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太っ腹な神様
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あるところに貧しい男がいた。この男は幼い頃に両親がこの世から去り、親戚の家で育てられた。つまり境遇から言えば、不幸な男であるといえるだろう。しかし、この男の性格はふてぶてしいものであった。この男を引き取った親戚には子がおらず、尚且つ自分の子でもないことから厳しく接することが出来ず、大層甘やかして育ててしまった。そして、成人を迎えた今日でも、働きもせず、ただ床に寝転がっているだけであった。
ある日のこと。流石の義理父母も堪忍袋の緒が切れたとみえる。義父が男に向かって。
「働く気がないならもう、この家から出て行ってもらう。」
というなり、義父は男を蹴り飛ばし家の戸を締めた。男は。
「ふん。血の繋がらない親なんて、こっちから願い下げだ。」
と反省の色は無く、むしろ腹を立てていた。しかし、これからどうすれば良いのかと途方にくれた。しばらく当てもなく歩いていると、神社を見つけた。
「こうなったら神頼みだ。」
男はそう言って、社の前で手を合わせた。そして、
「どうか、俺に金を下さい。この通りです。」
と一心に祈った。
すると、どこからか。
「ずいぶん欲の深い男がいるものだ。面白い。」
と声がした。
「誰だ。まさか神か。神なら俺の願いを叶えてくれるのか。」
と男が矢継ぎ早に尋ねると。
「神には様をつけんか。不躾な男よ。まぁ、良い。如何にも私が神だか。」
と神は答えた。すると男はまた。
「姿は見えないが、声がする。それに俺の声も聞こえてるってことは、やっぱりいるんだな。なら、神……様…とやら早く願いを叶えてくれよ。」と叫んだ。
「なんと傲慢で早とちりな男よ。まあ、良かろう。お前の願いを叶えてやろう。その前にお前は私がどのような神か知っているのか。
そもそも私は生前低い身分であったが、勉学に励み、学問で大成し、その後は朝廷から寵愛を受け、うんたらかんたら。」
と神が話しているのを男が遮って。
「そんな話はどうだっていいんだよ。とにかく今は金。それをくれって話なんだよ。」
と叫んだ。
「ふむ、まあお前のような教養の無い者には不要か。良かろう。ではお前の願いを叶えて信ぜそう。」
神がそういうと、辺りは一面眩い光で覆われ、一瞬のうちに元に戻った。すると、目が眩んで座り込んだ男の前に小さな種が落ちていた。またどこからか声がして。
「その種を土に埋め、育てよ。その木はお前の言う金というものがなる木じゃ。」
そういってからは二度と声が聞こえることはなかった。男は。
「ほんとに金がなる木なんて存在するのか。
もしならなかったらあの神社燃やしてやるか。」
といいつつも、その種をすぐ近くの空き地に埋め、水をやった。するも芽が出たかと思うと今度は苗木程の大きさに成長した。男は驚き。
「こりゃあ、いいや、すぐに金が手に入るぞ。」
そう言って、この木を育てた。
それから三日経った頃には金のなる木は大きく成長し、立派な大木になっていた。男は、金のがなるのを待ちくたびれて、その木の木陰でうたた寝していた。すると木から何かが落ち、男の頭に落ちてから地面に落ちた。
「痛て。なんだ。」
そう言って頭をさすりながら、ふと手を伸ばすとそこには小さな硬貨があった。なんと、それは昔の硬貨であった。しかし、男は。
「なんだよ、これ。こんなの使えねーじゃねえか。あの、神使えねーなぁ。」
と言って、硬貨を投げ捨て、金のなる木を燃やしてしまった。しかし、これは仕方のないことなのである。つまりこの男の生きる時代には既に硬貨や紙幣というものは存在せず、もっぱらマネーカードという物を金とよんでいたのだ。
そんな事とはつゆ知らず、神は。
「あの男は今頃大喜びしているであろう。私の生きていた時代には硬貨一枚でも生活出来たが、あの木からそれとは比べものにならない程の大量の硬貨がなるからのう。」
