死神になった日

いとま

文字の大きさ
上 下
23 / 25
23日目

誕生日、そして

しおりを挟む

どんな人にも平等に生を受けられ
どんな人にも平等に死を向い入れる。
それはいくつになっても考えられること
早いか遅いかはその人しだい。運命次第。

終戦してからというもの
骸を見つけるきっかけは、骸から
放たれる死臭。つまり【死の匂い】を
感じ取れるようになった。
今までは骸限定の事だったが
最近は死が近い者に対しても【死の匂い】が
漂ってくることが多くなった。そう、
今の目の前の子も例外ではない。

それが起きたのはすぐの事だった。
噂を聞き付けた日本兵が
ドカドカと家に入ってきて
赤ん坊を取り上げた。

母親となったその人は泣き叫ぶ
その結末を知っているかのような
悲痛な叫び。俺も止めることは出来なかった。

すぐに母親だった者はその後を追いかけて
最愛なる人との間にできた、青い目の最愛の子を探した。さっきの日本兵が不敵な笑みを浮かべ通り過ぎる。まだ白い綺麗な肌だったのが、赤く鈍い色のマダラ色になって
赤ん坊だったモノは骸になっていた。

最愛の人を2度も失った悲しみ。
彼女の目からは悲しみよりも強い憎しみが
目から出てくる涙と唇を噛み締めた血となって滴る。そして一言、【死を持って償え!】
そう叫んだ。俺は、彼女の意志を肌で感じとって、まだ誕生を迎えたばかりの命を
埋葬した。

これは死神と呼ばれる日までの記録。
死を慈しむカミサマのお話。
しおりを挟む

処理中です...