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菫責め 一
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調教、という言葉が重く残酷に頭に響いてくる。アベルは首を振っていた。
「い、いやだ! よ、よるな」
くくく。くすくす。ふふふ……。
三人の少年たちは、まるでアベルを追い詰めるようにじりじりと寝台に近づいてくる。
「後宮には、そなたのように異国から売られてきた奴隷もおる。そ奴らは、なかなか言うことを聞かず逆らうものだ。そういった聞き分けのない新米奴隷を調教する役目をになうのが、カイたちのような若手宦官じゃ。彼らのことをグラリオン後宮では〝菫〟と呼びならわしておる」
いつの間にか側に立っていたハルムがしたり顔で説明した。
「わ、私は売られてきたわけではない! 奴隷でもない。今すぐ私を解放しろ! 今ならまだ間にあうぞ。このことは帝国には報告せずに、なかったことにしてやる」
床を犬の真似をさせられ這わせられたことは死んでも許せないが、すくなくとも今ならまだなかったことにできる。まだ身体を汚されていない今なら。アベルは息を飲んでハルムを睨んだが、相手は鼻でせせら笑った。
「つくづく聞き分けのない奴隷じゃ」 やれやれ、というふうに首を振る。
「この聞き分けのない奴隷をどれだけ飼い馴らせるか、カイ、菫の筆頭として、おまえの手腕の見せどころじゃぞ」
王の言葉にカイと呼ばれている少年宦官は頬を薔薇色に染めて黒目をかがやかせた。
「おまかせください、陛下。アルベニス伯爵は、十日もすれば、陛下をお喜びさせられるようになるでしょう。少々気が強そうなので、手こずるかもしれまんせが、それでも……庭の鳳凰木の花が満開になるころには、ご自分から進んで〝お馬乗り〟をしたがるようになるでしょう」
この言葉にエリスとアーミナは肩をくすめて笑い、王はややわざとらしげに眉を丸め、アベルは怒りのあまり吊り上げられている両手を握りしめた。あまりにも強く握りしめたので、爪が食いこみ皮膚が切れそうになったほどだ。
「そうか? それは楽しみじゃ」
「では、カイよ、早速、調教に入ると良い」
「かしこまりました。では、」
「おい! 何をする! 近づくな!」
くすくす……。エリスとアーミナの二人がまた肩をすくめて笑う。この二人は名前も女性的だが、仕草も表情もどこか女性めいている。男性性器を喪失したことが影響しているのかもしれないが、おなじ宦官とはいえ、カイは眉が濃く、顔立ちも逆三角形で少年らしくひきしまって見える。
「おい! やめろ、よせ!」
「うわぁ、真っ白な肌だ」
エリスが細い、それこそ女のようにかぼそい手でアベルの胸に触れてきて、面白い玩具でも見つけたように、その白肌を揉み、二つの突起を摘まみあげた。
「い、いやだ! よ、よるな」
くくく。くすくす。ふふふ……。
三人の少年たちは、まるでアベルを追い詰めるようにじりじりと寝台に近づいてくる。
「後宮には、そなたのように異国から売られてきた奴隷もおる。そ奴らは、なかなか言うことを聞かず逆らうものだ。そういった聞き分けのない新米奴隷を調教する役目をになうのが、カイたちのような若手宦官じゃ。彼らのことをグラリオン後宮では〝菫〟と呼びならわしておる」
いつの間にか側に立っていたハルムがしたり顔で説明した。
「わ、私は売られてきたわけではない! 奴隷でもない。今すぐ私を解放しろ! 今ならまだ間にあうぞ。このことは帝国には報告せずに、なかったことにしてやる」
床を犬の真似をさせられ這わせられたことは死んでも許せないが、すくなくとも今ならまだなかったことにできる。まだ身体を汚されていない今なら。アベルは息を飲んでハルムを睨んだが、相手は鼻でせせら笑った。
「つくづく聞き分けのない奴隷じゃ」 やれやれ、というふうに首を振る。
「この聞き分けのない奴隷をどれだけ飼い馴らせるか、カイ、菫の筆頭として、おまえの手腕の見せどころじゃぞ」
王の言葉にカイと呼ばれている少年宦官は頬を薔薇色に染めて黒目をかがやかせた。
「おまかせください、陛下。アルベニス伯爵は、十日もすれば、陛下をお喜びさせられるようになるでしょう。少々気が強そうなので、手こずるかもしれまんせが、それでも……庭の鳳凰木の花が満開になるころには、ご自分から進んで〝お馬乗り〟をしたがるようになるでしょう」
この言葉にエリスとアーミナは肩をくすめて笑い、王はややわざとらしげに眉を丸め、アベルは怒りのあまり吊り上げられている両手を握りしめた。あまりにも強く握りしめたので、爪が食いこみ皮膚が切れそうになったほどだ。
「そうか? それは楽しみじゃ」
「では、カイよ、早速、調教に入ると良い」
「かしこまりました。では、」
「おい! 何をする! 近づくな!」
くすくす……。エリスとアーミナの二人がまた肩をすくめて笑う。この二人は名前も女性的だが、仕草も表情もどこか女性めいている。男性性器を喪失したことが影響しているのかもしれないが、おなじ宦官とはいえ、カイは眉が濃く、顔立ちも逆三角形で少年らしくひきしまって見える。
「おい! やめろ、よせ!」
「うわぁ、真っ白な肌だ」
エリスが細い、それこそ女のようにかぼそい手でアベルの胸に触れてきて、面白い玩具でも見つけたように、その白肌を揉み、二つの突起を摘まみあげた。
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