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聖女は
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セリーナ達と宝具の力により、魔獣は全滅して
苦しんでいた負傷者達は回復した。
だが、カレンデュラ国王が何も策を講じる事なく
逃げ回っていた事で多くの犠牲者を出した。
セリーナ達三人は宝具を使った後、力を使い果たして倒れてしまった。混乱の残る神殿よりはグロンブナー公爵家の方がゆっくり療養できるという理由で、久しぶりに家族団欒の時間が作れた。
グロンブナー公爵家に来てから一週間が経ち、大分回復した三人は、大きな窓から庭園を眺められる広いゲストルームでお茶をしていた。
「お姉ちゃん!」
「なぁに、アンナ?」
「んふふ、なんでもなぁい」
神童と呼ばれて、神殿では一目置かれている二人だったが、実はまだ11歳と10歳。
同じ歳の子供よりも大分賢く分別ある二人だが
まだ甘えたい盛り。
久しぶりに会えたセリーナにアンナは甘えていた。
「アンナ、お姉ちゃんはまだ回復してないんだから
無理させるな!」
しっかりものの、兄であるマシューは再会してから
ずっと甘えているアンナを諫めると、セリーナは
クスクスと笑いながらマシューの頭を撫でた。
「マシュー大丈夫よ、ありがとう。
少し見ない内に本当に逞しくなったわ……お父様に
似て来たわね」
「そ、そうかな」
実は自分も甘えたいマシューは恥ずかしがりながらも嬉しそうに顔を緩めていた。
両親が亡くなってから、初めて訪れた平穏な日々に
三人は幸せを感じていた。
グロンブナー公爵家のパティシエが腕によりをかけたスイーツに舌鼓を打っていると、扉をノックする事が聞こえた。
「調子はどうだ?」
入って来たのはディオンだった。
ディオンは暫くの間、グロンブナーとカレンデュラを
行き来していた。
グロンブナーとカレンデュラには古の盟約がある。
「グロンブナー公爵家当主は、君主を選ぶ権利がある」
カレンデュラ国王は、この盟約を正しく理解せず
新たな国王を選ぶ際に選挙権がある位に思っていた。実際には公爵家当主が必要であると判断した際に国王を変える事が出来るという意味であった。
ディオンはこの盟約により国王を捕らえてその地位を剥奪した。そして、全ての指揮を取り復興支援を
行っていた。
「皆さんによくして頂いて元気になりましたわ。それよりもディオン様の方がお疲れではありませんか?」
「俺は大丈夫だ。家族団欒を邪魔して悪いが
マシューとアンナを借りてもいいか?話がある」
「えぇ。マシュー、アンナ。大丈夫?」
マシューとアンナは三人で居た時とは違い、完璧な作法でディオンに挨拶した。
「初めまして、シュペリアン家長男、マシュー・シュペリアンにございます。
グロンブナー公爵様には、姉が大変お世話になりました。ご挨拶が遅れまして誠に申し訳ございません」
「グロンブナー公爵様におかれましてはご機嫌麗しく存じます。末娘のアンナ・シュペリアンでございます。グロンブナー公爵家の皆様に手厚く歓迎頂き
誠に有難うございます」
「そんなに、固くならなくてもいい。
君達はセリーナの弟妹で、国を救った英雄だ
不自由があればなんでも言ってくれ」
穏やかながらも黒い微笑みのディオンと
セリーナとディオンの間に何かあると本能的に察し姉をとられるまいと敵意剥き出しの二人。
バチバチと火花が散っている様なピリついた雰囲気の三人だっだが、セリーナは二人の成長ぶりに目を細めて気づいていなかった。
とりあえず話し合おうと、セリーナを部屋に残して
出て行く三人。
マシューとアンナが帰って来たのは夜も更けた
晩餐前の時間で、ルーナとメリッサに着替えを手伝ってもらい三人はディオンが待つ部屋に向かった。
