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第04話
しおりを挟む「……なあ、セイ。何をそんなに買い込んでいるんだ?」
結局、ギルド的には実力的にも人格的にもしっかりとしたパーティを集めるつもりらしく、ライの提案した依頼は大々的に発表される様子は一向にない。
内々でこっそりと声を掛けて依頼をしているようである。
それからするとギルド的にはライのパーティは人格的にも実力的にもしっかりとした所であるという認識になるようだ。
ちなみにライの直感とやらに巻き込まれたセイは、その冒険者としての地道に積み重ねた実績と、ライのパーティと何度か臨時ではあるものの組んだことを認定されて、依頼のパーティの一員として認められることになった。
てっきり、断られると思ってギルドの許可が出るならいいよとセイは返事をしたのに、こういう所もライの直感の恐ろしさ、というべきなんだろうか。
ライのパーティのほかのメンバーは急に何でと思っていたようだが、ライの「勘」の一言で納得した様子だった。
「ん? お前の勘に巻き込まれそうだから備えを」
これまでの経験から考えて準備は万全万端であるべきとの教訓を得ているセイは、さも当然そうに言ってのける。
「……?」
お前の勘と言われてピンとこないライが首を傾げる。説明も求むと瞳が語っている。
「前回のときも結果は出るには出たけど、迷宮の中に長い時間閉じ込められっぱなしだったろう? あんなことが起こらないとも限らない」
未踏覇ダンジョンの調査で、隠し部屋だか何だがを見つけたはいいが元の場所に戻れずに何日もダンジョンの中で過ごすことになったという嫌な思い出。
調査開始してからすぐに、『そんなに深いダンジョンじゃなさそうだし、ぱぱっと調査してすぐに引き返そうよ』とか言って迷宮をずんずんと進み出したライ。
慌てて付き従っていくものの嫌な予感全開のパーティメンバー。
『ここが怪しいねぇ』とライが怪しい雰囲気の隠し扉らしきものを見つけたまでは良かった。
のだが、きちんと調べる前に『ばーんっと開ければ解るよ』とライはその扉を開けて、結果、トラップに掛かり変な場所に転送されてしまう。
その転送トラップは、転送トラップではあるんだけど、ランダムではなくて一定の場所に飛ばされるタイプで、これにひっかからないと辿り着けない場所があるというひねくれたタイプのダンジョンだった。
なので、引っ掛かったおかげでしっかりと調査出来ましたぱちぱち……と帰ってからの報告でなったものの、罠を発動させた直後はパニックだった。
トラップなんて掛かったらパーティの全滅だって普通にありうるのだから、基本極力避けるのが当たり前で、開ければ解るさ、ありがとーってな勢いで引っ掛かるものじゃない。
「あー、あれ、大変だったなー」
頭の後ろで腕を組んで口笛を吹くライ。ちょっと悪いと思ってるのかどうか怪しい笑顔をセイに向けている。
「おい、元凶」
本当に守りたくないこの笑顔だな……と溜息を付くセイ。
「まあそういうことで、何が起こるか解らないから色々と揃えておくんだよ」
近隣の森で薬草採取するのとは訳が違う。
ギルドや冒険者たちとしては、あくまで初心者向けのダンジョンという認識なんだろうが、ライの勘が自分の巻き込んだのならそれで済む筈もないとセイは考えている。
なるべく目立たないようにするために使わないでいる力『ストレージ』もあるいは使わないといけないかもしれないと、いつも以上に準備を入念にしているのだ。
「そういうものかー」
トラブルの起点となりやすい男はお気楽に頭の後ろで手を組んで知らん振りの様子である。
まあ今でも本人はこんな感じにとぼけているが、さすがにあの時は責任を感じていたようで、自分の分け前を減らして皆に配ってたりしてたんだよなぁ。
「そういうものだ」
「ふうん……」
退屈そうにしながらも、準備をするセイにライはずっと付き合って買い物して廻っていた。
「女物の下着なんてどうするの?」
古着屋でライがそう口にする。パーティに確かに女性は居るが、おのおのいざという時の着替えは持ち合わせている。わざわざそんなものをセイが用意することもないだろうに。
「ひょっとして……下に着けてたり……」
「してない。まあ正直いざという時は着けるかもしれないが……そういう事態にはならないように努力はするがな」
真面目な顔で返すセイ。石橋を叩いて渡るというよりは心配しすぎの心気症に近いのかもしれない。
異世界に放り込まれてからの彼なりの生存戦略なのだろう。薬草中心に安全第一で生活が成り立つように工夫しているのもその辺りなのだ。
「着けるんだ……さすがにそれはちょっと引くなぁ……」
引きつった笑いのライ。セイはそんなライの様子を気に留めることもなく下着やら男女どちらでも着れそうな服を購入していく。
「どちらかというと、巻き込まれることが多くてな……。ライ以外のパーティと何日もダンジョンに閉じ込められたりするかもしれない。念には念を、だ」
「なるほどね……でも初心者ダンジョンだよ。ディッテニィダンジョンだよ」
「……だから……といっても信じないだろうが……お前の勘に巻き込まれた以上、何でもありな気がしてな」
「それも勘?」
ライが面白そうにセイに尋ねる。
「そうだな……勘と知識、両方かな」
「知識?」
「運命って奴だよ」
ディッテニィとなまっているが、おそらくはディスティニーもしくはデスティニーだろう……すなわち『運命』迷宮ということ。こちらの世界でかの迷宮の名称の意味を知っているものはいない。けれど、いつの間にか、件のダンジョンはその名前を冠していたという不思議な逸話がある。
誰もルーツをしらない『運命』の名を冠する迷宮。そしてそれを察することが出来る異世界転生者。
どう考えても誰かがお膳立てをしているに違いないと思えるほどに不自然だ。……あるいはこれも単なる偶然、陰謀論でアルミホイルで電波遮断すべき事柄なのかもしれないが。
「何だよそれ、運命が知識って訳が解らないよ」
「思い込みかもしれないし、勝手にやってることだ気にすることはないさ。それにしてもお前は準備しなくていいのか? 早めに合流する予定なのだろう」
「うーん、何とかなりそうな気がするから大丈夫」
たびたびだが守りたくないこの笑顔。普通なら無邪気で魅力的なんだけどなぁ……とセイは溜息。
深く関われば関わるほど逃げ出したくなるとは思わなかったよ
本人がこの調子だから、周りが苦労するんだが、それでも結果が出るのがライという男の運の良さというか引きの良さというか。
そうでなければ、とっくに縁を切られても不思議ではないだろう。
「……そうか。その分ちゃんとしとくよ」
その後も何が楽しいのかライはセイと共に買い物に付き合った。……ギルドの受付嬢とかが、腐った熱い視線で二人を見ていた気がするが……そんなんじゃないよな、と心の中で付き合いの良い友人に少しだけ疑惑の目を向けるのだった。
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