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マルデク編 第1章 オスカー・フォン・ブラウンの恋
第15話 男装の麗人アメリア
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やがて、アメリアが帰ってきた。そして嬉しそうにオスカーに言った。
「オスカーさま、わざわざ会いに来てくださるなんて、とても光栄ですわ」
しかしアメリアは言葉とは裏腹に、あまり感動しているようには見えなかった。
オスカーは男らしい容貌をした美青年だったので、名門の跡取り息子ということもあり、いつも女性からは熱い視線で見つめられていた。だから、女性の熱い視線には慣れていた。しかしアメリアの視線は、言葉とは裏腹に、かなり冷めたものだった。
「折り入ってあなたに、お話ししたいことがあって、今日は参りました」
その日、アメリアは男のような服装に身を包み、あまり女らしいとは言えなかった。
「驚きましたか? 私はドレスが嫌いなのです。
あんな窮屈で、走りづらいものは大嫌い!
ドレスは私たちから自由を奪うものです」
と、アメリアは言った。
この間、両親と共にブラウン家を訪れたアメリアは、ドレスを着ていた。
あまりの似合わなさに、ブラウン家の者たちは皆、驚き、ため息をついたのだが、男のような服装をしたアメリアは、新鮮で美しくさへあった。
「私の部屋へ、参りましょう。
私たちは婚約しているのだから、誰にも文句は言わせません」
オスカーはアメリアの豹変ぶりに、驚いた。
それで理解したのだった。
クラウスは初めから、オスカーがアメリアとの婚約を受けるはずがなく、この結婚話は破談となり、ブラウン家はルカを差し出すと踏んでいたのだ。
しかしオスカーがアメリアとの婚約を承諾し、もくろみが外れたクラウスは、秘密裏に父に接近し、誰にも知られないうちに、ルカとの電撃結婚を実行した。
そういうことだったのだ。
自分が甘かったことを、オスカーはつくづく感じていた。
オスカーは学生時代から、どんなことにでも秀でていて、負けたことが無かったから、負かした相手からの反撃を、考えたことが無かった。特に、クラウスに関してはそうだった。
アメリアの部屋は、予想に反して、男の部屋のような簡素なものだった。
まるで女らしさが無かった。
驚いたことに、クラウスの言葉通り、アメリアは本当に武器を集めることが趣味らしく、古代から現代までの様々な武器を、部屋のいたるところにそれは綺麗に飾っていた。
「武器に驚かないのですね? 大概の場合、殿方は、驚きます」
と、アメリアはオスカーに平然と言ってのけた。
軍人であるオスカーは、その珍しいコレクションに目を奪われた。
「なぜこんな物を?」
「こんな時代です。自分の身は、自分で守らねば」
とアメリアは事も無げに答えた。
「総統の側近であるあなたならば、おわかりになると思うのですが、総統は狂っています。あんな狂人を総統に任命した元老院も、狂っています。
民衆もそういつまでも、あの狂人の圧政に耐えられるとは思えません。
宇宙連合軍との戦いに敗れて滅びるか、さもなければ民衆が蜂起してあの総統を排除するか、どちらかでしょう」
あまりの冷静な分析にオスカーは驚いた。
彼女は王家の血を引いていて、王位を継ぐことになっているが、しかし彼女はお飾りに過ぎない。実権を握るのは、彼女の夫になり王位を継ぐ者であり、元老院なのだ。
彼女は首相候補の兄クラウスよりもずっと、権力を継ぐ者としてふさわしい、とオスカーは思った。しかしそれでも、女性ということで、彼女は絶対に実権は握れない。オスカーはその時、その仕組みに苛立つアメリアの絶望を、痛いほど感じた。
「オスカーさま、わざわざ会いに来てくださるなんて、とても光栄ですわ」
しかしアメリアは言葉とは裏腹に、あまり感動しているようには見えなかった。
オスカーは男らしい容貌をした美青年だったので、名門の跡取り息子ということもあり、いつも女性からは熱い視線で見つめられていた。だから、女性の熱い視線には慣れていた。しかしアメリアの視線は、言葉とは裏腹に、かなり冷めたものだった。
「折り入ってあなたに、お話ししたいことがあって、今日は参りました」
その日、アメリアは男のような服装に身を包み、あまり女らしいとは言えなかった。
「驚きましたか? 私はドレスが嫌いなのです。
あんな窮屈で、走りづらいものは大嫌い!
ドレスは私たちから自由を奪うものです」
と、アメリアは言った。
この間、両親と共にブラウン家を訪れたアメリアは、ドレスを着ていた。
あまりの似合わなさに、ブラウン家の者たちは皆、驚き、ため息をついたのだが、男のような服装をしたアメリアは、新鮮で美しくさへあった。
「私の部屋へ、参りましょう。
私たちは婚約しているのだから、誰にも文句は言わせません」
オスカーはアメリアの豹変ぶりに、驚いた。
それで理解したのだった。
クラウスは初めから、オスカーがアメリアとの婚約を受けるはずがなく、この結婚話は破談となり、ブラウン家はルカを差し出すと踏んでいたのだ。
しかしオスカーがアメリアとの婚約を承諾し、もくろみが外れたクラウスは、秘密裏に父に接近し、誰にも知られないうちに、ルカとの電撃結婚を実行した。
そういうことだったのだ。
自分が甘かったことを、オスカーはつくづく感じていた。
オスカーは学生時代から、どんなことにでも秀でていて、負けたことが無かったから、負かした相手からの反撃を、考えたことが無かった。特に、クラウスに関してはそうだった。
アメリアの部屋は、予想に反して、男の部屋のような簡素なものだった。
まるで女らしさが無かった。
驚いたことに、クラウスの言葉通り、アメリアは本当に武器を集めることが趣味らしく、古代から現代までの様々な武器を、部屋のいたるところにそれは綺麗に飾っていた。
「武器に驚かないのですね? 大概の場合、殿方は、驚きます」
と、アメリアはオスカーに平然と言ってのけた。
軍人であるオスカーは、その珍しいコレクションに目を奪われた。
「なぜこんな物を?」
「こんな時代です。自分の身は、自分で守らねば」
とアメリアは事も無げに答えた。
「総統の側近であるあなたならば、おわかりになると思うのですが、総統は狂っています。あんな狂人を総統に任命した元老院も、狂っています。
民衆もそういつまでも、あの狂人の圧政に耐えられるとは思えません。
宇宙連合軍との戦いに敗れて滅びるか、さもなければ民衆が蜂起してあの総統を排除するか、どちらかでしょう」
あまりの冷静な分析にオスカーは驚いた。
彼女は王家の血を引いていて、王位を継ぐことになっているが、しかし彼女はお飾りに過ぎない。実権を握るのは、彼女の夫になり王位を継ぐ者であり、元老院なのだ。
彼女は首相候補の兄クラウスよりもずっと、権力を継ぐ者としてふさわしい、とオスカーは思った。しかしそれでも、女性ということで、彼女は絶対に実権は握れない。オスカーはその時、その仕組みに苛立つアメリアの絶望を、痛いほど感じた。
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