セリーナは紺色に宝石が散りばめられた、星空の
様に美しいマーメイドラインのドレスを纏い
マシューは淡いブルーに濃い紺色の刺繍がなされた燕尾服を、アンナは同じ色のオフショルダーのプリンセスラインのふんわりとしたドレスを纏っていた。
ディオンは三人が部屋に入ってくると、セリーナを
褒め手の甲にキスをすると席までエスコートした。
ちなみにディオンはセリーナと対のデザインの紺色の燕尾服を纏っていて、二人はディオンを睨みつけた。
穏やかそうに見えて水面下の戦いが繰り広げられた晩餐。
「では、新しい国王はアルミノク様に?」
アルミノクの母は側室で元平民だった。
その事で王宮では冷遇されていたが、腐る事無く
多くの事を学び、国を憂う貴族達と協力して少しずつ
力を付けていたのだった。
マシューとアンナもその事を、聞き協力していた。
「アルミノク様は国を立て直さないといけないから
僕達が新しい聖司教になる事にしたよ」
「え……マシューとアンナが?」
「うん、こんな事もあるかもしれないとアルミノク様から聖司教の仕事を色々と教えて貰っていたの」
平民になってからセリーナが二人に勉強を教えていた。賢い二人は一度教えれば理解して、セリーナが
教えられる事はすぐに無くなってしまった。
学園に通わせてあげられればと何度も思ったが
貧しいセリーナにはどうする事も出来なかった。
神殿の使いが来た時に、マシューが学園に通わせてもらえるか聞いた時には胸が傷んだ。
まだ幼い二人を手放すのは抵抗があったが、神官に
二人の将来を思うならと諭されていた。
ディオン達の話についていけず、半ば上の空で
聞いていたセリーナは、部屋に帰るとマシューとアンナに一緒に神殿で暮らそうと言われて、嬉しかったが
返事が出来なかった。
ベッドに入っても眠る事が出来ず、部屋を出て
少し散歩する事にした。
月明かりに照らされた庭園は幻想的で美しく、庭園の真ん中にあるガゼボにある椅子に座りセリーナは
ボーっと庭園を眺めていた。
ーーディオン様の石化病はもう治った。私の役目はおわったわ……マシューとアンナはまだ幼い。離れていた分二人を支えてあげなくては。
ディオンが負傷した際にセリーナがかけた治癒術は
強力なものだった。
なんと、石化病になる原因まで治してしまい
ディオンはいくら魔術を使っても体に燃えかすの様な
ものが残らないある意味、無敵な体になっていた。
マシューとアンナの側にはいてあげたい、だが
ディオンへの想いは募るばかり。
どうしていいのかわからず、涙が溢れた。
「セリーナ、どうした!大丈夫か?」
突然呼ばれてセリーナは驚いた。
涙で歪む視界の中にディオンが立っていた。
「ディ……オンさま」
ーー泣きやまなきゃ……変に思われるわ。
お願い!涙よ止まって。
「こんな所に薄着でいては風邪をひく。
とにかく屋敷へ戻ろう」
着ていた上着をセリーナに着せると、抱き上げてディオンの部屋へ向かった。
「ディオン様!わたし歩けますわ」
「わかっている。だが、この方が早いから身を委ねてくれないか?」
「わ、わかりました」
恥ずかしそうに顔を赤らめたセリーナは黙って運ばれる事にした。
部屋に着くとディオンは、ソファーにセリーナを座らせると、膝まずきセリーナの手を取った。
「なぜ、泣いていたんだ?」
「少し……感傷的になってしまって。それだけです」
ディオンは涙の理由を聞いてきたが、セリーナは話す事が出来なかった。いつも優しく接してくるディオンに気持ちを伝えられたらと何度も思ったが、そうする事で関係性が変わってしまったらと不安だった。
なんとかはぐらかそうとするセリーナにディオンは
低く抗えないような支配的な声で名前を呼ばれた。
「セリーナ」
ピクリとその声に反応したセリーナは諦めた様子で
話し出した。
「……マシューとアンナに神殿で暮らそうと言われたんです。それで……それであの、嬉しくて。
