「私だけを」

いとま

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「私だけを」

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 私に痣をたくさん付けてと彼女は言う。
そんなにまだらな君は可愛くないよと
僕は否定する。でも彼女はあなただけの
私になりたいの。と真剣な顔で言う。
それに続けて「だって」と言葉を続ける。
だってあなたに抱かれた証明が欲しいの。
と彼女は自分の首筋を僕の口元へ寄せ
吸って。と無理に合わせてくる。

僕は半ば難しい顔をしながら皮膚の
吸われて出る高い音で彼女の幸せそうな
顔を眺めながら1つ痣を作った。
そしてその痣を見て僕が一歩後ろに下がった時に、彼女は僕にキスをした。舌を入れ
自分の手で輪っかを作るように僕を
包んで動けないように支配して、時に
吐息を漏らしながら何度も何度も僕の唇を支配した。そしてその拘束が解けた時に。
彼女は服を脱ぎ、下着姿になり、両手を広げ

「早く私に、私にしか出来ないあなたの印をちょうだい?私だけを特別にして?」

と潤んだ目の彼女は言い終えると
僕に近付き、先程とは正反対の
優しい抱擁を僕にした。僕はその
痣がひとつ着いた彼女の白い綺麗な肌を
見ながら優しく抱きしめた。
そして彼女の顔を見て、優しくキスをした。
僕は彼女にしか付けることの無い
僕の証明を体全体につけることにした。
もうその綺麗な白い肌のキャンバスに
余白が無くなるぐらいに。
首、胸、腕、お腹、背中、足
至る所に僕を証明する痣を付けた。
彼女だけを特別にする為の痣を。
彼女はとても幸せそうな顔をして痣をつける度に、噛み締めるように喘いだ。
その一つひとつがちゃんと私だけのものになったと確認するように。
下着姿の彼女は痣だらけになり
とても幸福に満ちた表情で仰向けに倒れた。
そしてその脱力した彼女の顔を覗き込むと
左手で僕の右頬を優しく撫でた。
少しニコッとして、口を開いた。
「私だけを見てね。」
彼女は僕にそう言った。
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