と微笑んでいた。
神の誤算と男の浅慮によって金のなる木は消滅してしまった。しかし、これは両者が知らぬことだが、先程の硬貨、実はこの時代での価値はそれこそ一枚で一生安泰に生活できる程の価値があるのだった。
ある日のこと。流石の義理父母も堪忍袋の緒が切れたとみえる。義父が男に向かって。
「働く気がないならもう、この家から出て行ってもらう。」
というなり、義父は男を蹴り飛ばし家の戸を締めた。男は。
「ふん。血の繋がらない親なんて、こっちから願い下げだ。」
と反省の色は無く、むしろ腹を立てていた。しかし、これからどうすれば良いのかと途方にくれた。しばらく当てもなく歩いていると、神社を見つけた。
「こうなったら神頼みだ。」
男はそう言って、社の前で手を合わせた。そして、
「どうか、俺に金を下さい。この通りです。」
と一心に祈った。
すると、どこからか。
「ずいぶん欲の深い男がいるものだ。面白い。」
と声がした。
「誰だ。まさか神か。神なら俺の願いを叶えてくれるのか。」
と男が矢継ぎ早に尋ねると。
「神には様をつけんか。不躾な男よ。まぁ、良い。如何にも私が神だか。」
と神は答えた。すると男はまた。
「姿は見えないが、声がする。それに俺の声も聞こえてるってことは、やっぱりいるんだな。なら、神……様…とやら早く願いを叶えてくれよ。」と叫んだ。
「なんと傲慢で早とちりな男よ。まあ、良かろう。お前の願いを叶えてやろう。その前にお前は私がどのような神か知っているのか。
そもそも私は生前低い身分であったが、勉学に励み、学問で大成し、その後は朝廷から寵愛を受け、うんたらかんたら。」
と神が話しているのを男が遮って。
「そんな話はどうだっていいんだよ。とにかく今は金。それをくれって話なんだよ。」
と叫んだ。
「ふむ、まあお前のような教養の無い者には不要か。良かろう。ではお前の願いを叶えて信ぜそう。」
神がそういうと、辺りは一面眩い光で覆われ、一瞬のうちに元に戻った。すると、目が眩んで座り込んだ男の前に小さな種が落ちていた。またどこからか声がして。
「その種を土に埋め、育てよ。その木はお前の言う金というものがなる木じゃ。」
そういってからは二度と声が聞こえることはなかった。男は。
「ほんとに金がなる木なんて存在するのか。
もしならなかったらあの神社燃やしてやるか。」
といいつつも、その種をすぐ近くの空き地に埋め、水をやった。するも芽が出たかと思うと今度は苗木程の大きさに成長した。男は驚き。
「こりゃあ、いいや、すぐに金が手に入るぞ。」
そう言って、この木を育てた。
それから三日経った頃には金のなる木は大きく成長し、立派な大木になっていた。男は、金のがなるのを待ちくたびれて、その木の木陰でうたた寝していた。すると木から何かが落ち、男の頭に落ちてから地面に落ちた。
「痛て。なんだ。」
そう言って頭をさすりながら、ふと手を伸ばすとそこには小さな硬貨があった。なんと、それは昔の硬貨であった。しかし、男は。
「なんだよ、これ。こんなの使えねーじゃねえか。あの、神使えねーなぁ。」
と言って、硬貨を投げ捨て、金のなる木を燃やしてしまった。しかし、これは仕方のないことなのである。つまりこの男の生きる時代には既に硬貨や紙幣というものは存在せず、もっぱらマネーカードという物を金とよんでいたのだ。
そんな事とはつゆ知らず、神は。
「あの男は今頃大喜びしているであろう。私の生きていた時代には硬貨一枚でも生活出来たが、あの木からそれとは比べものにならない程の大量の硬貨がなるからのう。」
と微笑んでいた。
神の誤算と男の浅慮によって金のなる木は消滅してしまった。しかし、これは両者が知らぬことだが、先程の硬貨、実はこの時代での価値はそれこそ一枚で一生安泰に生活できる程の価値があるのだった。
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