ディオン様の石化病も、治りましたし……いい、機会だから私も神殿に……」
その先を話そうとすると、また涙が溢れた。
気持ちを察したディオンは強い眼差しでセリーナを見つめた。
「セリーナ、君の本当の気持ちが知りたい。
教えてくれないか?」
これが本当の気持ちです、と言ってもディオンは
許してくれなかった。本心を話したがらないセリーナにディオンは仕方がないと言って、セリーナを抱き上げてベッドへ連れて行き膝の上に座らせた。
「ディ、ディオン様?ダメです!マシューとアンナが
いるのにこんなこと……」
ディオンに抱かれるとセリーナはいつも昼過ぎまで
眠って暫くベッドから起きられない。
同じ部屋に居るはずのセリーナが、ディオンの部屋で眠っていたと知られたら多感な時期の子供に悪い影響を与えてしまうと必死にセリーナは抵抗した。
「君の本心は?君の欲は?教えてくれセリーナ」
そう言うと、ディオンはセリーナの首筋にキスをして両方の乳房を揉みしだき、クリクリと胸の頂きを弄る。
「だめ、やあっ……あと、つけないで……あっ!」
チュッとキスマークをつけようとしてくるディオンに泣いてつけないでと懇願するセリーナを更に攻めたてる。
「そこは、だめ!ディオンさま……やっ、んんぅ!」
乳房にあった手は、セリーナの両足に降りて夜着の
裾を託しあげると、膝裏を持ち足を開かせて
下着越しに花芯を刺激するとビクビクと軽く達して
セリーナは荒い息を吐く。
「君は俺の恩人だ、君の望む事は全て叶えてあげたい
話してくれるか?」
悪魔の囁きの様に甘美に誘惑してくるディオン。
それでもフルフルと頭を振り頑なに拒むセリーナ。
ーー言えない……言って拒まれたら生きていけない。
マシューとアンナはまだ幼い。
せめて成人するまでは支えてあげるの……私は
お姉ちゃんなんだし。
この想いは一生心に秘めておくの。
一度思い込んだら強情な性格のセリーナは涙を流しながら本心を隠した。
その姿を見たディオンは何事もなかったかの様に
セリーナの頬にキスをし、解放するとゲストルームまで
送った。
嫌われてしまったかも、とセリーナは悩みながら
これで良かったのだと自分を納得させる。
だが、中途半端に火をつけられた体を持て余し悶々としたまま明け方近くまで起きていたがいつの間か
眠っていて起きたのは昼過ぎだった。
目覚めると既にマシューとアンナは出かけていた。
昼食の用意が出来ているとルーナとメリッサに呼びに来られ着替えさせて貰った。
みんなが待っている昼食を取る部屋に向かうと
ディオンとマシュー達が揃っていた。
「ごめんなさい、遅れてしまって……」
「病み上がりなのだから仕方がない。気にするな」
「大丈夫?お姉ちゃん」
「無理はしないでね」
いつも通りのディオンとマシュー達の様子にセリーナは安堵して昼食を取る。
「お姉ちゃん、僕達はそろそろ神殿に戻る事にしたよ」
「仕事も大分溜まってるし。今日はアルミノク様が、いらっしゃるみたい。お姉ちゃんともお話しがしたいから一緒に来て欲しいって」
「まぁ、そ……そうなの?私も一度ご挨拶しなければと思っていたの。分かったわ」
「俺もアルミノクに用があるから一緒に行く。
昼食が終わったら魔法陣がある地下で落ち合おう」
まだ、神殿で暮らす決心が出来ていなかったセリーナだが、マシューとアンナがお世話になったアルミノクには挨拶をしておかなければと思い神殿へ行く準備をした。
ルーナとメリッサに着替えさせて貰ったドレスで
行こうと思っていたのだが、聖司教に会うには正装で無ければならないと、セリーナ達は着替えてから神殿に向かう事にした。
マシューと真っ白な生地に金色の細かい刺繍がされたナポレオンジャケットにショートパンツとブーツを纏い。アンナは同じジャケットにタイトなワンピースとパンプスを合わせた。
セリーナはマシュー達と似たデザインの丈が長い
