紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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闇の撮影会 三

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「へ? お、俺もですかい?」
「そうじゃ。おまえも服を脱ぐのじゃ」
 さすがにハサピスの顔に困惑が浮かんだが、すぐに卑屈な笑みを見せて、着ていた警備兵の制服を脱ぎにかかった。慌てて脱ぐその姿はどこか滑稽だ。
 アレクサンダーはこれからわが身に起こることを想像して、嫌悪にかられて、無駄だとわかっていても叫ばずにはいられなくなる。
「よせ! やめろ! 私は絶対にしない!」
 ピロテスが呆れたように、うんざりしたように眉を寄せる。
「うるさいのぅ。少しは大人しくなったかと思うと、またじゃじゃ馬になりおって。どうしたらこの高慢な奴隷を聞き分けよくさせられるものかのぉ」
「へへへ、俺がお手伝いしますよ」
 ハサピスの笑い声に激しい嫌悪を感じたアレクサンダーは憎悪と侮蔑をかくすことができなかった。
 相性が悪いというのか、一目見たときから、この下層階級の男には妙な厭悪感をおぼえた。
 たんに自分を拘束した敵方の人間だからというだけでなく、もともと人間的に馬が合わないものがあったのだろう。やはり好きになれなかったヴルブナを思い出させるところがあるからかもしれないが。
 その男が、こともあろうに、自由を奪われた今の状況でふたたび顔を見せ、憎いピロテスにおもねて自分をいたぶろうとしているのだ。
 アレクサンダーの嫌悪感は否応なしにつのる。
「ほほほほほ。安心せい。ただ写真を撮るだけじゃ。さぁ、こちらへ来るがよい。これ、何をしておる、ハサピスとやら。それも脱がぬか」
「こ、これもですか?」
 ハサピスはすでに下着姿になっていた。最後の一枚もピロテスの命によって脱ぐ。さすがに照れくさそうだが、もともと下流の男社会で生きてきた男だけあって、羞恥心はそれほど持ちあわせていないのだろう。人としての恥を一生学ばずに死ぬ人間も、世間には多い。
 アレクサンダーの方がおぞましさと羞恥に目を逸らしたくなった。
 黒い体毛におおわれたハサピスの身体は、太っているわけではないのに全体にしまりがなく、下腹はすでにたるんで見える。鍛えていた頃もあったのだろうが、放逸な生活のなかでしまりのない身体になったようだ。過度の飲酒と喫煙のせいか肌の色はひどく悪い。
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