海を見ていたソランジュ

第1章 パラダイス・シティーの闇

第1話 将軍の家族の行方は分かりましたか？

「それで、頼んでおいた将軍の家族の行方は分かりましたか？」

「それが･･･、その方はやはり一級市民ではなかったので、記録が残されていませんでした」
と部下はアンジーに告げた。

　いぶかるアンジーに部下は、仕方なく、なおも言葉を続けた。

「将軍のペットとしてこのパラダイス・シティーに滞在を許されていた特別二級市民だったので、パラダイス・シティーにはその方の記録はいっさい存在しないのです。
　あるのはペットとしての登録日だけで、それ以上はいっさい無いのです」

「それはおかしい。あの方は極秘計画の実験体で、ラボは細部にいたるまで調査し、把握していたはずです」
とアンジーは部下に告げた。

「ならばなおさら、極秘記録となり表には出てきません」

「私はこの星の最高指令官なのに、私にも見せられぬと云うのか？」

「それほど重大な記録である以上、うかつに手をだせば、貴方さまも傷を負うことになります。調べるのはもう、おやめになった方が、身のためです」
と部下は忠告するように言った。

　アンジーの護衛官カイルは、この任務に不満だった。
　統治官の護衛官になることは、出世コースだったのだが、タフな心理戦を要求される特別中央行政府での生活は、武官カイルにとって神経を逆なでするようなことばかりで、速く戦場へもどりたいといつも思っていた。