コートに白いふんわりとしたワンピースを合わせて
まるで聖女の様な装いに着替えると、地下に降りて
魔法陣で神殿に向かった。
苦しんでいた負傷者達は回復した。
だが、カレンデュラ国王が何も策を講じる事なく
逃げ回っていた事で多くの犠牲者を出した。
セリーナ達三人は宝具を使った後、力を使い果たして倒れてしまった。混乱の残る神殿よりはグロンブナー公爵家の方がゆっくり療養できるという理由で、久しぶりに家族団欒の時間が作れた。
グロンブナー公爵家に来てから一週間が経ち、大分回復した三人は、大きな窓から庭園を眺められる広いゲストルームでお茶をしていた。
「お姉ちゃん!」
「なぁに、アンナ?」
「んふふ、なんでもなぁい」
神童と呼ばれて、神殿では一目置かれている二人だったが、実はまだ11歳と10歳。
同じ歳の子供よりも大分賢く分別ある二人だが
まだ甘えたい盛り。
久しぶりに会えたセリーナにアンナは甘えていた。
「アンナ、お姉ちゃんはまだ回復してないんだから
無理させるな!」
しっかりものの、兄であるマシューは再会してから
ずっと甘えているアンナを諫めると、セリーナは
クスクスと笑いながらマシューの頭を撫でた。
「マシュー大丈夫よ、ありがとう。
少し見ない内に本当に逞しくなったわ……お父様に
似て来たわね」
「そ、そうかな」
実は自分も甘えたいマシューは恥ずかしがりながらも嬉しそうに顔を緩めていた。
両親が亡くなってから、初めて訪れた平穏な日々に
三人は幸せを感じていた。
グロンブナー公爵家のパティシエが腕によりをかけたスイーツに舌鼓を打っていると、扉をノックする事が聞こえた。
「調子はどうだ?」
入って来たのはディオンだった。
ディオンは暫くの間、グロンブナーとカレンデュラを
行き来していた。
グロンブナーとカレンデュラには古の盟約がある。
「グロンブナー公爵家当主は、君主を選ぶ権利がある」
カレンデュラ国王は、この盟約を正しく理解せず
新たな国王を選ぶ際に選挙権がある位に思っていた。実際には公爵家当主が必要であると判断した際に国王を変える事が出来るという意味であった。
ディオンはこの盟約により国王を捕らえてその地位を剥奪した。そして、全ての指揮を取り復興支援を
行っていた。
「皆さんによくして頂いて元気になりましたわ。それよりもディオン様の方がお疲れではありませんか?」
「俺は大丈夫だ。家族団欒を邪魔して悪いが
マシューとアンナを借りてもいいか?話がある」
「えぇ。マシュー、アンナ。大丈夫?」
マシューとアンナは三人で居た時とは違い、完璧な作法でディオンに挨拶した。
「初めまして、シュペリアン家長男、マシュー・シュペリアンにございます。
グロンブナー公爵様には、姉が大変お世話になりました。ご挨拶が遅れまして誠に申し訳ございません」
「グロンブナー公爵様におかれましてはご機嫌麗しく存じます。末娘のアンナ・シュペリアンでございます。グロンブナー公爵家の皆様に手厚く歓迎頂き
誠に有難うございます」
「そんなに、固くならなくてもいい。
君達はセリーナの弟妹で、国を救った英雄だ
不自由があればなんでも言ってくれ」
穏やかながらも黒い微笑みのディオンと
セリーナとディオンの間に何かあると本能的に察し姉をとられるまいと敵意剥き出しの二人。
バチバチと火花が散っている様なピリついた雰囲気の三人だっだが、セリーナは二人の成長ぶりに目を細めて気づいていなかった。
とりあえず話し合おうと、セリーナを部屋に残して
出て行く三人。
マシューとアンナが帰って来たのは夜も更けた
晩餐前の時間で、ルーナとメリッサに着替えを手伝ってもらい三人はディオンが待つ部屋に向かった。
セリーナは紺色に宝石が散りばめられた、星空の
様に美しいマーメイドラインのドレスを纏い
