20 / 99
2、
庇護
しおりを挟む
僕が帰ると、いつも通りのあっけらかんとした影子さんと対するように神妙な表情の悠一がリビングの机で向かい合っていた。
「何かあったんですか?」
「ん?うん、2人だけのこそこそ話。ね?」
影子さんの声に、悠一はじろっとこちらを睨み上げた。
「よし、ある程度話もできたことだし、今日はもう帰りな。親御さんも心配してるでしょ?」
「は?」
「宗太、送ってあげたら?」
そう言って影子さんはキッチンに入っていった。
影子さんの一瞬の目配せに、僕はやっと夜の出来事を思い出した。
そうだ、リサさんに悠一を合わせたら絶対ろくなことにならない。
「そ、そうだよ!ごめん、今日は帰って「断る。」……え?」
「あいあんた!勝手に連れて来て用済んだから帰れって、そんなおかしな話あるかよ!」
「ちょっと稲辺……。」
「それとも何か?『僕たちデキてるから邪魔しないで~』って?は~!」
思わぬ思い違いに怒りで顔が熱くなる。
それなのに頭が真っ白で何も出てこない。
あれ、僕何でこんなに怒ってるんだろう……。
そもそも僕だって誘拐されてるわけだしおかしいんだよね?
僕がショートしてしまうと、影子さんはリビングに顔を出した。
「親御さんにはきちんと話しておいてね。」
「は?!」
「フンッ、そう来ないとな!」
影子さんッ?!何考えてんの?!
そんなことしたら……。
「あ、宗太。家でのルールきちんと伝えておいてね。」
「……はい。」
そんな……僕が説明するの……?
僕はこれから訪れる心臓破りの時間に向けて唇をかんだ。
影子さんの作ってくれた夕食は無理矢理お茶で流すしかない状態で、僕は夜を迎えた。
3人ともお風呂を済ませたころ時刻は7時半になった。
影子さんは何も言わないまま部屋に入っていったのを確認して、僕は深呼吸をした。
「ねぇ、稲辺。」
「あ?」
「客間がないから今日は僕の部屋で寝よう。」
「何でもう寝るような寸法立ててんだよ。」
「もう部屋に入る時間だからだよ。」
「は?」
「と、とにかく、うちは消灯がこの時間なの!!」
僕は稲辺の腕を引いてソファから立たせて、無理矢理部屋に押し込んだ。
後ろ手で扉を閉めると同時にリビングの照明が黄色の薄暗いものに変わった。
これは、8時にオートで変わる仕組みになっている。……つまり、リサさんの時間が始まる合図だ。
その証拠に、ぎぃっと遠くのドアが開く音が聞こえる。
「おい、腕離せよ。」
「ごめん、8時以降はこの部屋から出ちゃいけない決まりになっているから。」
「何だそれ。トイレは?」
「朝まで我慢してる。」
「拷問かよ!」
「だから影子さんだって帰るように言ったんだ。」
「チィッ!」
トイレの話題になってくれたおかげで、ギリギリこれ以上聞かれることはなくなった。
良かった……騒ぎ過ぎたらリサさんが気がついちゃうところだった。
僕はふぅと息をついた。
コンコンッ
「ッ?!」
その時、僕のやっと来た安堵の時間をぶち壊すノック音が部屋に響いた。
「何かあったんですか?」
「ん?うん、2人だけのこそこそ話。ね?」
影子さんの声に、悠一はじろっとこちらを睨み上げた。
「よし、ある程度話もできたことだし、今日はもう帰りな。親御さんも心配してるでしょ?」
「は?」
「宗太、送ってあげたら?」
そう言って影子さんはキッチンに入っていった。
影子さんの一瞬の目配せに、僕はやっと夜の出来事を思い出した。
そうだ、リサさんに悠一を合わせたら絶対ろくなことにならない。
「そ、そうだよ!ごめん、今日は帰って「断る。」……え?」
「あいあんた!勝手に連れて来て用済んだから帰れって、そんなおかしな話あるかよ!」
「ちょっと稲辺……。」
「それとも何か?『僕たちデキてるから邪魔しないで~』って?は~!」
思わぬ思い違いに怒りで顔が熱くなる。
それなのに頭が真っ白で何も出てこない。
あれ、僕何でこんなに怒ってるんだろう……。
そもそも僕だって誘拐されてるわけだしおかしいんだよね?
僕がショートしてしまうと、影子さんはリビングに顔を出した。
「親御さんにはきちんと話しておいてね。」
「は?!」
「フンッ、そう来ないとな!」
影子さんッ?!何考えてんの?!
そんなことしたら……。
「あ、宗太。家でのルールきちんと伝えておいてね。」
「……はい。」
そんな……僕が説明するの……?
僕はこれから訪れる心臓破りの時間に向けて唇をかんだ。
影子さんの作ってくれた夕食は無理矢理お茶で流すしかない状態で、僕は夜を迎えた。
3人ともお風呂を済ませたころ時刻は7時半になった。
影子さんは何も言わないまま部屋に入っていったのを確認して、僕は深呼吸をした。
「ねぇ、稲辺。」
「あ?」
「客間がないから今日は僕の部屋で寝よう。」
「何でもう寝るような寸法立ててんだよ。」
「もう部屋に入る時間だからだよ。」
「は?」
「と、とにかく、うちは消灯がこの時間なの!!」
僕は稲辺の腕を引いてソファから立たせて、無理矢理部屋に押し込んだ。
後ろ手で扉を閉めると同時にリビングの照明が黄色の薄暗いものに変わった。
これは、8時にオートで変わる仕組みになっている。……つまり、リサさんの時間が始まる合図だ。
その証拠に、ぎぃっと遠くのドアが開く音が聞こえる。
「おい、腕離せよ。」
「ごめん、8時以降はこの部屋から出ちゃいけない決まりになっているから。」
「何だそれ。トイレは?」
「朝まで我慢してる。」
「拷問かよ!」
「だから影子さんだって帰るように言ったんだ。」
「チィッ!」
トイレの話題になってくれたおかげで、ギリギリこれ以上聞かれることはなくなった。
良かった……騒ぎ過ぎたらリサさんが気がついちゃうところだった。
僕はふぅと息をついた。
コンコンッ
「ッ?!」
その時、僕のやっと来た安堵の時間をぶち壊すノック音が部屋に響いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる