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第一章 社畜、スタート!!

第四話 彼女はエルフ

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「おぁぁぁぁ! 何するんだ!」

当たったらひとたまりもなかった……
しかも、ここは森だから燃え移ったら最悪だ。

「ここは森だぞ! 燃え移ったらどうするんだ」

「私だってそれくらいは考慮しているわ! 私をこの森のなんだと思っているのだ」

彼女は杖をこちらに向けるのをやめない。

「君は誰なんだ? なぜ俺に敵対する!」  

「んぁ? 私の森に勝手に踏み入ったからだろうが!」

どうやら、ここの森に飯竿が入ったことに対して腹を立てている様子だった。

「貴様! この私を南のエルフ族、族長の娘、フィール・ストーミーだと知らないのか?」

「うん。 初耳……てか、エルフってあの? 生きている間に一目見れるなんて、俺は幸せ者だなぁ」

この世にエルフという存在がいる事が、飯竿は嬉しくて仕方がない。

「まさか私を知らないとは……貴様、どこの田舎者だ! どこから来た!」

「日本ですよ?」

「ニホン? 聞いたことが無い国だが、どこにある国なのだ?」

そうだった、ここの世界は日本がないのだ、
どうしよう、どう説明しようか……

そう考えたって出てきはしないので、
飯竿は沈黙を貫き通した。

すると、フィールは別な質問に移る。
「貴様はアンデットなのになぜ喋ることが出来るのだ!」

その質問に対しては、どう答えていいのか分からないので、飯竿は
「俺も知らん」
と、曖昧にして返してみた。

「なぜ知らないのだ、アンデットになった理由とかはあるだろう?」

「いや、気がついたらアンデットになってたというか、アンデットのジョブを与えられたというか」

神様に、アンデットを与えられてからの事を考えていなかったが、彼女に頼めばどうにかしてくれるかもしれない。

「あの、すみません。」

「なんだ、改まって、イイザオだっけか?」

「俺、この世界のことがあまり分からなくて」

一か八かで、彼女に今まであったことを話してみると、彼女は意外にもその事を否定はしなかった。

「なるほどな、君はその日本とやらから転生をして、ここの森にアンデットとなって蘇ったのか。  色々と、聞きたいことがあるが、困っていることは分かった……先程の無礼は許してくれ。 最近は森荒らしが増えててな、少々考えが荒くなってしまった」

「信じてくれるんですね、ありがとうございます」

お礼を言うと、フィールは目を逸らし、

「いいや、いいよ。 1度だけ、君みたいな境遇の人に助けられたことがあったのでな……」

俺みたいな境遇? という事は、転生者が他にもいるのか?

「待ってくれ、俺みたいな境遇って、俺の他に転生者が?」

フィールにそう問うと、フィールは咳払いをして、
「待て待て、そう焦るな……説明してやるから」

「あぁ、よろしく頼む」

世界に、俺みたいな境遇の人がいたのならば、
この世界を探せば、もしかしたら、この世界について教えてくれるかもしれない。
飯竿はそう考えると、フィールの情報を聞き入る体制に入った。
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