マシューは淡いブルーに濃い紺色の刺繍がなされた燕尾服を、アンナは同じ色のオフショルダーのプリンセスラインのふんわりとしたドレスを纏っていた。
ディオンは三人が部屋に入ってくると、セリーナを
褒め手の甲にキスをすると席までエスコートした。
ちなみにディオンはセリーナと対のデザインの紺色の燕尾服を纏っていて、二人はディオンを睨みつけた。
穏やかそうに見えて水面下の戦いが繰り広げられた晩餐。
「では、新しい国王はアルミノク様に?」
アルミノクの母は側室で元平民だった。
その事で王宮では冷遇されていたが、腐る事無く
多くの事を学び、国を憂う貴族達と協力して少しずつ
力を付けていたのだった。
マシューとアンナもその事を、聞き協力していた。
「アルミノク様は国を立て直さないといけないから
僕達が新しい聖司教になる事にしたよ」
「え……マシューとアンナが?」
「うん、こんな事もあるかもしれないとアルミノク様から聖司教の仕事を色々と教えて貰っていたの」
平民になってからセリーナが二人に勉強を教えていた。賢い二人は一度教えれば理解して、セリーナが
教えられる事はすぐに無くなってしまった。
学園に通わせてあげられればと何度も思ったが
貧しいセリーナにはどうする事も出来なかった。
神殿の使いが来た時に、マシューが学園に通わせてもらえるか聞いた時には胸が傷んだ。
まだ幼い二人を手放すのは抵抗があったが、神官に
二人の将来を思うならと諭されていた。
ディオン達の話についていけず、半ば上の空で
聞いていたセリーナは、部屋に帰るとマシューとアンナに一緒に神殿で暮らそうと言われて、嬉しかったが
返事が出来なかった。
ベッドに入っても眠る事が出来ず、部屋を出て
少し散歩する事にした。
月明かりに照らされた庭園は幻想的で美しく、庭園の真ん中にあるガゼボにある椅子に座りセリーナは
ボーっと庭園を眺めていた。
ーーディオン様の石化病はもう治った。私の役目はおわったわ……マシューとアンナはまだ幼い。離れていた分二人を支えてあげなくては。
ディオンが負傷した際にセリーナがかけた治癒術は
強力なものだった。
なんと、石化病になる原因まで治してしまい
ディオンはいくら魔術を使っても体に燃えかすの様な
ものが残らないある意味、無敵な体になっていた。
マシューとアンナの側にはいてあげたい、だが
ディオンへの想いは募るばかり。
どうしていいのかわからず、涙が溢れた。
「セリーナ、どうした!大丈夫か?」
突然呼ばれてセリーナは驚いた。
涙で歪む視界の中にディオンが立っていた。
「ディ……オンさま」
ーー泣きやまなきゃ……変に思われるわ。
お願い!涙よ止まって。
「こんな所に薄着でいては風邪をひく。
とにかく屋敷へ戻ろう」
着ていた上着をセリーナに着せると、抱き上げてディオンの部屋へ向かった。
「ディオン様!わたし歩けますわ」
「わかっている。だが、この方が早いから身を委ねてくれないか?」
「わ、わかりました」
恥ずかしそうに顔を赤らめたセリーナは黙って運ばれる事にした。
部屋に着くとディオンは、ソファーにセリーナを座らせると、膝まずきセリーナの手を取った。
「なぜ、泣いていたんだ?」
「少し……感傷的になってしまって。それだけです」
ディオンは涙の理由を聞いてきたが、セリーナは話す事が出来なかった。いつも優しく接してくるディオンに気持ちを伝えられたらと何度も思ったが、そうする事で関係性が変わってしまったらと不安だった。
なんとかはぐらかそうとするセリーナにディオンは
低く抗えないような支配的な声で名前を呼ばれた。
「セリーナ」
ピクリとその声に反応したセリーナは諦めた様子で
話し出した。
「……マシューとアンナに神殿で暮らそうと言われたんです。それで……それであの、嬉しくて。
ディオン様の石化病も、治りましたし……いい、機会だから私も神殿に……」
その先を話そうとすると、また涙が溢れた。
