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第五章

ズッキー似

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「あら、お帰りなさい」「早かったですね」「オカエリナサイマセ」

 リビングの壁から人型分体を出すと、食事の支度をしていたエリスとマリカ、河童が振り向いた。親衛隊が加わってから、大所帯になってしまい、食事の支度もエリスとマリカだけでは大変なので、今は河童も手伝っている。

「向こうで、少しトラブルがあったのでね。ところで、こっちの食糧は足りているかい?」

 マリカがエプロンで手をぬぐってから答える。

「大丈夫です。親衛隊の人達も備蓄食料を持っていましたし、狩りにも行ってくれています。それと近所に森の民の集落があって、お魚をこれと交換してくれました」

 マリカは大きな胡瓜を差し出した。いや、胡瓜じゃない。ズッキーニ? この世界にズッキーニもあるのか? そもそもズッキーニは胡瓜と似ているが、種類は南瓜に近い。

 河童が喜んで食べているところ見ると、ズッキーニに似ているが別の作物なのだろう。ここはズッキー似と言うべきか?

「ところで、フィリスは大人しくしているか?」
「はい。食事を持っていくときしか、会っていませんが」

 俺の質問にエリスが答える。

「ここの現在位置とか、聞いてこなかったか?」
「しつこく聞いていましたけど」
「やはり、そうか」
「どうかしたのですか?」
「実は……」

 俺は都で知った事を二人に話した。

「ええ、都にフィリスの式神が!?」
「ああ。迂闊だった。この場所をどの程度喋った?」
「森の中の湖と」
「湖の名前は?」
「話していません。そもそも私はこの湖の名前を知りません。マリカちゃんは知っている?」

 マリカが振り向く。

「ここはモズ湖といいます。でも、フィリスには喋っていません」
「そうか」

 俺は壁に貼ってある地図に目をやった。しばらく眺めて、一か所に丸印を付ける。ここから北に十キロ離れた場所にある湖。名前はヒヨ湖。

「二人とも地図を見てくれ」

 エリスとマリカが地図に目を向けた。

「次にフィリスにこの場所を聞かれたら、ヒヨ湖だと言うんだ」
「はーい」「わっかりました」

 俺は意識を監禁室に移した。


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