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どうやら私は恋敵ポジションに転生していたらしい

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「よりにもよって、ヒーローの幼馴染でヒロインにマウントとる嫌な女ポジション……!」

少女漫画の世界に転生していた。

時は現代。舞台は日本。ごく普通の一般家庭。世界観からして、悪役令嬢に転生というテンプレでないことは明らかだった。
だからこそ、前世の記憶を持ったまま転生してしまっただけなのかな。そんなこともあるよね。なんて軽く考えて生きてきた。

それなのにまさか、少女漫画の世界に転生だったなんて。



『斎藤家の長女になりまして』
ある日親の再婚で突然兄弟が3人も出来てしまった女子高生がヒロイン。理知的な長男、斎藤蒼真そうま。クールな次男、斎藤匠真たくま。やんちゃな三男、聖真しょうま。イケメン三兄弟と近所や学校でも有名な斎藤家での生活は波瀾万丈でーーー!?
なんて話だった気がする。

逆ハーレム的な展開ではあったけれど、メインヒーローは次男。斎藤家の隣には次男と同い年の女の子で三兄弟の幼馴染、斎田奈々心ななみが住んでいて彼女は恋敵ポジション。それが私だ。
小さい頃にした結婚の約束だとか、小さい頃にした初チューだとかをヒロインに自慢したり、あなたの知らない匠真を私は知ってるのよマウントを取ったりとしていたらしい。
というのも、私はそもそもこの少女漫画を読んだことがない。前世の幼馴染が読んでいて、幼馴染厨の彼女はヒロインよりも絶対に奈々心の方が可愛いし三兄弟にお似合いなのにと泣きながら読んでいた。終いには私が奈々心を幸せにする!!と意気込んで同人誌まで描いていた。完成したら一番初めに読ませてあげる!なんて言われたけど、完成する前に私は事故で死んで転生してしまったという訳だ。

「こいつ、姉ちゃんになった。俺らと同じで高二。明後日から学校も同じだから仲良くしてやって」
「はっはじめまして!香澄かすみです!」
「えっあっ、よ、よろしく??」
「んじゃ、姉ちゃん帰ってて。奈々心とテレビ見てから帰る」
「分かった!何時頃帰ってくる?」
「や、危ないから一緒に帰りなよ?」
「危ないって……家すぐ隣だけど」
「いつも私のこと送ってくれるじゃん!?」

めんどくさ。と顔に書いてある匠真と香澄ちゃんを追い出して冒頭のセリフに至る。
というか私、早速マウント取るような発言してしまったのでは……。いやでもいつもすぐ隣なのに危ないと言って必ず私が家に入って、部屋の窓から手を振るまで外で待ち続ける男だよ?斎藤兄弟みんなそんなだから素敵な紳士に育ててくれた斎藤パパは尊敬の極み。

それにしても私はこれからどうするべきなのか。少女漫画の通りにヒロイン、香澄ちゃんにマウントを取る嫌な女になるべきなのか。

「無理すぎる……」
「何が?」
「えっ!?」
「何が無理なの?」
「や、てか、え?香澄ちゃんは?」
「家に入れてきた」
「テレビ見るんじゃなかった?」
「奈々心と一緒に見るって言った」
「いやそれはもう家で見なよ……」
「やだ」

そう言ってさっさと二階に上がってしまった匠真を追いかける。結局、私の部屋で去年話題になってたホラー映画の地上波発放送を見ることになってしまい、私はひたすらに目を瞑り苦痛の二時間を過ごしたのである。
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