気持ちを察したディオンは強い眼差しでセリーナを見つめた。
「セリーナ、君の本当の気持ちが知りたい。
教えてくれないか?」
これが本当の気持ちです、と言ってもディオンは
許してくれなかった。本心を話したがらないセリーナにディオンは仕方がないと言って、セリーナを抱き上げてベッドへ連れて行き膝の上に座らせた。
「ディ、ディオン様?ダメです!マシューとアンナが
いるのにこんなこと……」
ディオンに抱かれるとセリーナはいつも昼過ぎまで
眠って暫くベッドから起きられない。
同じ部屋に居るはずのセリーナが、ディオンの部屋で眠っていたと知られたら多感な時期の子供に悪い影響を与えてしまうと必死にセリーナは抵抗した。
「君の本心は?君の欲は?教えてくれセリーナ」
そう言うと、ディオンはセリーナの首筋にキスをして両方の乳房を揉みしだき、クリクリと胸の頂きを弄る。
「だめ、やあっ……あと、つけないで……あっ!」
チュッとキスマークをつけようとしてくるディオンに泣いてつけないでと懇願するセリーナを更に攻めたてる。
「そこは、だめ!ディオンさま……やっ、んんぅ!」
乳房にあった手は、セリーナの両足に降りて夜着の
裾を託しあげると、膝裏を持ち足を開かせて
下着越しに花芯を刺激するとビクビクと軽く達して
セリーナは荒い息を吐く。
「君は俺の恩人だ、君の望む事は全て叶えてあげたい
話してくれるか?」
悪魔の囁きの様に甘美に誘惑してくるディオン。
それでもフルフルと頭を振り頑なに拒むセリーナ。
ーー言えない……言って拒まれたら生きていけない。
マシューとアンナはまだ幼い。
せめて成人するまでは支えてあげるの……私は
お姉ちゃんなんだし。
この想いは一生心に秘めておくの。
一度思い込んだら強情な性格のセリーナは涙を流しながら本心を隠した。
その姿を見たディオンは何事もなかったかの様に
セリーナの頬にキスをし、解放するとゲストルームまで
送った。
嫌われてしまったかも、とセリーナは悩みながら
これで良かったのだと自分を納得させる。
だが、中途半端に火をつけられた体を持て余し悶々としたまま明け方近くまで起きていたがいつの間か
眠っていて起きたのは昼過ぎだった。
目覚めると既にマシューとアンナは出かけていた。
昼食の用意が出来ているとルーナとメリッサに呼びに来られ着替えさせて貰った。
みんなが待っている昼食を取る部屋に向かうと
ディオンとマシュー達が揃っていた。
「ごめんなさい、遅れてしまって……」
「病み上がりなのだから仕方がない。気にするな」
「大丈夫?お姉ちゃん」
「無理はしないでね」
いつも通りのディオンとマシュー達の様子にセリーナは安堵して昼食を取る。
「お姉ちゃん、僕達はそろそろ神殿に戻る事にしたよ」
「仕事も大分溜まってるし。今日はアルミノク様が、いらっしゃるみたい。お姉ちゃんともお話しがしたいから一緒に来て欲しいって」
「まぁ、そ……そうなの?私も一度ご挨拶しなければと思っていたの。分かったわ」
「俺もアルミノクに用があるから一緒に行く。
昼食が終わったら魔法陣がある地下で落ち合おう」
まだ、神殿で暮らす決心が出来ていなかったセリーナだが、マシューとアンナがお世話になったアルミノクには挨拶をしておかなければと思い神殿へ行く準備をした。
ルーナとメリッサに着替えさせて貰ったドレスで
行こうと思っていたのだが、聖司教に会うには正装で無ければならないと、セリーナ達は着替えてから神殿に向かう事にした。
マシューと真っ白な生地に金色の細かい刺繍がされたナポレオンジャケットにショートパンツとブーツを纏い。アンナは同じジャケットにタイトなワンピースとパンプスを合わせた。
セリーナはマシュー達と似たデザインの丈が長い
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