紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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背徳の洗礼 五

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「……男でもそうだった。下劣な連中だ」
 その様子を見ていたリカルドは、それ以上交渉する意欲をうしなったという。しかも、不幸なある人質は、プレゼントだといわれ、肛門に金箔を張った張型を入れられ、その張型の代金まで身代金に上乗せさせられという。
 そして、迎えにこさせたのはやはりその国の軍人で、彼の部下だったというから、人質の精神的打撃ははかり知れないだろう。
「その人質、将校だったから、よけい辛かったと思うよ。部下にあんな格好見られるなんて」
 アレクサンダーはまたぎょっとした。
 とうてい彼らを説得し、祖国に連絡して身代金を用意させようなどという気にはならない。
 第一、交渉で返す人間の選別はすでに終わっているようで、リカルドや自分はすでに返されない方に分けられているようだ。
「いったい何者なんだ?」
「僕もよくわからないけれど、莫大な富と力をもっていることはたしかだよ、奴らの組織は」
 リカルドの湯気にかすんだ水色の目が、扉付近に建つ見張りの兵士に向けられた。目にはかすかに絶望がちらつく。
「これから僕たちはどうなるんだろう?」
 獅子の石像の口からあふれる湯をすくい、身体を洗うふりをしながらリカルドは低くつぶやく。
 アレクサンダーも、湯を身体にかけながら答えた。
「とにかく、隙を見つけて逃げないと。私は必ず逃げ出す」
 すぐそばにいるリカルドの自分より若い身体が、アレクサンダーは急に眩しく感じた。
 文科系の学生だが、リカルドは決してひ弱に見えない。胸の筋肉も立派である。おなじ年頃の軍人とくらべても遜色ない体躯である。
 アレクサンダーは自分がかなり緊張していることに気付いた。
 その緊張の理由がリカルドの若い肉体なのかと思うと、恐ろしくなってきた。
 男の肌など、学生時代にも軍隊に入ってからも、嫌となるほど見てきたはずだ。
 だが、以前と今とでは違うのだ。見ているアレクサンダーの身体が違うのだ。
 逃げなければ……。
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