【R-18】キスからはじまるエトセトラ【完結】

田沢みん

文字の大きさ
13 / 169

13、俺の彼女になってくれ

 
 ベッドの上で覆い被さってきた天馬は、首を左右に振って逃げる楓花の顔を両手で挟み込んで、激しく口づける。
 角度を変え、湿った音を立てながら、暴れる楓花などお構いなしで唇を吸う。

「ふ……あっ…やっ……!」

 楓花が必死でバタついても胸を押してもビクともしない。天馬が男で自分は女なのだと改めて思い知らされる。全身の力が抜けて行った。

 貪るようなキスを受けながら、楓花の頭の中は情報過多でショート寸前だ。

 欲求不満、身代わり、不倫……そして『アイツを追い掛けて』……。

ーー追い掛ける? アイツって誰? さっき……って、涼太のことを言ってるの? ただ向かい合って話していただけで、どうしてそこまで責められなきゃいけないの?

 楓花が暴れなくなったのを見て、もう抵抗するのを諦めたと判断したんだろう。天馬の右手が頬を離れ、ワンピースの裾をたくし上げてきた。
 手のひらが太腿を撫で、ショーツのクロッチ越しに割れ目をなぞられたところで、楓花は漸く今の状況を思い出す。

ーー駄目だ!このままじゃ本当に不倫になっちゃう!

「嫌っ、やめて!」
「嫌じゃないだろ。感じてるくせに」

 確かに、身体の奥から何かが溢れ出しているのを楓花自身が感じていた。
 きっとショーツまで滲みているのを天馬も気付いているはずだと思うと、カッと耳まで熱くなる。

 指先で秘所を擦り上げ刺激を与え続けていた天馬が、「ふっ」と鼻で意地悪く笑ってから、割れ目の先にある小さな蕾を布ごとキュッと摘まみ上げた。目の前に火花が散る。

「んーーっ、ああっ!」

 思わず悲鳴が上がり、太腿を擦り合わせて身悶えた。

ーーこれ以上進んだら流されちゃう……!

「駄目っ!」

 楓花が全身の力を込めて、思い切り勢いよく天馬の肩を押した。
 天馬も油断していたんだろう。すぐに力が緩んで、今度こそ天馬を押し除けて上半身を起こすことに成功した。
 はぁはぁと肩で荒い息をしながら、天馬をキッと睨みつける。


「さっきから天にいが言ってることが分からない! どうしてこんな事をするの? そんなに私がチョロい女に見えるの? 馬鹿にしないでよ!」

 一気に捲し立てると、勢いに気圧されて一瞬だけ黙り込んだ天馬が、目つきを鋭くして反論してきた。

「実際チョロい女だろう! 何年か振りに帰って来たと思ったら、既婚者になってる昔の男を早速呼び寄せて密会って、何やってんだ!」

「昔の男って何よ!涼太は高校の同級生なの!呼び寄せてもいないし密会でもない!失礼な事を言わないで!」

「高校の同級生で元カレだろっ!人が初デートだと思って必死で診察を終わらせて来たのに、慌てて来てみれば、頬を赤らめて他の男にヘラヘラしやがって!絶対に不倫なんかさせないからな!」

「不倫なんかする訳ないでしょ!天にいこそ奥さんを放ってこんな所に来てていいの?! それこそ不倫だよね!」

「はあぁっ? 結婚してないのに不倫になるわけないだろ! 奥さんって何だよ!何処のどいつだよ!」

「はぁ?!意味分かんない!結婚してないったって……えっ? 結婚……してない?! 」

 楓花が口をポカンと開けて黙り込むと、天馬も眉間にシワを寄せて怪訝な顔をする。

「「 えっ?! 」」

 同時に大声を上げて顔を見合わせると、意味不明な沈黙が訪れた。


「颯太……」

 微妙な沈黙を破ったのは天馬の方で、困惑顔で体を起こし楓花から離れると、ベッドの上で胡座をかく。
 楓花も体を起こして正座で向き直ると、天馬が頭痛でもするかのように右手を額に当てて、口を開いた。


「あのさ……ちょっと確認させて欲しいんだけど…… いつから俺は既婚者になったの?」
「えっ? …… あの……一体いつなんでしょう? 」

「はぁああ? お前、何言ってんの? 俺は過去に一度たりとも結婚したことも妻を持ったことも無いんだけど」

「えっ、だってお兄ちゃんが」
「大河? アイツが何か言ったのか?」

「お兄ちゃんの結婚式の日に…… 天にいが近いうちに見合い相手と結婚するって…… 」
「はぁっ?」

 それを聞いた途端、天馬が肩をガックリ落として、両手で頭を抱え込んだ。

「くっそ~、大河の野郎……!シめる!アイツ絶対に絞め殺す!」

ーーええっ、天にいが結婚してないって……それじゃあ独身?!

「良かった~!だったら不倫じゃない!」
「いや、楓花、それじゃお前の元カレは……」

 会話がチグハグなまま、だけど楓花には、もう一つ非常に気になっている事があった。

 「それよりも……天にい、さっきデートって言った?」
「えっ?!」

 言われた途端、天馬がギクリとして、頭に乗せていた両手で顔を覆って……。

「……言った。俺的にはデートのつもりだった。いや、告白して初デートにするつもりだった……」

 そして顔をバッと上げると、 真っ直ぐに楓花を見つめて、猫のような瞳を一つゆっくり瞬きさせて……。

「颯太、俺の彼女になってくれ」

 ハッキリと言い切った。
感想 209

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味