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第三章

胡瓜畑でつかまえて

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 意識を外部に移してみると、左足を失ったフィリスのヴッド・ゴーレムは、まだ胡瓜畑で横になってじたばたと暴れていた。

 収穫間際の胡瓜に、かなりの損害が出ている。もったいないなあ……

 河童と人間が協力して、ウッド・ゴーレムを鎖で縛り付けようとしているが、なかなかうまくいかないようだ。

 今は胴体に回した鎖に、河童が杭を打ちつけて固定しようとしている。

 仕方ない。

 俺は触手を伸ばして、ウッド・ゴーレムを押さえつけた。

「俺が押さえつけておきます。今のうちに、固定してください」
「おお!」

 たちまちに河童と人間が群がり、鎖を回してトンテンカンと杭を打ち付け、ウッド・ゴーレムを固定していく。

 程なくして、フィリスのウッド・ゴーレムは、海岸に流れ着いたガリバー状態になった。

 ウッド・ゴーレムの、あちこちに着いている扉が開かれ、中にいた兵士たちが引きずり出される。
 
 人間に捕まった兵士はまだよかったが、河童に捕まった奴らは悲惨だった。

 尻子玉を抜かれるという事はなかったが……そもそも尻子玉なんて本当にあるのか?……河童たちにボコボコに殴られていた。

 まあ、それはいいとして、操縦室の扉はかなり頑丈にできていて簡単には開かない。

 そもそもフィリスは、中にいるのだろうか? 中にいるのは、また式神ではないだろうか? じいさんの話では、ウッド・ゴーレムの操縦は魔力のある人間でなければできないそうだから、人間だと思うのだけど……

 俺は人型の分体を扉の前に出してノックした。

「フィリスさん。いますか?」
「いません」

 いるじゃないか。式神ではなく本体だな。

「フィリスちゃん。遊びましょ」
「あーとーでえ」

 つまんないなあ。

 人型分体を二つに増やした。近くのあった棒切れを拾って……

「おら! フィリス! 出てこい!」

 ドッカン! ドッカン! ゴカキーン!



 叩きまくっている内に、とうとう鍵が壊れて扉が開く。
 
 中では、フィリスが体育座りして震えていた。
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