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闇の国 四
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まさか、と叫びたいのをアレクサンダーは堪えた。
「あなたのように聞き分けが悪く、あくまでも逆らいつづけた人質がいました。やはり欧州の貴族の娘だったとか。ピロテス様は業を煮やして彼女のあられもない……口に出すのもはばかられるような写真を実家や彼女の周囲の人間に送りつけたのです」
なんという陰湿で卑劣なやり方だろう。アレクサンダーは胸が悪くなる。
「そのうえで彼女の目をつぶし、歯を抜き、なにも見えず喋れないようにして下町の売春宿に送りこんだのです。喋りづらくするため、なぜ、舌を抜くのではなく歯を抜いたのだと思いますか? その方が男の相手をするのに便利だからですよ」
アレクサンダーは一瞬、意味を考えねばならなかった。そしてその理由を、昨夜自分がピロテスから受けた行為を思い出して理解し、嘔吐めいたものを感じる。
「生きていれば今でもそこで最下級の男たちの相手をしていることでしょう。もはや貴族の令嬢とも、いえ、人とも呼べないような者になり果ててね」
マヌエルの口調は淡々としており、いっそう残酷さがきわまる。そんな非道をなんとも思っていないのだ、ここの連中は。
しかも、アレクサンダーを誘拐して、この館に幽閉できるだけの力をもつ連中だ。自分をそんな目に遭わせるかもしれない。本当にアディーレをさらうかもしれない。もしかしたらカールたちの身に危険がおよぶかもしれない。おぞましい仮定を連想しつづけアレクサンダーはさすがに恐怖を感じた。
なんという恐ろしい、おぞましい連中に狙われたのか。今更ながらにぞっとした。
「さぁ、解ったなら食事を取って準備をしてください。午後から今日の調教がはじまりますよ」
「そ、そんなもの、受けるいわれはない!」
叫んだところで無駄だと知っても、それでも叫ばずにはいられなかった。
マヌエルは憐れむような微笑を向けた。
「じきに慣れますよ。では、あとで」
「おい……!」
それ以上は何も言わずマヌエルは背を向け去っていく。扉の開閉する音がひびき、ふたたびアレクサンダーは豪奢な室のなかに一人閉じ込められることになった。
今何時だろう、とぼんやり思ったが、見回しても時計は見当たらない。
(調教だと、ふざけるな!)
内心唾棄したものの、時は止まらず、逃げることもできず、アレクサンダーはふたたび、そのときがきて、拷問者たちがあらわれるのを待つことしかできなかった。
「あなたのように聞き分けが悪く、あくまでも逆らいつづけた人質がいました。やはり欧州の貴族の娘だったとか。ピロテス様は業を煮やして彼女のあられもない……口に出すのもはばかられるような写真を実家や彼女の周囲の人間に送りつけたのです」
なんという陰湿で卑劣なやり方だろう。アレクサンダーは胸が悪くなる。
「そのうえで彼女の目をつぶし、歯を抜き、なにも見えず喋れないようにして下町の売春宿に送りこんだのです。喋りづらくするため、なぜ、舌を抜くのではなく歯を抜いたのだと思いますか? その方が男の相手をするのに便利だからですよ」
アレクサンダーは一瞬、意味を考えねばならなかった。そしてその理由を、昨夜自分がピロテスから受けた行為を思い出して理解し、嘔吐めいたものを感じる。
「生きていれば今でもそこで最下級の男たちの相手をしていることでしょう。もはや貴族の令嬢とも、いえ、人とも呼べないような者になり果ててね」
マヌエルの口調は淡々としており、いっそう残酷さがきわまる。そんな非道をなんとも思っていないのだ、ここの連中は。
しかも、アレクサンダーを誘拐して、この館に幽閉できるだけの力をもつ連中だ。自分をそんな目に遭わせるかもしれない。本当にアディーレをさらうかもしれない。もしかしたらカールたちの身に危険がおよぶかもしれない。おぞましい仮定を連想しつづけアレクサンダーはさすがに恐怖を感じた。
なんという恐ろしい、おぞましい連中に狙われたのか。今更ながらにぞっとした。
「さぁ、解ったなら食事を取って準備をしてください。午後から今日の調教がはじまりますよ」
「そ、そんなもの、受けるいわれはない!」
叫んだところで無駄だと知っても、それでも叫ばずにはいられなかった。
マヌエルは憐れむような微笑を向けた。
「じきに慣れますよ。では、あとで」
「おい……!」
それ以上は何も言わずマヌエルは背を向け去っていく。扉の開閉する音がひびき、ふたたびアレクサンダーは豪奢な室のなかに一人閉じ込められることになった。
今何時だろう、とぼんやり思ったが、見回しても時計は見当たらない。
(調教だと、ふざけるな!)
内心唾棄したものの、時は止まらず、逃げることもできず、アレクサンダーはふたたび、そのときがきて、拷問者たちがあらわれるのを待つことしかできなかった。
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