誘拐記念日

木継 槐

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2、

扼腕

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…悠一視点…

ぼろぼろの学校帰り。
それはある日突然で、必然で……俺は破かれた上履きを学校のごみ収集場に捨てた。
校門を出て息を吸うとやっと生きていることを実感して、一気に怒りと虚しさが押し寄せる。

宗太はこれだけの黒い感情を抱えてずっとへらへらし続けてきたんだろうか。
俺はこれだけの黒い感情をたった一人にぶつけて満足していたんだろうか……。

ピリリリッ
スマホの画面を見て最悪な2回目の電話にため息が出る。
「あんだよ?」
「不機嫌ナイト君、お疲れ様。」
「その下らねぇ呼び方やめろ。」
影子はスマホの向こうでケラケラと笑っている。

「今日は又一段と不機嫌だね。」
「別に……俺が決めたことだし良いんだよ。」
「……何のこと?」
返す影子の声に俺は少し違和感を感じた。
俺が黙り込むと、影子も黙り込んだ。

「宗太なんか言ってたか?」
沈黙を破ろうと尋ねると、影子は「何を?」と返す。
その声の正体が分かったのは電話と重なる背後からの声だった。

振り返ると、影子が俺の顔を見るなり目を見開いて、俺に駆け寄った。
「なにこれ。」
「何でも「何でもないわけないでしょ。」……。」
影子は自身のバッグを漁ると、コットンにペットボトルの水をかけて俺の頬にあてつけた。

「ぃって!」
「我慢して、絆創膏まで貼るから。」
俺は白々しく心配する影子の手を叩き落とした。
「同情すんな!何も知らない顔してこうなるように仕向けてたくせに……わざとらしいんだよ!!」
影子は、表情を曇らせたまま地面に落ちたコットンを拾った。

「何が『命を守る』だよッ……結局は殺さない程度にいたぶるつもりだったんだろ。自分の手を汚さないで……”誘拐した未成年”使って楽しいかよ……!!」
影子のぎょっとした形相で俺は口を手で覆った。
それを見て、影子は俺に背を向けた。
「来なさい。」
「は……何で「本当に誘拐されたいの?」ッ……。」
背中越しに聞こえる声の冷たさに俺は従った。

影子の後をついて歩く道で、きっとこのまま逃げられる……そう分かっていた。
それでも着いて行くことを決めたことに俺は理由を見つけられないまま、近くのビルの前に着いた。
ビルの案内板の所には1階から6階までの店や事務所の看板があった。
「悠一君。」
「ッあ?」
「こっち。」
しかし、影子は立ち入り禁止の鎖を右側だけ外して俺に手招きをした。
不審な行動に警戒が抜けないまま影子の後をついて階段を下りていくと、すぐにドアから明かりが見えた。

影子は黙ってそのドアを開けた。
「おや?いらっしゃいませ。」
室内に入ると、奥から小洒落た風貌のおっさんが顔を出した。
「白々しい挨拶はいらないって言ってるでしょ?」
「ひっどいな~、これでも正式な探偵事務所なんですけど?」
「正式なら看板でも立てたら?」
影子はそのおっさんと会話をしながら俺をおっさんの前に押し出した。

「ん?誰これ。」
「稲辺悠一。調べた本人の癖に忘れたの?」
「え。」
影子の顔を見た後におっさんの顔を見ると、おっさんは照れ臭そうに顔を掻いた。
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