紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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虹の間 二

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「けしからぬ奴じゃ、鞭で殴ってやろうかの? のぅ、マヌエル」
 いつの間にか、扉のところにマヌエルが立っていて、アレクサンダーを驚かせた。いろいろあって動揺しているとはいえアレクサンダーも軍人である。気配を察せなかったとは……。
 アレクサンダーは一瞬忸怩たるものを感じたが、今はマヌエルよりもピロテスという異形の女主が気になる。
「まぁ、来たばかりじゃゆえに、ここの道理や礼儀がわからぬのも無理もない。今だけはゆるそう。白蓮よ、よく聞け」 
「白蓮と呼ぶのはやめてくれ。私の名はアレクサンダー=フォン=モールだ」
「今のおまえは白蓮なのじゃ」
 ピロテスは冷たく言いはなつ。
「その、白蓮というのは、いったいなんなのだ?」
「ピロテス様に向かってそのような言葉づかいをしてはいけません」
 マヌエルが低い声でささやくように言うが、アレクサンダーは無視した。
「白蓮というのは、〝暁の儀式〟で殿下の相手をつとめる者じゃ」
「相手?」
「神の前でまぐわう……まぁ、いわば一夜妻じゃな」
「なっ!」
 まぐわうーー。一夜妻――。
 アレクサンダーは硬直した。意味がのみこめず、聞きまちがいか、ピロテスの英語がまちがっているのではないかと疑ったが、ピロテスはふたたび、派手に赤く塗っている唇でその言葉を吐いた。
「一夜妻じゃ。わからぬのかぇ? 一夜だけ神の前で咲く白い蓮の花。異国人のおまえが殿下の一夜妻になるのじゃぞ。光栄に思え」
 一瞬、思考が止まった。そのあと、激しい怒りと羞恥で全身が爆発しそうになった。
「な、なにを言っている? 私は男だぞ! お、男が妻になれるか!」
 アレクサンダーは自分の頬が熱くなっていることを自覚した。いや、頬だけでなく全身が熱い。
「この館では男も女も関係ないのじゃ。すべては殿下の御心のまま。そしておまえは白蓮に選ばれたのじゃ。供物にされた者たちに比べれば、幸いだったのじゃぞ。それもわからぬのか」
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