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淫花開花 三
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アレクサンダーはどうしても往生際わるく、逃れようとしてしまう。
「ほら、いい子にして、口を開けて」
ヴルブナの口調は、幼児をさとすように甘い響きを帯びていた。
「そこだ、そこに……舌をあてがえ」
閉じたアレクサンダーの瞼から流れるものが、彼の頬を濡らす。マヌエルはその横顔の美しさに見惚れそうになった。
「う……」
シャンデリアが作りだす元上官と部下の二つの影は、しばしの攻防戦のあと、やがてひとつになった。
「ああ……。すげぇ! あんた、素質あるな。……うう。ああ! モール少佐が俺のを舐めてる。生きていて良かったぜ」
言葉には揶揄がこもっているが、ヴルブナの顔はまぎれもなく輝くような歓喜にあふれている。
「うう……。うっ……。おおっ!」
肉体の中心そのもので交わることができない分、ヴルブナはべつの形でアレクサンダー=フォン=モールを征服し、交わったのだ。
「ふむ」
ピロテスは納得したように扇を一振りした。
「あの誇り高い男が、元の部下に嬲られるなど、相当こたえたであろうな」
口調には痛快さがしのばれ、いっそうピロテスの残酷さがつたわってくる。
「ええ。かなり痛手だったと思います」
だが、ことが終わったあと、アレクサンダーは口腔のものをベッドの上に吐き捨て、涙に濡れた目でヴルブナを睨みつけたのだ。
そしてヴルブナは怒るどころか笑っていた。
「……そろそろ殿下の御前に出すとするかぇ」
一瞬、マヌエルは鼻白んでいた。
「調教は終了ということですか」
マヌエルの問いに、「まさか」というふうにピロテスが首を振る。
「まだまだ。これからもどんどん調教し、開発していくつもりじゃ。だが、ものには時機というものがあるゆえ、これぐらいのところで一度殿下にお会わせしておこうと思っておるのじゃ」
この場合の、お会わせする、という言葉には、たんに顔を見せるだけではないことは充分にわかる。
「ほら、いい子にして、口を開けて」
ヴルブナの口調は、幼児をさとすように甘い響きを帯びていた。
「そこだ、そこに……舌をあてがえ」
閉じたアレクサンダーの瞼から流れるものが、彼の頬を濡らす。マヌエルはその横顔の美しさに見惚れそうになった。
「う……」
シャンデリアが作りだす元上官と部下の二つの影は、しばしの攻防戦のあと、やがてひとつになった。
「ああ……。すげぇ! あんた、素質あるな。……うう。ああ! モール少佐が俺のを舐めてる。生きていて良かったぜ」
言葉には揶揄がこもっているが、ヴルブナの顔はまぎれもなく輝くような歓喜にあふれている。
「うう……。うっ……。おおっ!」
肉体の中心そのもので交わることができない分、ヴルブナはべつの形でアレクサンダー=フォン=モールを征服し、交わったのだ。
「ふむ」
ピロテスは納得したように扇を一振りした。
「あの誇り高い男が、元の部下に嬲られるなど、相当こたえたであろうな」
口調には痛快さがしのばれ、いっそうピロテスの残酷さがつたわってくる。
「ええ。かなり痛手だったと思います」
だが、ことが終わったあと、アレクサンダーは口腔のものをベッドの上に吐き捨て、涙に濡れた目でヴルブナを睨みつけたのだ。
そしてヴルブナは怒るどころか笑っていた。
「……そろそろ殿下の御前に出すとするかぇ」
一瞬、マヌエルは鼻白んでいた。
「調教は終了ということですか」
マヌエルの問いに、「まさか」というふうにピロテスが首を振る。
「まだまだ。これからもどんどん調教し、開発していくつもりじゃ。だが、ものには時機というものがあるゆえ、これぐらいのところで一度殿下にお会わせしておこうと思っておるのじゃ」
この場合の、お会わせする、という言葉には、たんに顔を見せるだけではないことは充分にわかる。
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