていいのかしら?」
「何だそりゃ?でも、俺にとってお嬢……いや、スカーレットは初めて出会った時から、ずっと太陽だったぜ。」
「?!……そうなの?」
「気が付かなかったのか?」
「うん……」
自然と涙が流れた。
「嬉しくても、涙って出るのね。」
「そういう涙は大歓迎だ。」
リアンは唇でスカーレットの涙を拭い、ぎゅっと抱きしめる。スカーレットは、うっとりと目を閉じた。
本当はリアンが私の太陽よね。だって、こんなに暖かくて幸せなんだもの。コートだって何だって、すぐ脱いじゃうわ。
数年後、イディオット王国は帝国の属国となったということだ。
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読んで頂いてありがとうございます。
またお会い出来ますように☺
与三振王さんがなんか言ってるけど、
そもそも三馬鹿がメイリンの言う事を鵜呑みにせず、調査すれば何も起こらなかったんだよね。
ところで……
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感想ありがとうございます。
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