御狐様の愛し方

breakfast*

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もう一人の神様

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「え、そっくり…。えと、お名前は…?」
すると、もう一人の神様は優しい笑みを向けて、私の手を握った。
「初めまして、夜狐の弟の昼狐ひこだよ、宜しくね。」
「えっと、初めまして、能登原きよらです…。」
「ん、そんなに緊張しなくてもいいよ、ため口で話して、ね?」
にこにこと笑みを浮かべる昼狐は、紺の袴に、夜狐と同じ柄の着物を着ている。ただ、昼狐は夜狐と違い、着物の色が柔らかい黄色だった。そして、耳には鈴のついた銀の耳飾りが付いていた。驚いたのが服の色は違うが、見た目が全く一緒なことだ。髪型や背、体系などもそっくりだ。少し違うのが…顔と髪の色。夜狐は少しきりっとした顔だが、昼狐は優しい、おっとりとした顔だ。髪も夜狐と同様に艶やかだが、色は昼のような柔らかい黄色だ。まぁ、美しいのは変わらないけれど。
「へぇ、人間の子なんだ!可愛いね~!」
と、私の頭を撫でる。ナチュラルに頭を撫でるので思わず赤面してしまった。
すると、神様はため息交じりに、
「御前、いつも思うが、距離が近くないか?」
「ええ~、いいではありませんか兄上~。」
む~、と膨れる。
(なるほど、あざとい系か。)
すると、撫でをやめた昼狐はふわっと私に抱き着いた。耳元でちりん、と鈴が鳴る。金木犀の香りが少しばかり、鼻をくすぐった。
「だって、きよらちゃん、可愛いし、どこかほっとけないし、俺、気に入ったんですもん!」
「⁉」
私はさらに赤くなった。頬の暑さでわかった。と、
「全く、きよらが混乱しているだろう。」
神様は飽きれ気味だが、少し怒りが垣間見える。
「しょうがないですねぇ、兄上は~。」
と、私から離れ、くすくすと笑む。
「今日はお話しようと思って来たんです。寂しくないので安心してくださいね、兄上!」
これでもかというほどの笑顔を神様に見せると、私の方へ向きかえった。
「これからは昼狐くん、って呼んでね、きよらちゃん!」
にこ、と笑みを向ける。すると、目の前が眩しくなり、気づくと家の前だった。
(また…⁉どうなってるんだろう…。)
と、考えながら家に入った。

次の日。
「…ん~?」
私はダイニングテーブルに置かれたものに首を傾げた。
…石だった。
「なにこれ、石?」
「あ~、それ?なんか起きた時からあったよ。」
隣ですんとした顔でコーヒーを飲んでいるのは、弟の音也おとや。中学生だが、大人っぽいしすごくモテるみたいだ。この間だって、ラブレターを二通ももらって帰ってきた。だが、どれも断っている。前に理由を聞いてみると、
『俺はそういうの興味ないから』
とのことだ。ついでに、
『姉貴以外の女子とはあんま話したくない』
とのことだった。なかなかのシスコン弟だ。
「姉貴、何かと変わってるから持って帰ってきたのかって思ってたけど、ちげぇの?」
「そんな道端に落ちてる石取ってくるような変人じゃないから!」
む、とした後、その石を手に取った。見た目は、なんの変哲もない、ただの石だ。子供が帰り道、石けりなどで使うようなものだ。
「…変なの。お父さんが酔っ払って持って帰ってきちゃったのかなぁ…。」
「でも父さんが酔っ払うことなんて滅多にないだろ?」
「確かに…。」
トーストをかじりながらまじまじと見つめる。だが、特に変わったところは見当たらない。
「…姉貴。」
「なに?」
「大丈夫なの?」
「え、なにが?」
「…時間。」
「…ああぁぁぁ!!!」
時計を見ると、萌花と日葵といつも登校している時間だった。一気に血の気が引き、ヒステリックな声が出てしまった。私は急いで石を握ったまま準備をして玄関に向かう。すると、不意に音也が口を開いた。
「姉貴さ、自分が思ってるより普通じゃないの気づいてる?例えば、顔とか。」
「…顔?」
「自分が思ってるより、全然可愛いから。…さらわれないようにな。」
「…シスコン」
ジト目で言うと、音也はムッとし、
「シスコンではないだろ」
「ん~、どうかな」
ムッとした顔をしていたが、やがて、
いってらっしゃい、と小さく手を振った。

走っていると、街灯の横で話す日葵と萌花がいた。
「萌花ーっ、日葵ーっ、ごめん、遅くなった!」
「珍しいじゃん、どしたの?」
「あ、恋の悩みとかっ?」
日葵がうきうきで聞いてくる。
「そんなんじゃないよ、朝、ダイニングテーブルに石があってさ…。」
「石?」
きょとん、とした二人に朝見つけた石を見せる。すると二人はさらに首を傾げた。
「「…ただの石じゃん。」」
綺麗にシンクロする二人に苦笑しつつ、出来事を説明した。
「―なるほどね、それで今に至る、と…。」
「これぞ、ミステリーってやつだね!」
日葵はやけに楽しそうだ。むしろ、この出来事を楽しんでいるようだった。
「…『物事には必ず理由がある。』」
「へ?」
いきなり呟いた萌花に思わずハテナが飛ぶ。すると、萌花は知らないの?って言いたげな顔をした。
「私の好きなミステリー小説に出てくる探偵の言葉。言葉の通り、理由がなくちゃ石なんてテーブルにないでしょ!」
萌花がぴっ、と私の前に指を突き出す。
「でも、何も浮かばないよ?」
「少しくらい浮かぶでしょ?ほら、思いついたことをパッていうだけだし。」
私はさっき思いついた考えを言ってみることにした。
「…酔っ払ったお父さんが持って帰ってきた、とか?」
すると、日葵が首を傾げ、
「でも、きよらのお父さんってあまり酔わないよね?」
「それに、あんな頭のいい人が理由もなく道端の石を拾うわけがないと思う。」
「ちょ、聞いてきたくせに…。」
む、と膨れると、萌花はため息交じりに
「それにしても他にあるでしょ…。あ、こういうのって妖怪関係だったりするのかな。」
「妖怪?この石が?」
「うん、本で読んだことある。昔の人たちは不可解なことが起きると妖の仕業だ、とか言ってたの。」
ぺらぺらと情報を述べる萌花。さすがは人間図書館。ぽんぽんと知識が出てくる。
「…きよら、これ、ずっと話してる系かな?」
「うん、変なところで火つけちゃったみたいだね…。」
私と日葵がひそひそと話している間も萌花は止まらない。
「…ということがあって、石や物に神が宿っている、という考えが今も残っているの。わかった?」
一通り話した萌花は質問ある?と言った。
「…日葵、何分話してた?」
「十分かな、萌花すごいねっ」
にこにこと話す日葵。ちょっと嫌味が混ざってるように感じたのは気のせいかもしれない。
「このくらい別に普通だし、一般常識だから。」
「んおうっ!?」
ずびしっ、と日葵にチョップを繰り出す。ギリギリで後ろに下がって難を逃れたようだ。
「…とにかく、まとめると神社に戻せ、って事?」
「そういうこと。妖の親分は狐の神様っていう考えもあったみたいだし。裏明神のある神社に祀られているのはお稲荷様みたいだから、帰りに寄ってみる?」
萌花は石を見ながら首を傾げた。それに私たちは頷いた。
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