海を見ていたソランジュ

第1章 パラダイス・シティーの闇

第4話 あなたに頼まれた任務を、まだ果たしていませんでした。

「それで？」
と言って、アンジーはやっと後ろを振り向き、カイルを見た。

「今頃になって何故、あなたはここへやって来たのですか？」

　カイルはアンジーの冷たいことばの響きに、どう切り出してよいものか迷い続けた。

「あなたは無断で姿を消して、辞表まで私に送ってきた。
　そして新しい警護官もすでに先週から来ている。
　もう無理して、私の警護をする必要はないのです。
　良かったですね。おめでとう。
　嬉しいでしょう？」

　しかしカイルは嬉しくなかった。
　実はこの１ヶ月、カイルは恋人エルの行くヘを必死で探していたのだ。
　しかしエルを探し出す糸口さへ、つかむことが出来なかった。

　そして初めて知ったのだった。
　ペットになった２級市民の行くヘを探すことが、どんなに困難で難しいことかを･･･。

「あなたに頼まれた任務を、まだ果たしていませんでした。
　あの任務を、“将軍の家族を探す”というあの任務を、ぜひ私に遂行させてほしいのです」

　カイルには、ある確信があった。

「あの任務は、あなたの警護をしながら片手間で遂行できるような、そんな簡単な任務ではありませんでした。だから、見つけられなかったのです。
　あなたは知っていたはずです。
　あなたは私を試したのではありませんか？」