Re‘AngelBody=SoCute!! ~タルトと土操兵とリハビリ天使~

鴛海 好明

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Story_3:仮の身体を

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Re‘AngelBody=SoCute!! 3話

そのつぎのおはなし。

 そらにはてんしさまがおられます
 じごくにはあくまがいます

 あくまはかしこくつよくざんこくで
 てんしさまはたたかってあくまをたおします

 にんげんをまもってくださる
 かみのつかい

 でも、それだけのこころで
 てんしさまはいるようではないようなのです

 あるてんしさまがあくまにまけました
 そのかたのなまえはルルジュ

 てんしとしてはじるべきはいぼくをきっした
 そのかたはやまいにおかされました



Story_3:仮の身体を

「おい、どうだタルト」

 あ、師匠が帰ってきた。紙袋にバゲットとか、キャベツとかハムとかをいれて。街に買い物に行っていたんだな。

「うん、師匠。思わしくないよ、このお姉さん。全身が紫に腫れて熱をすごく持っているし、咳をすると真っ赤な痰が出る。かわいそうだけど、もう持たないのかな……」
「とりあえず、これを切ったり擦ったりしてあたえてみろ。病人の看護はそいつが生きかえるか、死ぬまで続けるもんだしな」

 そういって、みかんやアップル、ほかにもキウイとか。すごくいっぱいの果物を紙袋から出す、なんだろうきっと優しい人なんだよね、という態度をとる師匠だった。

「それから。突貫作業で作るから。そのねーちゃんが落ち着いたら俺の工房に来い、タルト。手伝え。高品質医療ケア用スペア全身義体を作るぞ」
「え?! あれはだって! 貴族や有力者や政治家にしか売らない高級義体なんじゃないんですか? 師匠言ってたじゃないですか?」
「ふん。だからこそだ。タルト、お前のその翼が生えたねーちゃんがどういう種族か知っているのか?」
「え?鳥人間バードマン族のお姉さんじゃないんですか?」
「このくそトンチキ!! そのねーちゃんは天使エンジェルだよ」
「え? あの聖書に書いてある天使様なんですか?」
「おそらくはな。異常に見目麗しい。こんな美貌は、亜人類のバードマンには持てないぞ」
「そんな、すごい存在なのか……。じゃあ、なんでこの人がこんなことに?」
「ふん……。悪魔に敗北でもしたのだろう。常に強化と鍛錬を生存のために己に課している悪魔たちの中には、時折とてつもなく強い存在も現れる。それにぶち当たったんだろうさ、この天使のねーちゃんはな」
「……どういう負け方をしたら、こんな風に。全身の筋肉が紫色に……?」
「ふん、お前は知っているはずだ。よく考えてみろ、この色。どこかで見たことがあるだろう?」
「え?」
「鈍いガキだぜ、まったく。お前は失敗しただろ? 生粘土に無理やり粉粘土練りこんでだ。だいぶ前だけど、あの時の色に似てるだろ?」
「あ! あああ!! あの、粘土が腐っちゃう配合の時の色だ!!」

師匠は。そこで煙草を一本取り出して、火をつけて深く吸った。

「あの粘土の反応はな? 精神霊体拒絶反応、っていう現象だ。極度に強いものと、極度に弱いもの。粒子も人もだが、それが。混合を拒絶するわけなんだが……な」
「……」
「おまえ、俺のゴーレム、フィアスティッジの製法を知りたがっていたな? 教えてやろうか?」
「……?!」
「二種の粘土の混合に、必要な媒介がある。カインドリキッド、っていうシロモノだが」
「え? そんな便利なものが売ってるの?」
「……売買は禁止されている。なにせ……、あれはな」
「え? え? なんで黙り込んじゃうの? エルデス師匠?!」
「……優しい心を持つ人間の、血液なんだ」
「血……? だって?! じゃあまさか! 師匠が昔、将軍としていたカルトネル王国のゴーレムの強さの秘密……は?!」
「勘がいいな。当たってるぜ。お前の生まれた村のような、心優しい人たちを狩り殺して。血を得ていたのさ、あのなんちゃって軍事大国はな!!」
「……!! じゃあ、師匠のフィアスティッジもその血で作ったんですか!!!」
「うるせえクソガキ!! フィアスティッジに使ったのは俺の血だ!!」

 ぼくは。すごく怒っていた。怒りすぎて、かえって冷静な声が出た。

「……だから?」
「ふん。お前の勘の良さは、俺は好きだぜ。そうだ、だからだ。俺は我慢の限界だった。国を守るためと。自分に言い聞かせてもだぞ? 敵でもない、無辜の民を殺して!! 戦力などとして、そんな腐れた思想で束ねた国は!! 決して天下などとれるわけがないだろう!!」

 そんな風に。僕より激しい怒りに包まれている、師匠を見て僕はびっくりした。だって、強い側の人が。
 弱いものを殺したくないと思っているなんてことは、僕は人生で初めて聞いたから。

「……師匠は。善人ではないけど、悪人でもないんですね……」
「ふん。俺は善人見習いだ。いいか? タルト。人は力を持つ前の偽善者から、力をもって暴れる悪人に育つ。だが、その先には力を用いることができる善人の道がある。俺は。お前を助ける勇気があったから。初めて悪人を卒業できたんだ。タルト。お前がいたからだ」
「そんなこと言ったって。たくさんの人の血を使って。兵器のゴーレムを作ってきた罪は消えないさ!!」
「ふん、そうさ。そうだがお前は大切なことを知らない。人を犠牲にしてしまった人間にしか。本当の善人にはなれない。そうだろ? 人を踏みつけた痛みを知らないで、力の制御などできるほど。人間の心の出来は良くないんだよ」
「そんなの!! 最初っからわかっとけよ!! 大人だろあんた! えらい将軍様だったんだろ!!」
「……タルト君。将軍ってのはな、そのほとんどが子供よりバカなんだよ。多くの死を見て、多くの戦いを見すぎて。心が死んじまってるんだ……!」
「そんなバカたちが! 大きな力を! 人を殺せる、いっぱいいっぱい殺せる力を握ってるのかよ!!」

 師匠はそこで。イラつきが頂点に達したかのように。机をこぶしで思いっきり殴って大声で叫んだ!!

「そうだよ!! どんなにきれいに受け取ろうとしても! それが世界の姿だ!!」

 そして。うつむいて。泣いた? 師匠が、泣いた?


                   3話 END

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