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第三章

「大丈夫。俺は、もっと化け物だから」

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 エリスは俺の傍に駆け寄った。

「ランドールさん。あたしを引き渡して下さい」
「ダメだ。フィリスが、なぜあんな要求をしたか分かるか? あれは、君に聞かせるためだ。君が罪悪感に駆られて、自分から出てくるように仕向けているんだ」
「でも、このままだと、あたしのせいで水の国が破壊されて……」
「それは違うよ。エリスちゃん」

 マリカが、エリスのセリフを遮る。

「水の国が壊されても、それはエリスちゃんのせいじゃない。悪いのは……」

 マリカは、ウッド・ゴーレムを指差す。

「全部あいつだよ」
「マリカちゃん」
「エリス殿」

 じいさんがエリスの頭を撫でた。

「なんて優しいお方でしょう。ですが、エリス殿。行ってはなりません。あなたがその身を差し出したところで、フィリスが約束通り引き上げるとは限りません。それに、あのウッド・ゴーレムは三日経てば動けなくなる。しかし、あなたが奴らの手に落ちれば、いくらでも動けるようになる」
「アルベルトさん」
「エリス。もっと簡単な方法があるだろう」

 エリスは俺の方をふり向いた。

「簡単な方法?」
「あいつらをやっつければ、済むことだろう」
「無理です! あんな化け物」
「大丈夫。俺は、もっと化け物だから」

 俺は水の国にいる間、造形能力である物を作ろうとして脳内設計を続けていた。
 
 まさに、こんな事もあろうかと、用意していたのだ。

 そして昨日、小さな分体で、それを作る事に成功している。後はそれを本体に応用するだけだ。

「まあ見ていてくれ」

 そして俺は、変形を開始した。
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