紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

文字の大きさ
101 / 298

宝玉遊戯 一

しおりを挟む
 内心うんざりしながらも、中身をかくすような丸い蓋クローシェに気を引かれてアレクサンダーの目は強烈に引かれてしまう。
 慇懃なウェイターのようにマヌエルがクローシェを取ると、小さく閃光がきらめいた。
 マヌエルは、まず主のピロテスに見せるようにしてから、これみよがしにアレクサンダーにも見えるように盆をかたむける。
 美しい白、黒、紅、青、緑、桃、紫と七色の玉が揺れて、極上の果実のように銀盆上で輝いている。爪ほどのものもあれば、鶏卵ほどのものもあり、よく見ると、なかには細い紐のようなもので二つか三つ、四つとつながれているものもある。
 なぜかアレクサンダーは、その輝く貴石を見た瞬間、首の後ろを小針で撫でられたようなちいさな痛みと不快感をおぼえ、申し訳ていどにかけてあったガウンで、我が身をつつむようにして無意識に自分を守ろうとしていた。
 その燦然と輝く宝玉に、どこか不気味なものを感じてしまうのだ。
「美しいものであろう? 妾は宝石では丸い石が好きでのう。気に入った宝石はかならず丸く作らせるようにしておる。遊ぶには持ってこいじゃからな」
 言葉に匂う妖しい意味を感じ取って、アレクサンダーの悪い予感はたかまる。
「ほほほほ。どうやら何をするかわかっておるようじゃのう」
「な、なにをする気だ?」
 言う必要もないことを言ってしまってからアレクサンダーは唇を噛む。
「ほほほほほ。わかっておるくせに。安心せい、最初は小さなものから初めてやる。これで感度をたかめて、すこしずつ大きいものにしていくのじゃ。楽しみやすくなるぞ」
 意味するところを完全に理解してしまうと、アレクサンダーは絶叫していた。
「や、やめろ!」
 叫んだと同時に、身体の中心で、ずくん、となにかが蠢くような錯覚がした。
「ほほほほ」
 ピロテスはどきついほどに紅く塗っている爪先で小さな桃色の石をもてあそぶ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

少年達は吊るされた姿で甘く残酷に躾けられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

処理中です...